重大発表
大作さんがリングで語った内容…それは……
「皆様にご報告をする前に、2名のスペシャルゲストに登場して頂きましょう!」
ここで流れた曲…それは確かに聴き覚えのある曲やった。
間違いない!人気の格闘技イベント〝バレット〟のメインテーマ曲や!!
俺は全身に〝サブイボ〟が立つのを感じたんや!
「皆さん御存知のバレット無差別級王者!チコ・マルチネス選手!そして…日本が誇るトップMMAファイター!暮石柔選手の入場ですっ!!」
〝や、柔…っ!?〟
別々の花道から2人が同時に入場をして来る…
せやけど俺の視線は、当然ながら青コーナー側の柔へ釘付けになっとった。
会場全体が爆ぜたみたいな大歓声の中、笑顔で両手を振りながら歩を進める男…
それは確かに俺の親友であり最大のライバル、暮石柔その男やった。
両者がリングに上がり、笑顔で握手と抱擁を交わす…
〝柔…柔…柔……柔っ!…柔ぁっ!!〟
俺は何度もその名を口の中で転がした…
「それでは改めてご説明申し上げます!この度、我々グングニルが運営する〝武人〟は、〝バレット〟と提携する事を決定致しましたっ!こちらの2名は再来月にタイトルマッチを行うのですが……半年後!その勝者と、この武人トーナメント優勝者で統一戦を行いますっ!!」
大爆音の歓声が沸き上がったはずやけど、俺の耳には入って来ぇへん…
とにかく驚きと感動で視界が歪んだ…
比喩や無く、実際にパイプ椅子から転げ落ちそうになって、慌てて身体を支えたんやから…
「それでは両者に今後の意気込みを語って頂きましょう!先ずはチコ・マルチネス選手から…」
大作さんからマイクを受け取ったマルチネス、人懐っこい笑顔を携えて四方へ手を振っとる。
そして…
「コンチワ!ニポン ノ ヤツラ!! アイシチャッテルゼィ! オレガ カツ! オマエラ オウエン スル ヨロシッ!!」
な、なんちゅう日本語や…
大作さんも苦笑いしとるやんけ…
「ハハハ…なかなか面白い挨拶ありがとう…では…次は暮石選手にマイクを預けましょう!」
受け取った柔は目を閉じて俯いた。
そして…
「このトーナメントには、学生の時からの俺の親友が…最高の親友にして最大のライバルが出場してます……」
ここで一旦言葉を切った柔。
静まりかえる会場が次の言葉を待っとる。
すると柔は目を見開きながら顔を上げ……
「勇ぅ~~っっ!!約束を果たす時が来たでっ!!俺は絶~っ対に勝ぁ~つっ!せやからお前も絶~っ対に優勝せぇっ!!」
早口にそう叫んだんや。
俺は今すぐリングへ駆け上がりたい衝動を必死で抑え込んだ。
そして無意識に呟いとったんや…
「ったり前じゃ…待っとれよ…柔…」
こうして重大発表と休憩時間が終わり、いよいよ俺の試合の時間になった。
Aブロック代表を決める一戦!
相手はシード出場の中国武術使い、陳 椎掛や!!
強敵には違いあらへんけど、こんな所で躓いとられへんっ!
半年後、柔の前に立つ為に〝頂〟まで一気に駆け登ったるでっ!!




