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中指 立てたら  作者: 福島崇史
189/248

認識不足

「あ~~~っと!!開始5秒!不知火がダウ~ンッ!!」


「薄井選手の放ったオープニングブロー…こう言っては(なん)ですが、(なん)の変哲も無い前蹴りでしたよね…いくら彼の前蹴りが〝清正の槍〟と形容されてるとは言え…」


「しかも不知火は反応してましたよね?足先が当たってはいましたが、打点をずらしてたのでクリーンヒットは免れていた様に見えました…正中線からズレて脇腹辺りにかすったイメージ…大作さん、その辺どうお考えですか?」


「想像出来る答えは1つですね…恐らく…」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「ぐっ…ぬ、ぬうっ…!」


「へへへ…やっぱ思った通りやな♪アンタ…肋骨イッちまってんだろ?まぁあんだけガオランの膝やら何やら喰らってたら無理もあらへん。実際アンタはよぅやったよ…もう充分やと思うで?そのままネンネしちゃいなよ♪」


「フンッ…!(それがし)を舐めて貰っては困る…ムエタイに勝っておいて、その下位互換であるシュートボクシング如きに遅れはとらぬわっ!」


「アンタ…今…なんつった…?」


「下位互換と言った事か?だってそうであろう?打倒ムエタイを目標に掲げておる時点で、自らをムエタイより格下と認めておる様なもの…そんな輩に遅れはとらぬと…申したまでよっ!!」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「おおっ!立った!立ちましたぁ~っ!!不知火、鬼神の表情を浮かべながらカウント8で立ち上がりましたぁ~~っ!!」


「薄井選手と何やら言葉を交わしていた様ですが…その影響でしょうか?薄井選手の空気が変わりましたね…」


「え…?ああっと!確かに!!優男のイメージだったキングモブですが、彼の方こそ鬼神の表情と化しておりますっ!!」


〝あ…キングモブって呼び方は続行するのね…〟

「と、とにかく先程の会話の中で、不知火選手が彼の逆鱗に触れた…そう考えるのが妥当でしょうね。なんにせよ試合再開、今後の展開を見守りましょう…」


「あぁ~っと!再開されると同時に不知火が自ら仕掛けたっ!!左にステップ…いや!それをフェイントにして右に回って組みに行ったぁ!!」


「なるほど…正面から組めば首相撲から膝の集中砲火を受ける危険性がある…それを嫌って横から組技を仕掛けに行ったんでしょう。ミスったなぁ…不知火選手は…」


「へ?」


「不知火選手は大事な事を忘れています…いや、そもそも知らないのか?」


「どういう…事でしょう…?」


「まぁ…観てれば解りますよ…」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「フッ…先程は不覚をとった…某のダメージを見抜いた眼力(がんりき)も大したものよ…だが!この様な形で密着されれば打撃系格闘家である貴様は手も足も出せまいっ!?先程の醜態…拭わせて貰うっ!!」


「はぁ…やっぱそうか……その程度の認識やねんなぁ…」


〝??〟


「忍者マスターさんよぅ…アンタ、明らかに勉強不足だわっ!!」


「んなっ!?」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


「おぉ~~っと~っ!?組みに行ったはずの不知火だったが、逆にスープレックス気味に投げられ宙に弧を描いたぁ~っ!!だ、大作さん!こ、これはっ!?」


「ね、言った通りでしょう?恐らくは不知火選手の認識不足…きっと彼はシュートボクシングの事を、ムエタイやキックボクシングの亜流である打撃系格闘技と思っていたんだと思います」


「え~っと…つまり?」


「シュートボクシングが投げ技や立ち関節技を認めている…その事を知らなかった。でなければあんな不用意に組みに行ける訳が無い」


「ええっ!?」


「ほんと…勝瀬津さんが驚くのもムリはありませんよ…対戦相手の技術を知らないだなんてねぇ…」


「シュートボクシングって投げや立ち関節がアリなんですかっ!!??」


「……いや、アンタもかいな」

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