表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中指 立てたら  作者: 福島崇史
228/248

アップ開始!

グラップリングマッチだったはずの試合がKOで決着。

それとほぼ同時に控え室のドアが2度鳴った。


「どうぞ〜」


返事を終えるより早くドアが開かれ、不破のアホがヅカヅカと入って来た。


「おうっ!そろそろアップ始めんぞ!!」


「それもそやな…」


この後にロストポイント制の試合が1試合、MMAルールの試合が1試合。

それが終わるといよいよ俺の…いや!俺達の出番や!!

あ、この「達」ってのは不破の事や無いで!

もちろん俺と柔の事を指す「達」や!!


不破より少し遅れて、トレーナーの鈴本さんと新木さんが入って来る。

ミットだけを腕にはめて来た不破と違い、お二人は救急箱やら水やらを手にしてる。


「おいおい不破…ああいうのはお前が持って来るもんやろが…新入りやねんからよ」


「あん?俺はトレーナーとして雇われたんとちゃうぞ。俺はあくまでお前の格闘教官やからよ、荷物持ちは管轄外なわけよ♪」


「俺に敗けた奴が偉そうに…」


「な!お前!またそれを言うかぁっ!?あれは俺がスポーツの範疇で闘ってやったからやろがいっ!!路上やったら2分ありゃお前を殺せんだよっ!!」


「はいはい♪強い強い♪♪♪」


「…………殺す」


はめてたミットを外して構える不破。

それを見て鈴本さんが

“やれやれ又か”とばかりに頭を掻く。

新木さんは笑いながら…


「何回見せてくれんねや?その再放送をよ!大概飽きてるんやけど?」


そう言ってミットを不破に手渡した。

舌打ちしながらも素直に受け取る不破。

それを装着し終えると…


「よっしゃ!んならヤルぞバカチン。先ずはワンツーからの膝や。とりあえず10回イッとこか」


「応よ」


奴の構えるミットにパンチを打ち込む。

ストレートを放つと同時に不破が左ジャブの反撃、それをやり過ごしながら左膝をボディに突き刺す!

何故か不破は、このコンビネーションを毎日俺にやらせた。そのお陰で身体が覚えこんでてスムーズに動く。

奴の言った通りに10回を終え、今度は不破がそのコンビネーションを打って、俺がそれに反撃を合わせる練習。

不破の打つワンツーをしっかりとガードし、膝が来るタイミングで左に半歩ステップ…そのまま右足へのタックル。これを10回。

それが終わると再び俺がコンビネーションを打ち、不破が膝にタックルを合わせて来る。

そして俺はそのタックルを切ったり、膝の軌道を変えてカウンターでタックルに合わせる。


「よっしゃ!ええやろ。なかなか仕上がっとるやんけ」


「なぁ不破よ…ほんまにコレでええんか?」


「ん、何がや?」


「いや…練習に付き合って貰っといてこんなん言うんもアレやけどよ…コレが柔に通用するとは思えなくてよ…」


「うん。通用せんよ」


「んなっ!?お、おま…」


「これだけやったら…な」


「…どゆ事?」


「まぁ俺を信じろや♪」


「どっから来んねや…その自信……」


こいつがパートナーになってから毎日繰り返しやらされたのが、このコンビネーション…

それと両膝でダミー人形を強く挟む練習…

両足首で鉄棒にぶら下がる練習…

あとは徹底した背筋力のアップ…

もちろん他にも色々とやらされたし、技も幾つか教わったけど、これらの練習は毎日徹底的にやらされた。

教わった技を自分のモノに出来たとも思えんし、別段強くなった自覚も無いんよなぁ……

そんな事を考えとったら、ロストポイント制ルールの試合が始まる時間になっとった。


青コーナーはアマチュアトーナメント荒らしとして有名で“最強の素人”なんて呼ばれとる

天地あまち あきら選手。

アマチュア修斗、アマチュアパンクラス、アマチュアシュートボクシング…およそ思いつく有名なアマチュア大会にはほぼ出場。

そしてその殆どで入賞を果たしとる。

優勝経験こそ少ないものの、単純な勝率だけで言うならかなりのもんや。

因みにプロの試合はコレが初。

身長182cm、体重88kg。

ゴリゴリのマッチョって訳や無い…

薄っすらと脂肪がのったその肉体は昭和のプロレスラーを連想させる。

それと…男前でも無いんで好感持てる♪


対する赤コーナーはユーリ・スタボロビッチ。

サンボ世界選手権で3位入賞。

数年前からブラジリアン柔術も学び、結構なスピードで青帯を取得したロシア人。

打撃はからっきしやけど、組技だけなら世界トップクラスと言われとる。

総合格闘技はまだ3戦目。

デビュー戦ではキックをベースにした選手にボロクソにやられてのTKO敗け…

その時についたアダ名が“ズタボロビッチ”

まぁ本名がスタボロビッチでボロクソにヤラれたんやっら、アダ名はそうなるわなぁ…

身長は179cm、体重は天地選手と同じく88kg。

数字だけ見りゃあ太り過ぎに思うかも知れんけど、ロシア人特有の骨太な骨格とモチモチした筋肉…

全盛期のヒョードルを想わせるガタイやな。


「おいっ勇!アップ続けるか試合観るか…どないする?」


「ん、あぁ…ちょっと観たいかな」


「んなら筋肉冷やさんようにコレ着とけ!」


不破に投げられた厚手のパーカーに袖を通し、肩はタオルで覆う。

そして椅子に腰をおろすと同時にゴングが鳴り響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ