モブキャラ?
「さあっ!Bブロックも2試合目となります!
次はアマレスで強化選手にまで選抜されていた瀬尾津 健選手!残念ながらオリンピック代表は逃しましたが、その実力は皆さんも御承知の通り!対するはシュートボクシングの若き闘将!薄井 模武選手!
如何でしょう大作さん?この1戦をどう御覧になりますか?」
「そうですねぇ…アマレス選手は〝上〟になる事に関しては全格闘技の中でもトップクラスです。しかし今大会はマウントパンチが認められていない上にロープエスケープがあります…ですからマウントを取ったところで絶対有利とは言えません。ましてアマレスには関節技が無いですからね…瀬尾津選手がどれだけ関節技を勉強しているか?そしてどれだけ打撃対策を練っているか?そこに注目ですね」
「なるほど~!しかしそれにしても…両者共に変わった名前ですよね?」
「ハハハ確かに♪瀬尾津選手なんて〝せをつけん〟ですからね!アマレスをやる為に生まれたみたいな名前ですよね♪そして薄井選手…彼とはプライベートでも面識があるんですが、彼の名前の〝模武〟…その由来は武術の世界で模範的存在になる様に…と、元キックボクサーだった彼の父親が名付けたらしいんですけど…まさかこの時代に、脇役や雑魚を表す言葉として〝モブ〟ってのが定着するなんて、その時は思ってもみなかったでしょうね…」
「しかも名字が薄井…フルネームで〝うすいモブ〟ですからねぇ…失礼ながら〝どんだけ影が薄いねん!〟と、ツッコミたくなります!」
「まったく不憫としか言えませんね…ハハハ…」
「さぁ!そんな事を言っている間に両者入場のお時間となりました!!先に姿を見せたのは瀬尾津だぁ~っ!アマレスタイツでは無く、MMA選手が如きショートタイツでの入場だぁ~~っ!!」
「瀬尾津選手…かなり絞って来ましたねぇ。
分厚く四角いイメージでしたが、まるで打撃系選手の様な身体に仕上がってます。短く刈り上げた頭…痩けた頬に不精ヒゲ…精悍さが増しましたねぇ!」
「そうですねぇ!私もその変貌っぷりに驚きを禁じえませんっ!!観客の皆さんも我々と同じ思いなのでしょう!どよめきが会場を包んでおります!!」
「お?模武くんもご登場みたいですよ♪」
「逆コーナーから姿を現した~っ!キングモブッ!!薄井 模武だあぁぁぁ~~っっ!!」
「いや…あの…勝瀬津さん?それ、ただ単にディスってますよ…」
「あ……失礼しました…そんなつもりでは無く〝キングカズ〟的な言い回しをしたつもりだったんですが………そんな事より大作さん!如何でしょう薄井選手の仕上がりは?」
「(そんな事って…)そ、そうですねぇ…絞って来た瀬尾津選手とは逆に、薄井選手は増量してますねっ!3~4kgは増えてるんちゃいますかね?しかも単に太った訳では無く、ちゃんと筋肉での増量!明らかに寝技対策でしょうね。優男っぽいベビーフェイスにゴリゴリながら引き締まったマッチョボディ…また女性ファンが増えそうやなぁアイツ♪」
「確かにモテそうな風貌でもNO.1ですね!」
「でも?」
「あ…いや…その…変わった名前でもNO.1って意味であってですねぇ…決してモブ度がとかそういう意味では…あたふた…あたふた…」
「その辺にしときましょうか…言えば言う程アウトになりそうなんで…(あたふたって口で言うアナウンサー初めて見たわ…)」
「お気遣い感謝します……では気を取り直しまして……さあっ!レフリーのチェックも終わり、いよいよゴングですっ!!」
(た、立ち直り早っ!!)
「始まりました!先ずはお互いに様子を見…ない~~っ!!いきなり行ったぞ!薄井が行ったぁ~~っ!!間合いを詰めてのコンパクトなコンビネーション!瀬尾津の顔が左右に弾けるぅ~~っ!!」
「こ、これは意外でしたね…模武くんはスロースターターのイメージがあったんですが…あ!まだ行く!!」
「バックステップで間合いを取ろうとした瀬尾津だが、そうはさせじと薄井が追う~っ!そして前蹴りだぁ~っ!〝清正の槍〟の異名を持つ右前蹴りが瀬尾津の鳩尾に突き刺さったぁ~~っ!瀬尾津、たまらず腰を折るっ!これはダウンかぁっ!?」
「いや…模武くんがダウンさせずに仕留めに行きましたね!」
「え?お~~っとぉ~っ!?本当だあっ!大作さんの言う通り、薄井がダウンを許さないぃぃ~っ!瀬尾津の腰が落ちた所をフロントスリーパーに捕らえたぁっ!!しかし瀬尾津も絡みついた腕をほどこうと必死だぁっ!」
「いや!模武くんがフロントスリーパーを解いてその手を取りましたね!そしてスタンディングのアームロックに移行っ!さてはアイツ…最初からこっちを狙っとったな…?」
「おっと~薄井!腕を極めたままリング中央に連れ戻す!これは決まるか?決まってしまうのかぁぁ~~っ!?あ~~っ!?更に薄井、勝利を完全な物とする為、そのまま引き込んで胴に足を絡めたっ!!ガードポジションからのアームロックとほぼ同じ体勢っ!!たまらず瀬尾津がタップだぁ~っ!!」
「まさかのワンサイド…」
「1分24秒~~っ!!秒殺と呼んでも差し支え無いタイムでの決着ぅ~~っ!驚きましたねぇ大作さんっ!?」
「ほんと…驚きました…〝うすいモブ〟のクセに…ハハハ♪」
「いや!それ酷いですよ!せめて〝キングモブ〟と呼んであげて下さいよ!」
「や、だから…それが1番酷いですってば…」
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皆さんお久しぶりです…
この物語の主人公であるはずの不惑 勇です…
覚えておいででしょうか?
とりあえず主人公らしく、この試合の総括をしておこうかなぁ…と思って出て来ました。
まぁ試合内容は皆さんも実況でわかってると思います…だから一言だけ言わせて下さい……
実況の勝瀬津さん…解説の大作さん……
アンタらどっちも酷いわいっ!
目クソ鼻クソじゃ!!
ったく……




