花束贈呈
“武人”を制した2ヶ月後、傷も癒えた俺は京セラドーム大阪に居た。
人気格闘技イベントの“バレット”を観戦する為や。
観戦と言うても座ったのは客席やあらへん…
主催者のはからいで、武人の覇者として主賓席で観させて貰ったんや。
流石、金を持っとる人気団体は違うと思ったで…
趣向を凝らした派手な演出…
人気芸能人のゲスト出演…
休憩時間かて只の休憩時間やあらへん…
アメリカのメジャースポーツばりのショータイムやで?
貧乏団体のグングニルにはとても真似出来へんよアレは…
こんなん言うたら大作さんに怒られてまうけどな、ハハハ…
せやけど俺は、そんなもんを観る為に行った訳やあらへん!
俺の目的は唯1つ!
そう…柔のタイトルマッチだけやったんや!!
もちろん他の試合も熱戦揃いやったけど、柔の事しか頭にあらへん俺からすれば申し訳無いけども“アウトオブ眼中“やったわ。
試合数はルーキーズも合わせて全部で15試合と
かなり多かった。
でもKOや1本での決着が多く、意外とサクサク進行してたわ。
セミファイナルはバレットのバンタム級タイトルマッチ…王者アメリカのジム・トンプソンに、日本の坂口トモロヲが挑んだんやけど僅差で判定敗け…
ここは勝って次の柔の為に弾みをつけて欲しかったところやけど…まぁしゃあない!
内容的には押してる部分もあったし、次に期待が持てる敗北やった。
ほんでもってや…
実はこの後で大任を任されてたんよ俺…
メインを闘う2人に花束を贈呈するっちゅう大仕事や。
まぁ…この試合の勝者と俺は4ヶ月後に統一戦をやる訳やから、その事を考えると当然の流れやってんけどな。
リング下で両者の入場を待ってる間、自分の試合前よりも胸が高鳴った…
3万5千人って大観衆の前で“アイツ”が王者に挑む…しかも無差別級やで?
体重75kgそこそこの柔が、90kgを超える相手にどう闘うのか…そりゃ俺の胸も高鳴るのもやむなしっしょ!?
で…先に入場してきたんは当然ながら挑戦者の柔。
俺と目が合うとあのアホ、ウインクしてニヤリと笑いよったわ。そんだけリラックス出来てるって事やから安心したけどな。
続いてデスメタルのメロディに乗って王様の登場や。
ブラジル出身のチコ・マルチネス…
例に漏れず柔術使いやけども、これまでの試合の殆どを打撃で決めてる変わり種や。
細いながらもしなやかな筋肉…
190cmの長身で手足が異様に長く見えた…
バネの様な筋肉はネコ科の猛獣を連想させ、長い手足は蜘蛛を連想させる…ヒョウと蜘蛛の合成獣って感じやったな…
両者のリングインが終わり、リングアナの紹介でいよいよ俺もリングに入ったんやけど、どうしても目が柔にしか行かんかった…
もうこうなると一種の恋やな…そんな事を考えると自然と笑えたわハハハ♪
ほんで…先ずは挑戦者の柔へと花束を渡す。
握手を交わしながら…
「待っとるで…」
そう声を掛けるのと全く同じタイミングで…
「待っとけよ…」
柔が言いよった。
俺達は大笑いしそうになるのを必死で堪えたわ。
次にマルチネスへの贈呈…
握手を交わすと奴も口を開いた
「ヤワラ ノ ツギ アンタ! ナカヨク オネンネ マッテルヨロシ♪」
俺はそれを鼻で嗤うと…
「やなこった♪」
そう答えて直ぐに背を向けたったんや。
おっと!話が長くなってしもたな…
試合内容と結果が気になるやろけども、それは次回に持ち越させて貰うわ!
ゴメンやでぇ♪イヒヒヒ♪




