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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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最後のレッスン

「な、な~んと不知火っ!!俯せに倒れた薄井の脚を捕らえて、見た事も無い技に絡め取ったぁぁ~~っ!こ、これは…なんと形容すれば良いのでしょうか…?」


「左脚を膝十字に極めた上、その足首すらも捻ってますね…更に右脚を折り畳み、自らの脚でフックする事で完全に両脚の動きを殺している…型だけ見れば、足四の字を裏返して極めたみたいな感じですが…その実、全く別物の複合関節技っすね…」


「薄井が獣の様な咆哮!これは断末魔の叫びとなるのかぁ~っ!?」


「必死で近いロープを探してますが…

先のテイクダウンでポジションが入れ替わってしまいましたからねぇ…1番近いロープでも30cmは離れてる。あの状態で30cmを這いずるのはキツいっすよ…体重差もありますしね…」


「最寄り駅まで匍匐前進で30cm~っ!そんな物件住みたく無い~っ!!薄井、不知火不動産にとんだ物件を握らされてしまったぁぁ~~っ!!」


「勝瀬津さん…その喩え……嫌いじゃ無いっす♪」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「フッフフ…如何かな?不知火流〝海草(うみくさ)〟の味は?貴殿は海草に脚を取られた水泳者…もがけばもがく程に海底へと引き摺り込まれるのだ!どうだ…ロープという名の水面が遠かろう?諦めてこのまま潔くリングで溺死するがよいっ!!」


「へっ…へへへ…へへへへっ!」


「何が可笑しい?あまりの痛みに気でも触れたか?」


「アンタ…やっぱ勉強不足だわ…」


「んなっ!?」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「あぁぁ~~っと!?極められているはずの薄井の左脚がジワジワと上向きに戻っているぅ~~っ!!こ、これは一体どういう事だぁ~っ!?」


「しょ、正直自分も驚いてます…普通に考えたら有り得ないっすよ…あんなの…いや!待てよ…」


「な、何か思い当たる事があるんですか?」


「あくまで憶測の域は出ませんが…」


「あ~~っっ!!大作さんのお話の途中ですが、極めの緩んだ隙を逃さず、ついに薄井がロープへのエスケープに成功~~っ!!」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「バ…バカな…し、信じられぬ…」


「へへっ!アンタ…レッグカールってトレーニング方法を知ってっかい?」


「……」


「やっぱ知らへんかぁ…まぁせやろな…レッグカールってのは脚の裏側…ハムストリングスと平目筋を鍛えるトレーニング方法でよ…自慢になるから詳しい重量は言わねぇが、俺ぁ世界でもトップクラスの重量をこなすんやで♪ただでさえ脚は腕の3倍の力があるって言われとる…ましてや蹴り技を使う格闘家の脚力を舐めんな!って話♪」


「ぐぬぅ…!!」


「さ!立ちなよ。チャッチャと続き始めよか♪」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「さあ!不知火も立ち上がり、スタンディングポジションからの試合再開です!これで薄井がロストポイント1、不知火がロストポイント2となりました!大作さん…先ほどの話の続きですが、何故に薄井がエスケープ出来たんでしょうか?」


「俺の予想では…複数の技を合わせている為、本来の膝十字に比べると…」


「あぁ~~~っっ!これはどうした事だぁ~っ!?再開と同時にローを放った薄井が突然倒れたぁぁ~~っ!!まるで糸の切れたマリオネットだぁっ!又もや大作さんの解説の途中ですが、今はそれどころじゃありませんっ!あるはずが無いぃぃ~~っ!!」


〝お、俺への悪意が加速してはる…〟


「攻撃を受けてのダウンではありません!攻撃を仕掛けた側の薄井が倒れたのですっ!これは明らかに様子がおかしいぞっ!」


「ですね…」


「レフリーが一先ず試合を止めました!そしてドクターがリング内に呼び込まれる!」


「あ~~っ!ドクター、薄井の脚に触れた瞬間に首を横に振ったぁぁ~~っ!!レフリーが頭上で腕を交差ぁ~っ!!唐突なる試合終了だぁぁ~~っっ!!!」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「お、お主…何故(なにゆえ)…?」


「へっ!へへ…ちぃ~とばかり無理が祟ったみたいやな…ったくザマァねぇわな」


「……」


「勉強不足のアンタの為に最後のレッスンや…太腿の裏側…つまりハムストリングスやふくらはぎの平目筋てのはな…力が強い反面、メチャクチャ肉離れしやすいんや…何事も無理したらアカンっちゅう事っちゃな。俺も勉強なったわ。高い授業料やったけどな…アンタも気ぃつけぇや♪」


「薄井模武…貴殿の武力、敬服に値する物であった…貴殿の名は某の脳裏にしかと焼き付けられたぞ!」


「へっ!それでも敗けは敗けや…それより…アンタは俺達Bブロックの代表やねんから敗けたら承知せぇへんでっ!って言いたいとこやけども…まぁ気楽にやりぃな♪アンタの武運を祈ってるわ!」


(かたじけ)ない!」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「今、薄井がセコンドに肩を担がれながらのリングアウトッ!それを不知火が深々と(こうべ)を垂れながら見送る!そんな両者へと観客から惜しみ無い拍手が送られていますっ!!」


「意外な結末でしたね…流れは九分九厘、薄井選手にあっただけに無念でしょうね…」


「しかし不知火、全ての試合が逆転勝ちに等しい内容…完全に運を味方にしている印象ですね」


「まぁ…運も実力の内ですからね…それより先ほど中断された事、改めて解説しましょうか?」


「あ、もう大丈夫でぇ~す」


「あ、あ、あぁ…そうっすか…」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


Bブロック代表

不知火流忍術・不知火 鉄心に決定!






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