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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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ヘッポコ

「セレクト」に入団して間もない時の事やった…

モリスエを相手に組み技のスパーリングをしてた俺は、偶然ながら恐ろしい技を編み出してしもた。

ハッキリ言ってプロレスでは使えへん。

その範疇を越えた技や…

いや!格闘技の範疇すら越えてるかも知れん。

「殺し技」……一言で表すならそれが1番適しとる…

そんな技や。

勿論、そん時以降は一度も使つこうてへん。

せやけど…せやけどコイツ相手なら使つこうてしまうかもしれんな……

そんな風に思うてしもてる自分がおる。

だってコイツ…

ギラギラと刃物みたいな視線を俺にぶつけて来るんやもの。


「おい…不惑よ!」


「あん?」


「プロレスにもリングじゃ使えねぇような“裏技”ってぇのが色々あるらしいやん。俺を相手にすんなら変な気遣いせんと何でも使って来いや!まぁ…出来るんやったらって話やけどのぅ♪」


“そんなん言うなや……たがが外れてまうやんけ……”


「その代わり、俺も色々とエゲつない事やらせて貰うからよ♪」


「ほうか…そいつぁ楽しみやのぅ…」


「ん…?不惑…お前……」


「お喋りは終いや…さっさと来いや……」


「そうか…ほな…遠慮なくっ!!」


鋭い奴やで…俺の中にドス黒いもんが湧き上がるのを敏感に感じ取ったらしいな…

まぁええ……

なんにせよ“あの技”を使うには、コイツの打撃をかい潜って組まん事にはな…

先ずは何で来るよ?

へぇ……

身を沈めながらの中段突きかよ…

というより中国武術の“崩拳ぽんけん”に近いか…

身体を開いて外側に逃げて…と…

っ……!?

があっ!!

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「んあぁぁ〜っと!飛び込み様に放たれた不破の突き!上手くかわしたかに見えた不惑だが、今はリングで野獣の如き雄叫びをあげているぅ〜っ!な、何だ!?何がおこったぁ〜っ!?」


「不破選手、勇がかわすや否や次の技へと変化させましたね…上手いなぁ…」


「次の技…」


「ええ。身体を開いた勇のサイドに張り付き、そのまま勇の身体ごと前転して膝十字に入りました。所謂“ビクトル投げ”ですね。自分もあんな繋ぎ方は初めて見ましたよ……」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


コ、コイツ…どんだけ幅が広いねんっ!?

あの状態からビクトル投げやとっ!?

ク、クソッ…先ずはガッツリ固定されとる膝を自由にせなっ!!

な、なんちゅう挟む力や!?

コイツ細見に見えるけど、尋常や無い太腿しとるやんけ!

この仰向けに固定された不自由な状態やと、思うような反撃も出来へん!!

標本にされた昆虫の気分やでぇ……

でもな不破!こういう状況で活かされる“裏技”がプロレスにはあるんや!

お言葉に甘えて使わせて貰うさかいなあっ!!


「ぬほっ!!!???」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「お〜っと!?不惑が左手を何やらモゾモゾと動かしたと思ったら、不破が奇声を発して飛び上がったぁ〜っ!?大作さん、コレは一体……?」


「ふふふ…やりよったな勇の奴♪」


「へ?」


「プロレス伝統の裏技…って奴っすよ♪」


「は、はぁ…?」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


技を解いて飛び上がった不破…

自分のケツを抑えながらピョンピョンと跳ねとる♪


「て、てめぇ!な、なんちゅう事を!?」


「おいおい…まさかズルいなんて泣き言言わねぇよな?

プロレスの裏技を見たいって言ったのはアンタ自身だぜ?コレこそが古より伝わるプロレスの裏技“肛門突き”よ♪それともアレかい?レフリーに“アイツ反則するんですぅ”って泣きつくかぇ?」


「クッ…上等だぁこの野郎……」


ここで異変に気付いたレフリーが割って入る


「おいっ!どうした!?何か反則行為があったんなら試合を中断して警告与えるぞ!!」


どうやらヘッポコレフリーは気付いていないらしい。

バレない反則は反則に非ず!ってのが格闘技界の習わしや♪

コレには不破も同意したらしく、俺と目が合うなり互いに頷いて、2人同時にレフリーへ言ってやったんや♪


「すっこんでろ!ヘッポコ!!」



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