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中指 立てたら  作者: 福島崇史
205/248

ディック・マードック

先制ポイントは奪われたもんの、代わりに奴の攻略法も見つけた!……と思う。

なんにせよ勝負はこれからやでっ!

とりあえず…いっちょカマかけてみっか♪


「なぁ不破よ?」


「あん?」


「アンタ、どんな技でも殺せんのかぇ?」


「んな事訊いてどうすんだ?」


「いいから答えろよ」


「まぁ…力の流れを見極め、力の流れを変え、力の流れを殺す…これが俺の流儀やからな」


「打撃だけや無くて投げや関節技でもか?」


「全ての技には力の流れがあるもんや…むしろ組み技の方が打撃よりも殺しやすい……てか、あんま喋ってると又レフリーにドヤされんで?ほら!もう既に顔を赤くしてはるもんよ」


「せやな…お喋りに付き合わせて悪かった。ほな……そろそろおっ始めよかいっ!!」


「応よ!来いやぁ!!」


俺達は何とかレフリーからのカミナリは喰らわずに済んだ。

お陰で今のお喋りは無駄にならんかったわ…

今から始める“不破攻略法”への“フリ“完了やで!

さぁ〜て…伏線の回収と参りますかね♪

先ずは奴の意表をついたろ…


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「お〜っと!こ、これは!?ようやく動き出したと思ったら…不惑が予想外の動きを見せたぁ〜〜っ!だ、大作さん!コレって…」


「ですね!プロレスのファーストコンタクトでよく見掛ける“手四つ”……まぁ厳密には未だ手四つに誘ってる段階なんですが…」 


「不惑!あの殺人技の使い手である不破に対し、まさかのプロレスを仕掛けたぁ〜〜っ!」


「正直…見てるのも怖い光景ですが……」


「わたくしもです…あの正中線を晒した無防備な構え…不破が黙って見過ごすとは思えませんが…」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


“さあっ不破よ…どう出る!?どんな力でも殺せんだろ?この誘いを断るなんて野暮な事ぁしねぇよな?”


“コイツ!……フッ!なるほどねぇ…そんだけ隙だらけやと仕留めるのは簡単やが…そこまで大々的にお誘いされちゃあ逃げる訳にゃあいかんわな…お付き合いしようやないの♪”


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「な、な、な、なぁ〜んとっ!不破が!あの不破が!不惑の手四つに応じる動きを見せたぁぁ〜〜っ!

宙で動く両者の指先は、まるで蠢く蟲が如く!

だが互いの間に見えない壁があるかの様に触れそうで触れなぁ〜〜い!」


「まさかあの不破が誘いに乗るとは…さっきまでは怖くて正視できませんでしたが、一周まわってこの後の展開を観たくなりましたよ…」


「それなっ!」


「……(ネットの若者かよ)」


「あ〜っ!ついに両者の指が絡み合ったぁ〜!そして胸を突き合わせ、腕を下げながら互いの手首を返そうという動きっ!絵に描いたような力比べだっ!!」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「へへへ…悪ぃな…またもや付き合わせて…よ」


「なぁに気にすんなって♪これでも感謝してんだぜぇ…」


「感謝?」


「こう見えても俺はよぅ…」


「…?」


「プロレスファンなんだよっ!!」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「あ〜〜っ!聴き取れませんでしたが、不破が何やら叫びながら前蹴りを不惑の腹にブチ込んだぁ〜〜っ!プロレスならば定番の展開!!まさか総合格闘技のリングでこの様な展開が観られようとは!これにより力の均衡が崩れる!」


「いや!この辺のやり取りは勇も慣れたもんっすから!ほら!すかさず逆水平を不破の胸板に張り返しましたよ!」


「お〜〜っ!流石は“本職”!!2発!3発!4発!不破の胸が見る見る赤く染まるぅ〜〜っ!!」


「さあ!ロープ際まで追いやりましたよ!勇…次はどう動く?」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


“へぇ…?コイツ、なかなかにプロレス出来るやんけ…ならもう少し付き合って貰おか!”


“ヘヘ…まさかこの俺がリングでプロレスやるたぁな…でもガキの頃のプロレスごっこを思い出して、そんなに悪かぁ無ぇ気分やで…さあ不惑よ、ロープに詰めたんなら次は当然アレなんやろ?受けてやっからさっさとやれや♪くぅ〜!愉しんでんな俺!”


“プロレスファンだってんなら次の流れは解ってんだろ?さあ!行くでっ!!”


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「あ〜〜っ!?まさかとは思いましたが本当にやった!不惑が…不惑が不破を詰めていたのとは逆方向のロープへと振ったぁぁ〜〜っ!!戻るのか?不破は戻って来るのかっ!?」


「不破、あえて戻りましたね!そこを勇が狙いすましたラリアットで迎撃!」


「いえ!不破がそのラリアットを潜って逆のロープで再び戻る!そして…まさか!まさか!?お、掟破りのラリアットを繰り出す〜っ!」


「勇、うまく頭を下げながら不破の胴に腕を絡めましたよ!そしてバックを取った!これはジャーマンか?それともバックドロップか!?」


「しかし…させじとばかり、不破が踏ん張りながら後方へエルボーを何発も振っているぅ〜〜っ!!」


「あ!そのエルボーを潜って再び不破の前方に回った勇!踏ん張り前傾姿勢になっていた不破の頭部を脇下に抱えましたよ!う、上手いっ!!」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「不破さんよぅ…アンタ格闘家やらせとくのが勿体無いわ」


「お誉めに預かりどうも♪」


「俺は格闘系プロレスラーだけどさ、それと同じ位に昭和のプロレスも好きなんよ。特にディック・マードックが大好きでねっ!フンガァ〜〜ッ!!」


“マードックやと?て事はブレーンバスターを仕掛けるつもりか!?肩を痛めてる俺にゃ少々キツい技やな…悪ぃがそれは受けてやれねぇよ”


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「不惑が高々と不破を持ち上げたぁ〜っ!こ、これはクラシックにしてスタンダード!ブレーンバスターかぁ〜っ!?」


「肩を痛めてる以上は流石に不破も受けないでしょう!ほら!身体を左に捻って右肩からの落下を防ぐつも…いや!」


「な、なぁ〜んと!不惑が不破と同じ左方向に身体を捻ったぁ〜〜っ!そしてそのまま垂直落下式ブレーンバスタ〜〜ッッ!!

右肩を強かに打ちつけられた不破、リング上を転がりながら悶絶ぅ〜〜っ!」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「ガアッ…!ぐ、ぐぐぐ…な、なんでわかった!?」


「そりゃアンタが右肩を庇うだろう事くらいわかるさ♪だから俺もアンタの逃げる方向にチョチョイっと身体を捻った訳♪」


「ングゥ…」


「あ、レフリー!立てないみたいやしダウン取っても良いんちゃいます?」


「チィ!ヌゥッ…!!」


「不破…ダウ〜ンッ!!」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


へへへ…これでようやくふりだしに戻った。

まぁ不破がプロレスに付き合ってくれたからってのもあるけど…これはまだ序章やで♪

お前のその“クセ”存分に利用させて貰っからよ!


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