ロングホーン
ゴングが鳴り、グッと腰を落として構えた荒神選手。
それに対しロデオ選手が変な行動を取り始めたんや。
何て言うたらええんかなぁ…
棒立ちのまま、右腕の肘から上腕部分の間を擦る様な仕草?
当然ながら荒神の方は怪訝な顔しとったわ。
せやけどそれも一瞬だけ!
そりゃそうよな、相手は重心も落とさず訳のわからん行動しとるんやもの。組みに行くには格好の的やがな。
で、荒神が動いた!
首に組み付く動きを一瞬見せ、それをフェイントにして一気に身を沈める!
真の狙いは下半身へのタックルや!!
ところが!
そこでロデオが信じられへん事をやりよった!!
荒神が身を沈めるより速く身を沈め、そこから浮き上がる様に右腕を振り上げたんや!!
カチ上げ式のラリアット!!
肘の内側が綺麗に荒神の喉元にメリ込む!
荒神が天を仰ぎ、数cm身体が浮いた…
そして何の抵抗も見せないまま後頭部からマットに落ちる。
んでもってそのままピクリとも動かへん。
驚いたのはその後のロデオの行動や…
右手を高々と突上げながら「ウィィィ〜〜ッ!!」って叫びよった!
よく見たら右手の人差し指と小指だけが立って、影絵のキツネみたいな形になっとる…
間違いあらへん!アレはスタン・ハンセンのロングホーン!!
て事は、最初に見せた訳のわからん動き、アレは腕のサポーターをズラす動きを真似てたんか!!
ク〜ッ!芸が細かいやんけ♪……って言うてる場合か!!
コレは組技限定マッチ、全ての打撃は禁止やろがいっ!!
案の定、直ぐ様ゴングが打ち鳴らされ、ソッコーでロデオに反則負けが言い渡された。
会場はブーイングの嵐や…
ところがロデオは悪びれる様子も見せず、セコンドを通じてマイクを要求。
そして渡されたマイクを握ると…
「ぅおらぁっ!どないやぁ荒神ぃ!?あん時のワシと同じ、望まん反則勝ちの気分はよぅ!ええっ!?ワシャ最初から勝負する気なんざぁ無かったからのぅ!ほんまエエ気分やでぇ♪」
意識は戻っとるもんの、荒神は未だ虚ろな目…
ロデオの言葉も耳に入ってるんか怪しいもんや。
それでもお構いなしでロデオが続ける。
「コレでワシ等は“おあいこ“の1勝1敗じゃ!ワレが決着つけたいっちゅうんやったら、もっかい受けたるわい!そん時こそは反則無しで正々堂々とブツかろやんけっ!どないじゃっ!?……………………
聞いとんのかいっ!何とか言うたれや!おおっ!?」
いやいや…無茶言うなや。
アンタのせいで意識朦朧としてんねんその人は…
荒神陣営は完全スルーで荒神を担架に乗せる。
んでもってそのままリングを去って行く。
「ちょ…待…ちょ〜待たんかいっ!返事わいやっ!?ええ!独り言みたいでワシがアホみたいやんけっ!!」
ロデオの叫びは、返事も無いまま虚しく消えて行く…
その上レフリーにマイクを取り上げられ、オモチャを取り上げられた子供みたいな顔でリング上にポツン…
更に自陣のトレーナーらしき人に思いっきりビンタされて半ベソまでかいとるやんけ。
その後トレーナーに散々怒鳴られ、引っ叩かれ、髪をワシ掴みにされ引っ張られながら退場して行ったわ。
え…何、この寸劇…?
まぁ…おもろかったけども…




