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中指 立てたら  作者: 福島崇史
179/248

奇襲

舘のサイドについたアレクサンダー…

そのまま舘の喉に前面から腕を絡めた。

所謂プロレスのドラゴンスリーパーみたいな型やな…

更にそこから重心を落としたもんやから、舘の身体が弓なりに反って行く。

んで腹部が完全に伸びきった瞬間、アレクサンダーが鳩尾(みぞおち)に肘を落としたんや!


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「お~~っと!こ、これはっ!?アレクサンダー、開幕直後だと言うのにエゲつない技を見せたぁぁぁ~~~っ!!更に技の衝撃で舘が後頭部がマットに叩きつけられたっ!舘がのたうち回るが、腹部と後頭部のどちらにやって良いのかわからないとばかりに腕が右往左往しているぅ~~っ!!そしてレフリーがダウンを宣告っ!カウントが始まったぁ~っ!!」


「コレですよ…コマンドサンボの恐ろしさは…

今の技…通称コマンドエルボーも、かつてリングスの試合でヴォルク・ハンが見せた事があるんですが、戦場ならば肘では無くナイフを突き立てるそうです。まさに生死の掛かった軍隊格闘技ならではですよね」


「なるほど~!どうしても寝技のイメージが強いコマンドサンボですが、ああいった技もあるんですね!」


「いや、あれこそがコマンドサンボなんです。厳密に言うならばサンボとコマンドサンボの技術体系は全くの別物なんです」


「と…言いますと?」


「サンボは寝技が主体のスポーツですが、コマンドサンボは軍や警察で使われる実戦格闘技…つまり道具を持った相手や、多人数を制圧する事を目的としています。そんな状況で寝技を使うのは自殺行為ですよね?だから立った状態での技が多いんです。因みにロシアではコマンドサンボでは無く、コンバットサンボと呼ぶらしいです」


「ほうっ!これは認識を改めさせられました!

っと?…そんな話をしている間に舘がカウントエイトで立ち上がったぁ~っ!」


「これで舘選手も軽はずみな攻めは出来ないでしょう…今後の展開に注目っすね」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


〝ぬう…(それがし)とした事が迂闊だったわ…これは(ふんどし)を締め直さねば…〟


〝コンバットサンボ ガ ドンナモノ カ ワカッタカネ…ニホンノ サムライヨ? ダガ マダマダ ダヨ!〟


〝捕まらぬ為にも、大振りや大技は使えぬな…細かい突きと下段蹴りで間合いを保ちながら様子見…そして隙を見つけたら渾身の縦拳を叩き込むっ!!〟


〝フフフ…キミ ノ カンガエテイル コトハ テニ トルヨウニ ワカルヨ…ダガ コレナラ ドウダイ!?〟


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「お~っと!今度はアレクサンダーから仕掛ける!ジャブの連打で前に出たぁ~っ!予想外の事に反応出来なかったか?舘が真っ直ぐ下がる~~っ!」


「舘選手…コーナーを背負っちゃいましたね…しかしアレクサンダー選手の打撃レベルを見る限り、舘選手が打ち負ける事は無いと思いますがね」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


〝くっ!まさか打撃で来るとは面食らった…だが粗い!そんな粗い打撃で某は倒せぬぞ!ほら…コンビネーションに穴だらけだ…よし!ここが勝機っ!!〟


〝フフフ!カカッタネ♪〟


〝!?…………〟


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「コーナーに詰めての連打が続く!」


「しかし変やな…」


「はい?」


「いえね…さっきからワンツーからのボディってコンビネーションを繰り返してるんすよ…しかもワンツーからボディブローに移行する時、微妙な間が空いてる…」


「おっと!大作さんの仰る通り、その微妙な間を突いて舘が反撃に出たぁぁ~~っ!」


「まずい!やっぱあの間は罠やっ!!」


「へ?あぁぁ~~っ!!な、なんと!尻餅をついているのは舘の方だぁぁ~~っ!?何だ!?何があった!?」


「舘選手が反撃に出た瞬間…そのパンチをかわしながら回転してのバックブロー!やはりあのぎこちないコンビネーションは狙っての事だったんすよ!やべぇな…あいつ…」


「し、しかし舘、直ぐに立ち上がったぁ~!レフリーもダウンを取らずにスリップと判断!このまま試合が続行だが、ダウンを取ったと思い込んだアレクサンダーはニュートラルコーナーへ向かって背を向けているぅ~~っ!!」


「舘選手、ちゃんと顎をガードしてましたね。

パンチと顎の間に上手く拳が挟まって助かったんでしょう…でなかったら今ので終わってましたね」


「背を向けたアレクサンダーに襲いかかるかと思いきや、舘はリング中央で静かに構えて相手を待っているぅ~~っ!!」


「そういう事が出来るタイプでは無さそうですしね…」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


〝マッテテ クレタノカヨ? フフン…アマイネェ~〟


〝奇襲などで勝ってもそれは価値なき勝利…それが某のやり方でな。さあアレクサンダーよ…準備は良いか?不肖ながらもこの舘透…推して参るっ!!〟


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


奇襲が茶飯事のプロレスラーからすれば、今のは絶好の勝機やってんけどな…

やっぱそこが〝武道家〟との違いってか?

とにかくこっからが仕切り直し…舘の判断が吉と出るか凶と出るか…

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