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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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妬み

ティラノのアホが勝ちあがって一安心したところで、更なる注目の一戦が始まる…

そう!アメリカンプロレス団体〝IWA〟のトップレスラー、モンスターバイソンの再登場や!!

相手は得体の知れん古武術使い不破 敏郎。

仮にこの試合をバイソンが勝ち上がったなら、ティラノがバイソンと()る事になるって事か…

めっちゃ羨ましいやんけっ!

てか…そうなると、ティラノが勝とうがバイソンが勝とうが、反対ブロックはプロレスラーが決勝進出って事になる。

俺も次の試合、忍者風情に敗けてられへんっちゅう事っちゃな!

おっと?両選手が入場するみたいやな…


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「さあっ!ついに最終ブロックであるDブロック代表者が決まる訳ですが…解説の大作さん、この一戦どう見ますか?」


「そうですねぇ…先ずは圧倒的な体格差、これはどうしても気になります。バイソン選手が身長205cm 体重135kgなのに対し、不破選手は175cm 70kgですからねぇ…大人と子供どころか、熊と人間くらいの差と言えますし…」


「え…205cm 135kgだと熊ならばかなり小型ですよね?そこはやはり大人と子供の比喩で良いんじゃないでしょうか?」


「………」(そこ、マジレスするか?普通…)


「ねえ…大作さん?」


「ともあれ!!両者ともに1戦目を2分ちょいという秒殺タイムで終わらせてますから、その辺りにも注目ですね!」


「確かに!不破の持つ謎の技術が、どこまであの驚異の肉体に通じるのか!?我々も刮目いたしましょうっ!!さあ~っ!いよいよ入場の時間となりました!先ずは青コーナーより不破敏郎の入場だぁ~っ!!」


「現れましたね。やはり今度もセコンドは無しか…あのバイソン相手に余裕やなぁ…」


「細いタレ目に、口角の上がったアルカイックスマイル!軽く毛先を遊ばせたオシャレな髪型!

更には長い手足に均整の取れた筋肉量!

モテます!これは確実にモテます!!

事実、会場からは黄色い声援が飛び交っております!!けしからぁ~んっ!!」


「いや…あの…それは実況という名を借りた妬みでは…?」


(わたくし)っ!あの優男がバイソンの猛攻でギッタンギッタンにされる所を目の当たりにしたい!そう強く思っておりますっ!!」


「あの…勝瀬津さん…我々、実況と解説は中立であるべきで…」


「ゴチャゴチャうるさいっ!」


「あ…さぁせん…」(うわ…怖っ!)


「さあ~っ!続いて真打ち!モンスターバイソンの入場だぁ~っ!!またもや安っぽいロック調の入場曲が会場に鳴り響くっ!それに合わせての手拍子が凄いっ!!(わたくし)と同じ想いを持つ男共が、打倒モテ男の願いを乗せてバイソンの背中を後押しするぅ~~っ!!」


「その偏見はどうかと思いますが…それはともかく勝瀬津さん、何かに気付きませんか?」


「ん…と、言いますと?」


「バイソンの拳を見て下さい」


「拳…?あ~っ!?こ、これは!1回戦では素手だったバイソンですが、此度はオープンフィンガーグローブを着用しているぞ~~っ!!」


「そう、そこなんですよ…何を意図しての事なのか…目が離せませんね」


「ついに猛牛もリングインッ!!世の〝非リア充〟の想いを背負った男、どんな闘いを見せるのかぁ~っ!?」


「……」(もう突っ込んでられへんわ…)


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


実況のオッサンの悪ふざけが過ぎるのは置いといて…

両者のコールとボディチェックが終わり、いよいよ試合開始や♪

レフリーから注意事項の説明を受ける両者、共に笑顔を浮かべとる…

不破は常に笑顔やからアレがデフォルトやけど、バイソンの笑みは、明らかに相手を見下しての物。まるで〝イージービジネス〟とでも言わんばかりや…

お?両者がコーナーに下がった!

レフリーが副審やタイムキーパーに確認の目配せをする!


「ファイッ!!!」


空気を裂く様な合図と共に始まった試合…

せやけど…それは俺達の想像を遥かに超えた内容となったんや…


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