猛牛
いよいよDブロックのシード選手が登場や!
個人的に1番観たかった選手かもしれん!
てか…俺…既に少し興奮しとる!!
だってせやろ?
アメリカンプロレス団体「IWA」そのトップレスラーの1人が総合格闘技に参戦するんやで!?
し・か・も!!
相手はシュートレスリングの内名 激丸!
つまり往年のUWFスタイルvsアメリカンプロレスの闘いって訳や。
これで熱くなるなって方が無理な話やで♪
お?両者の入場が始まるみたいやな。
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「さあっ!ついにDブロックへ突入しました!そして今、内名 激丸が花道をゆっくりと進んでまいります!大作さん、どうですか?内名の表情は?」
「ん~…彼は1回戦を不戦勝で勝ち上がってますから、直接観るのはこの試合が初めてになるんで正直わかりませんね…」
「そうでしょう!そうでしょうとも!!失礼!これは私の愚問でした…わかるはずが無いのですっ!!」
「たぁ~だぁ~しぃっ!!」
「はい?ただし?」
「相手が相手ですからね…緊張感は見て取れます。いや、少し気負い過ぎてるって言った方が近いかな?ましてや今大会のルールは、内名選手が最も得意とするであろうロスト・ポイント制ですからね…敗ける訳にはいかない!そんな想いが全身に滲み出てますね」
「なるほど!確かに表情だけで無く、リングに向かう動きすらが固く見えてしまいます。そうこう言っている間に内名がリングインッ!四方に手を振り声援に応えますっ!!」
「おっ!?ついに赤コーナーの番っすね!モンスター・バイソンを生で見れるとは!しかも総合のリングで!俺…今からちょっくらミーハーになるっすけど、許して下さいね!ハハハ♪」
「お~~っっっと~~っ!?突然、会場内が爆音に包まれたぁぁ~っ!!このギターのメロディライン!まさにプロレスの入場曲らしい安っぽさでありますっ!!」
「えっと…大丈夫っすか?そんな事言って…しかしまぁ驚きましたね!今大回で初めての入場曲使用!いやぁ…アガるわぁ♪」
「ついに姿を現しましたっ!!デ、デカぁ~いっ!!身長205cm 体重135kgは伊達じゃ無ぁ~いっ!!
あの厚い胸!冗談の様に太い腕と太腿!!
それだけでも説得力は十分だぁ~っ!!!
そして何とっ!顔に派手なペイントを施した、いつものスタイルで登場だぁ~っ!!っと…?な、なんとモンスター・バイソン!オープンフィンガーグローブを着用していないっ!!
こ、これではパンチは使えません!どういうつもりだバイソンッ!?」
「確かに気になりますね…エルボーパットとニーパットは着用していますが、グローブだけを嵌めなかったのは何か意図があってでしょうか?本当に普段のままでの登場っすね…流石にトレードマークの長髪は後ろで束ねていますが…」
「これは開始前にレフリーから何か言われそうですね…」
「いや、まぁパンチさえ使わなければルール違反では無いですからね…〝パンチは使えないが良いのか?〟くらいの確認はあると思いますが…」
「今!バイソンがトップロープを跨いでのリングインッ!!挙動の全てに華があるっ!我々も必然的に目を奪われますっ!!」
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すげぇな…まさに〝モンスター〟の名がピッタリやわ!
まぁ筋肉はステロイドで作った物やろな…
ステロイドはデメリットもある…それでも瞬間的なパワーは本物やからな。
しかもバイソンはハイスクール時代にアマレスとアメフトで鳴らした男や。
格闘家としても相当なもんやで…
おっ!?大作さんの予想通り、レフリーがバイソンに何やら確認取っとるな…
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「バイソン…ユーキャンノット パンチング…OK?」(バイソン…君はパンチを使えないが…良いのか?)
「オフコース!パンチ イズ ノー マイ ビジネス♪」(もちろんだ!パンチは俺の仕事じゃねぇよ♪)
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「おっと?バイソン、やはりパンチは使わない趣旨でグローブを着用しなかった模様!」
「その様ですね…つまり、打撃に頼らなくても勝てる…それだけの自信があるって事でしょうね。コリャ否が応でも期待が高まりますね♪」
「さあっ!両者がコーナーに戻り……
今ゴングが鳴ったぁぁ~~っ!!!」
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〝フフン♪会場の奴等も、TVを観てる奴等も、みんな俺が敗けると思ってんだろな…ところがドッコイ!大物喰いのチャンスやぞ?俺、メチャクチャ美味しいやんけ♪〟
「ヘイッ!カマンッ!モンキーボーイ♪」
〝チッ!構えもせんと棒立ちのまま手招きかよ…俺も舐められたもんやで!こういうデカブツは末端を狙うんがセオリーや!前田日明vsアンドレ・ザ・ジャイアントを再現したるで!!〟
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「おっと!いきなり内名が渾身のローを放つっ!右!左!また左っ!!バイソンはガードらしきガードも出来ないまま、呻き声をあげ顔をしかめる~っ!!」
「いや!あのオーバーアクション…あれは演技っすね…アメリカンプロレスではよく見る光景っすよ…」
「大作さんはあのバイソンのリアクションを演技と見たが、果たしてどうだぁ~っ!今回も予想は当たってしまうのかぁ~っ!?」
〝しまう…って…オイッ!!〟
「内名!何も出来ないバイソンを嘲笑うかの様に打撃で翻弄する~っ!ついにバイソンがローの連打でグラついたぁぁ~~っ!」
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〝へへへ♪チャンスや!意識を下に向かせといてからの顔面パンチ…せやけどこのパンチは捨て技や!この体格差やからな…当たったところで大した効果は期待出来んやろ。だから本命は…こっちのタックルじゃい!寝かせてしまえばこっちのもんや!マウントパンチの無いこのルールなら、寝技に持ち込みゃあ体格差はそれほど影響あらへんからなぁ♪〟
〝フフン!ザッツ スウィート♪〟
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衝撃やった…
いやマジで…
打撃をフェイントにしての内名のタックル。
それを簡単に切ったバイソンは、ガブった体勢から一気に抱え上げたんや!
誰もがそのままパワーボムに行くと思った…
せやけどバイソンの奴ときたら…
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「うわぁ~~っと!?内名のタックルを切ったバイソン!そのまま高々と逆さに抱え上げたぁぁ~っ!!投げ捨てるのかっ!?このままパワーボムでリングに投げ捨てるのかぁ~っ!?」
「いや……マジかよ……」
「な、な、な、なぁ~んとっバイソンッ!下では無く青コーナーへと投げつけたぁ~~っ!!当然ながら内名の動きはピタッと止まっているぅ~!」
「あ、ヤバッ!!」
「へ?…うわぁぁぁぁ~~っ!!コーナーに投げつけると同時にバイソンが走ったぁ~っ!そしてコーナーで棒立ちの内名に串刺しラリアット~~ッ!!まさに名の通り!猛牛の如き一撃ぃ~!
マウスピースを吐き出した内名!たまらずそのまま前のめりにダウ~~ンッ!!」
「あ、ダメだわコレ…内名選手…白目剥いちゃってるもの…」
「レフリー!カウントも取らずにゴングを要請ぃ~っ!!2分5秒!バイソンが圧倒的なパワーで内名を捩じ伏せたぁぁ~~っ!!」
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こ、これ程とは…
ほんまに怪物やんけ…
こりゃ今大会の台風の目やな…
とりあえずコレで準々決勝へ進出の8名が出揃った訳や。
Aブロック代表決定戦は俺と中国武術の陳。
Bブロック代表決定戦は忍術の不知火とシュートボクシングの薄井。
Cブロック代表決定戦がティラノのアホと日本拳法の舘。
で、Dブロック代表決定戦が今試合を終えたバイソンと古流武術の不破。
ここで20分間のトイレ休憩に入るんやけども…
アレ?いきなり大作さんがリングに上がってるやん…一体何や…?
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「ご来場の皆様!今大会主催のグングニル代表、福田大作です!ここで皆様に重大な発表がございます!!実はこの度…」
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その内容は衝撃的な物やった…
そして…
俺の闘志を更に燃え上がらせるに値する物やったんや!




