表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中指 立てたら  作者: 福島崇史
195/248

巨木

実況のオッサン…悪ふざけが目にあまるんで、この試合に関しては俺が実況させて貰うやで。


開始と同時に余裕の表情で手招きするバイソン。

それに対して不破は困った様な表情で頭を掻いとる。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「カマ~ン モンキー♪」


「ン~…アンタさぁ、せっかくヤル気満々でグローブ着けて来たんやろ?ならアンタから来れば?言ってる事解る?アンダスタ~ン?って…やっぱ解んねぇか。じゃあコレなら解るかい?

come on a blockhead !!(来いよ のろま野郎!!)」


「ヌ~…ッ!ファッキン ジャップ!!」


「そうそう!そうこなくっちゃな♪」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


二言三言の会話を交わした直後、バイソンが真っ赤な顔で右の拳を振り上げよった!

それはもう、テレフォンパンチなんて呼んだら電話が怒るんちゃうか?って程にスローモーなパンチやった…

少しでも武の心得がある人間やったら絶対に喰らう訳があらへん。

そう思ってた時期が私にもありました…ええ…

せやっ!驚く事にそれが不破の顔面を直撃しよったんや!!


その瞬間、不破の首が〝もげた〟かと思う程に捻れた。

そりゃそうや!いくら遅いとは言え、あのパワーやもの…威力が無い訳あらへんっ!!

ところが不破の奴、(たたら)を踏んだだけでダウンは免れよった!

とはいえロープ際まで下がってしもた!

当然の様に追撃するバイソン!!

さっきの大振りとは違い、コンパクトにまとめた打撃を連打する!ところが…や…


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「シンク ユー!ボーイ!!(沈めてやるぜ!坊や!!)」


「へっ!そうはイカのキンタマやでぇ♪」


「ホワット!?ンガァ~…!No~ッ!!」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


不破の奴…バイソンが放つ連打の拳に、肘を的確に合わせよった!

なんちゅう目の良さをしとんねん…

いくら遅い打撃とは言うても、連打に肘を合わせるなんてそう簡単に出来るもんや無いぞ…

当然ながら痛みでバイソンの動きが止まった。

そこに不破が飛び込んでの打撃!

しかも拳や無いっ!熊手みたいに曲げた指の関節で、バイソンの〝人中(じんちゅう)〟を打ち抜きよった!!

それでもバイソンは倒れへんっ!


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「へぇ…流石にタフやん♪さっき貰ったパンチのパワーもなかなかやったでぇ…〝落葉〟を使(つこ)ても威力を殺し切れんかったからなぁ。

しかし…拳を潰されても倒れへん…人中を打たれても倒れへん…何食やぁそんな身体になんだぁ?」


「ガッデェ~ムッ!!」


「お?いいねぇ!いらっしゃい♪」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


打撃じゃ分が悪いと悟ったバイソン、叫びながら今度は両手を広げて掴みにかかった!

流れる様な動きでそれを潜って、そのまま横に逃げる不破。

バイソンも更に追い掛ける。

その時や…


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「うおっほ♪チャンス到来!も~らいっ♪」


「ホワットッ!?」


「不破式殺法…鍬落とし」


「ガッ…!!………」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


不破は掴みに来た腕を捕らえ、追って来るバイソンの勢いを利用して背負い投げを放った!

しかも…自ら膝をついての背負い投げ…

これで投げられると必然的に顔面から地面に落ちる…メチャクチャ危険な投げ方や!

顔だけで倒立したみたいな形になったバイソン、今ゆっくりとリングに倒れこんだ…

その様は、木こりの斧で切り倒された巨木みたいやった…

そんで…倒れたバイソンの首は、ありえん角度で背中側に埋まっとった…


リングサイドからは悲鳴があがり、当然ながらレフリーも即座に試合を止める。

ドクターが呼ばれるより先に、鬼の様な表情でリングに飛び込んで来た。

バイソンの首筋を触り…

眼球の様子を見て…

苦虫を噛んだ様な表情を浮かべた。


スタッフが5人がかりでバイソンを担架にのせて運び出す…

そして待機していた救急車でそのまま病院へ直行した。

そしてこれが…

バイソンを…

生きたバイソンを見た最後の場面になってしもたんや……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ