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中指 立てたら  作者: 福島崇史
208/248

殺し技

レフリーへの暴言で2人仲良く警告を受けた俺達……

せやけど元々ポイントでの優勢勝ちなんぞ狙ってない!

そんな事は気にも留めず、完全決着を目指すべく互いに構え直したんや!


再開を告げる声が響くと同時に俺は動いた。

深く身を沈めて前に出る!

タックルを匂わせる動きや!!

でもコレは“エサ”……ほんまの狙いは別にある。

まんまと疑似餌に掛かった不破、タックルを潰そうと前傾姿勢になりよった!


“今や!”


俺はタックルの動きを止めぬまま、オーバーフック気味に腕を奮った。

狙うは痛めとる奴の肩口!

タックルを潰す事に気が行ってる上に、完全な死角から飛んで来る拳……決まった!

と、思ったんやけど、流石は不破……

ヒット直前に反応しよった!

奴が身を捩ったせいでクリーンヒットはせんかったけど、とにかく当たるには当たった!

そもそもこの技をフィニッシュブローにするつもりなんかあらへん……狙いは奴の動きを止める事。

そして……密着する事や。

ほぅら狙い通りや!

掠った程度やのに苦悶の表情で肩を庇ってるやん♪

俺はそのまま正面から不破に近付いた……

まるで敵意など無いかの様に……

恋人を抱きしめに行くかの様に……

ゆっくりと……静かに…静かに…


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「だ、大作さん?不惑が普通に近寄ってますが…?その無防備な動き、正直恐ろしくて正視出来ません……」


「いや…勝瀬津さん。しっかりと刮目しておいて下さい。恐らくは……決着の時です!」


「な、なんと!?……わかりました!私とした事が失礼致しました!!実況者としての務め、最後まで全うさせて頂きますっ!!

お〜っと!?不惑が正面から不破の頭部を脇に抱えた!!これはフロントチョーク!通称ギロチンチョークスリーパーだぁ〜っ!!このままスタンディングで仰け反る様に締め上げるのかっ!?それとも仰向けに倒れ込み、グラウンドギロチンに移行するのかぁぁ〜〜っ!?」


「いや……そのどちらでも無いですね……」


「……はい?」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


モリスエとのスパーリングで偶然編み出した“殺し技”…

それはこの形から生まれた物やった……

不破よ……お前言うたよな?

散々プロレスに付き合ったんやから、今度はこっちに付き合えってよ…

どうや?今、俺はお前の土俵に上がっとるぞ?

だからこそ躊躇無くこの技を使わせて貰う……

お前やからこそ解ってるよなぁ?

この技がどんだけ危険な物かってのを。

頼むから死ぬ前にギブアップしてくれよ……なぁ?


「スクリューネックロック……」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「ゆ、勇の奴!支点を変えやがった!!」


「え…え…っ!?大作さん?私にも解る様に解説願えますでしょうか?」


「普通、ギロチンチョークの場合は頭部を正面から抱え、前腕を喉に食い込ませて締め上げるんですが、今の状況は全くの別物……

見て下さい!勇の前腕は喉では無く、不破の頭部に巻き付いています!!そして捻る様に締め上げてる!」


「つ、つまり?」


「あれは締め技なんかじゃ無い……首の骨への関節技です!」


「た、確かに不破の首が横方向に捻れてますね…まるで平仮名の“へ”の字の様に……」


「あいつは…勇は…不破のステージに上がったんですよ……」


「と、言いますと…?」


「アレは紛れも無く…殺し技です……」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「どや…不破よ?」


「ンググ…ギギィ……!!」


「せやろな…この状況じゃ喋れる訳あらへんわな…」


「@#$*%+&¥ッ!!」


「殺し技を使う事に何の躊躇いも無いお前の事や……当然、自分が使われる覚悟もあるんやろうな……

でもな…俺には人を殺す覚悟なんてあらへんのよ……

せやから願わくば自らギブアップしてくれへんやろか?」


「¿¡:#&:№€℃〜〜ッ!!」


「何を言うてるかは全く解らへんけど、お前にギブアップの意思が無い事だけは解ったわ……実はこの技はコレで完成や無いんや……この左手でお前の顎をクイッと持ち上げる事で、更に首への負担はデカくなる……てか折れる。なあ不破よ…頼むから俺を殺人者にはせんといてくれや……」


「‡†©‰√±π※ッ!!」


「ハァ…そうか……残念やわ……」


俺は太い息を吐き出すと、宣告した通り奴の顎に己の左手を引っ掛けたんや…




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