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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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夏の足音

「ついにAブロック代表が不惑 勇選手に決まりました!しかもご自身のジムであるグングニル所属という事ですが、如何ですか?大作さん!?」


「ハッキリ言わせて貰いますと…彼が敗ける事は全く想像してません!」


「おおっと!これは強気に出ましたねぇ!!

して…その理由は?」


「なんせ優勝の暁には最高のご褒美が待ってますからね♪奴はこんな所で躓く男じゃあ無いですよ」


「ははぁん!例のバレットとの統一戦…と言いますか、暮石 柔選手との対戦の事ですね!?しかし…少々意地悪な事を言わせて貰うならば、それは暮石選手がタイトルを奪取してこそ成り立つ物ですよね?」


「勝ちますよ。暮石選手も必ず勝ちます。勇…いや失礼…不惑選手の想いと暮石選手の想いは全くの同等です。ですから不惑選手が優勝したならば、暮石選手も必ず勝ちます。これは断言出来る…恐らく当人同士もそれは解ってるはず。それほどの信頼…いや!絆で結ばれてるんすよ、奴等は♪」


「……なんか…」


「え?」


「なんか…羨ましいですね…そういうの…」


「フフフ…本当に…そうっすね…」


この時…実況の勝瀬津さんと話しながら、俺は何故か福さんの事を思い出してた…(拙作 格パラ参照)


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


何とかAブロック代表の座を勝ち取った俺やけど、陳に受けたダメージが思ったよりデカかった…

鈴本さんが控え室にドクターを呼んでくれたんで診て貰ったら、やっぱ打撃を喰らったアバラがイッてしもてるらしい…

幸い完全に折れては無いみたいやけど、ヒビが入ってるのは間違いない。

つまりこっから先の闘いは、〝痛み〟っちゅう厄介な敵も相手にせなアカン訳や…

へっ!上等やんけ!!

痛み止め、座薬、何本でも使(つこ)たろやないかいっ!!

と、力んだだけでも息が詰まる…


「グオォォ…」


「痛むんやろ…お前?」


新木さんが顔を覗き込んで来た。


「いえ…ちっとも…」


「嘘こけっ!メチャクチャ脂汗かいとるやんけっ!!」


「いやぁ…ここ暑くて…もう夏の足音がそこまで近付いてるっすね♪」


「……今、11月やぞ…」


ここで鈴本さんが登場。


「とりあえず…次の出番までは時間がある。とにかく今は身体を休めとけ。1時間後、痛み止めを打って貰う為にもっぺん先生に来て貰うから…

すいませんが先生、そんな訳でお願いします。

それと…」


「わあっとるよ。この怪我の事は他言無用…じゃろ?」


「恐縮です…」


「ほな1時間後な。それまでゆっくり休んどれよ暴れん坊」


そう言い残すと先生は、リング上で眼を診て貰った時と同じく、ヒラヒラと掌を振って控え室を出て行った。

そうこうしとる間に、リング上ではBブロック代表を決める一戦が始まろうとしとった…

青コーナーはシュートボクシングの薄井 模武選手。派手さは無いけど、それだけに読めん選手や。

対する赤コーナーは忍術の不知火 鉄生選手。

シード選手やったムエタイのガオランを破った実績はアドレナリン…やなくて侮れん!


それはそうと……

しかしほんまに薄井選手は影が薄いな…

俺にしか見えてないんちゃうか?と不安になるわ。

それに対して不知火選手の存在感よ!

ムエタイに勝った自信が佇まいに溢れ出とるわ。

でもまぁ薄井選手からすれば不知火は、手柄を持って行った憎い相手やろからな…

なんせシュートボクシングは長年

〝打倒ムエタイ!目指せ立ち技最強の格闘技!〟

をスローガンにやって来た団体やからのぅ…

ここで不知火を倒せば、間接的に打倒ムエタイを果たせる…そんな風に考えとるかもしれん。

まぁそんな単純な物や無いけども…


おっ!?いよいよ始まった!

この試合の勝者が俺の次の相手…

どっちが上がって来てもええように、しかと見極めたろやないかい♪

そしてモニター画面に目を移した瞬間、奴が苦悶の表情で踞ってたんや…

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