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中指 立てたら  作者: 福島崇史
213/248

そそぐ無双

「それはそうと…なんでアンタが居るの?」


俺はストレートに疑問をぶつけた。


「はぁっ!?察しの悪い奴っちゃのぅ…てか…本格的に頭悪いなオマエ…」


んなっ!?


「ほんまやで勇!義務教育終えてるかアンタ!?」


な…そ、そそぐちゃんまで…


「いや…まぁ大体の想像はついとるよ俺だって…ほら!アレやろ?少年マンガなんかでよくあるパターンやろ?大勝負を控えたかつてのライバルの為に…的な?」


どやっ!図星じゃろがぃ♪

……ん?アレ…?何でそんな反応?何で死んだ魚みたいな目で俺を見てんの不破ッチ?


「まぁ…半分は当たりやな…」


「え!半分だけ!?じゃあ残りの半分はさ?」


俺より先に素っ頓狂な声を返したのは彼女やった…


武人もののふで優勝して不破式殺法を世に知らしめる…ってのが俺の野望やった訳やが、それがついえた今!俺がすべき事!それは……」


「そ、それは…?」


「不惑勇…お前への復讐リベンジに決まっとるやろ♪」


「………はいっ!?」


意外な答えに間の抜けた返事をしてしもた俺やけど、左隣にとてつもない闘気を感じた…

“な、なんやこの恐るべき闘気は?…フリーザかっ!?”

と思い目を向けると、そこには俯いて肩を震わせるそそぐちゃんがおった…

なんやジム全体が震えてる様な錯覚に陥る…

受付にあるペン立てがカタカタ鳴った気もする…


「テメェ…今なんつった…」


ヤ、ヤバい!何や知らんが、そそぐちゃんのスイッチが入ってしもてる!!


「いや…だからやな…その男への復讐リベンジを…」


不破が言うや否や、そそぐちゃんが目にも止まらんスピードで間合いを詰めて不破の襟首を掴んだ!


「おいコラ!ジャリタレ!!テメェ練習相手を務めながら事故を装ってそこのアホを潰す気かいやっ!?ワレ…そんな事してみぃ…私がそこのダボに代わってオドレを潰すからのぅ…解ったんかいっ!おおっ!?」


コラ…ジャリタレ…テメェ…アホ…ワレ…ダボ…オドレ…

河内のオッサンばりの口の悪さやな…

しかもその内のアホとダボは俺の事やし……


「い、いや!ちょ…ちょい待ちぃな!話は…話は最後まで聞いてくれや!!」


流石の不破も焦ってあたふたしとる…

そらそうよな…殺人術の使い手である奴が、全く反応出来ずに間合いを詰められたんやもん…

しかしそれでも彼女は襟首を掴んだ手を離さないままで…


「おぅ…なら話の続きっちゅうのを聞かせて貰おか…」


そう凄んで見せる。


「あ、あのぅ…あのですね…もし宜しければこの手を離して頂けると…」


「あん…?」


「い、いえ…そのままで結構です…はい…」


ハハハ…不破の奴、完全に呑まれとる。


「で?はよ話さんかいや…」


「あ、あのですね…俺…いや…僕に勝ったそちらの勇くんがですね…」


「名前なんかで呼ばんでええ!あんなもんアホ呼ばわりしとけや!!」


「あ…はい…」


そそぐちゃん…それは酷いよ…あんまりだよ…

ねぇ…泣いていい?


「僕に勝ったそこのアホがですね…誰かに敗ける所なんて見たく無いんですわ…だから僕がそこのアホに協力して…いや…させて頂いてですね…勝ったそこのアホにいつか再戦させて貰えたらなぁ…と…そう思ってるデスヨ…はい…」


不破…ビビり過ぎてカタコトなっとるやんけ!


「つまり…いつか自分がそこのボンクラを倒す為…それまで誰にも敗けさせない為に練習相手を名乗り出た…と?」


「は、はい!その次第でして…」


その瞬間、ジムを包んでいた禍々しい闘気が嘘の様に消え去った。


「なぁ〜んだぁ〜♪そういう事なら早く言ってくれれば良かったのにぃ〜♪♪手荒な真似しちゃってゴメンねぇ〜♪♪♪」


満面の笑顔でダルダルに伸び切った不破の襟元をパンパンと叩くそそぐちゃん…

開放されると直ぐに俺の背後へと不破が隠れる。


「な、なんやあの子…!メチャクチャ怖いやんけ…!!」


「せやろ…感情の落差が激しゅうてな…いつもその温度差で風邪ひきそうなるんや…ハハハ」


「アホか!風邪ひきそうなんはビッチャビチャの濡れ衣被せられた俺の方じゃっ!しかもあの掌返しの早さたるや…彼女、手首壊れとるんちゃうんか!?」


「この先もチョイチョイ顔合わすやろから伝えとくけど……絶対に彼女は怒らせんな…絶対にや…」


「そ、そんなに?」


「あぁ…世間じゃ今度の俺と柔の試合を格闘技日本一決定戦なんて騒いどるけど、俺も柔も彼女には敵わへん…」


「わ、わかった…以後気をつけます…」


ようやく落ち着いた不破が、1つ咳払いをしながら俺の背後から身を乗り出した。そして…


「な、なんや格好悪いところを見せてしもたから、1個だけ格好つけさせてくれや」


「ん?」


「お前を倒すのはこの俺や!それまでは誰にも敗ける事は許さへん!だから今回は力を貸すで!!」


わざわざ背を向けて振り向き様にサムズアップをかます不破。そこへそそぐちゃんが傷口に塩を塗り込む様な一言を叩きつけた…


「勇に敗けたアンタが何の力になれるんかは疑問やけどね♪」


ムキになった顔で何かを言おうとした不破やけど、先に味わった恐怖が甦ったんやろな…ソッコーで口を閉じて小さくなってたわ。

また1人「そそぐちゃん被害者の会」メンバーが増えたって感じやな…


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