現代版〝変わり身の術〟
ここからの闘いは臨場感を体感して頂きたく、選手目線を一部交えて描かせて頂きます…
ご了承下さいませ。
(第4の壁を越えて来た作者より)
「ひっとするかも?…という事は大作さん!この試合、忍術の不知火選手が勝つと見てらっしゃる!?」
「いえいえ!そうとは言いませんが…不知火選手がただの色物キャラでは無い事は確かだと思います。だから一方的な試合にはならない…そんな予感がします。まぁ希望的観測も含めて…ね」
「なるほど!ではこの後の展開も刮目いたしましょうっ!!」
一方リング上では…
「フッフッフ…どうした?こうも容易く背後を取らせるとは…最も実戦に近いと言われるMMAだが所詮はスポーツ…こんな物か…」
「へっ!ぬかせっ!!くっちゃべってたら舌ぁ噛むぞっ!!」
(しかし…まさかあんな方法で位置を入れ替えるたぁな…こいつぁ褌締め直さにゃあならんか…)
「その意気やよしっ!見事我に舌を噛ませてみるがいい…」
「言われんでもそうするわいっ!!」
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「お~っと!馬野選手が前に出た!!細かいジャブ連打から奥足へのロー!しかし不知火選手、大きくバックステップしてこれをかわす!!
ガードすらしない~~っ!!」
「不知火選手…かなり目が良いですね。しかし狭いリング上、あの動きを続ければいずれ…」
「更に追撃を加えて行く馬野に対し、不知火はヒラリヒラリとかわすのみ!いや!不知火!気付けばコーナーに追い込まれている~っ!!」
「ま、こうなるでしょうね…」
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「どうだい黒子くん…またもや逃げ場は無いぜ?同じ手は通じねぇぞ…どうするよ?」
「笑止!わざわざ警告とはお優しい事だ…
無駄口を叩かずとも攻めて来れば良いものを」
「ケッ!余裕かよ…?ならそうさせて貰うぜっ!!」
「愚かなり…」
「んなっ…!?」
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「コーナーに詰めた馬野!ジリジリと前に出ながら様子を見る!いやっ!?行ったぁぁ~~っ!
いきなりの右ストレート!渾身の右ぃぃ~っ!!!……え…?」
「ほぇ~…こいつぁ驚いた…」
「な、なぁんと不知火選手!馬野選手が前に出るタイミングでコーナーポストにヒョイと跳び乗ったぁ~~っ!まさに忍者の面目躍如~~っ!!」
「いや!不知火選手、動きを止めませんよ!
え?いや…マジかっ!?」
「うお~~っ!何と不知火!動きの止まった馬野目掛けてコーナー最上段からのフライングネックブリーカードロップゥゥ~~~ッ!!!
無防備なところでモロに喰らった馬野!後頭部を強かに打ちつけたぁ~っ!!そして不知火はそのまま上を取るっ!MMA選手の馬野に対し掟やぶりのマウントポジションだぁ~っ!!」
「しかし馬野選手はポジション争いが上手い事に定評があります…しかも不知火選手は着衣なので不利!これは悪手だったのでは…?」
「た、確かに!この大会、タイツ以外の着衣物への掴みは認められています!!不知火!君は何故に黒装束に身を包んでしまったぁ~っ!?」
「ほら言わん事っちゃ無い!さっそく襟元を掴まれてしまいましたよ!これで馬野選手がポジションを入れ替え……なっ!?」
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「へっ…へへっ…今のはちぃ~とばかし面食らったよ…でもな着衣で寝技師の俺に組み付いたのは間違いだったな!そ~らっ早速その襟、掴ませて貰うぜっ!!」
「なんなりと…」
「チッ!いちいち癪に障る野郎だぜっ!じゃあ御言葉に甘えて…そらよっ!!
え…いやいや…そんなのアリ…かよ……?」
「これとて闘法の一部なり!」
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「な~~~んと~~っ!!!馬野選手が襟を掴んで横に引き倒そうとした刹那っ!不知火選手の黒装束が音をたてて脆くも破れてしまったぁぁ~~っ!
こ、これは一体どういう事でしょうか大作さんっ!?」
「多分…あくまで想像ですけど…掴まれる事を想定して、最初から破れやすい素材の物を着用していたのでは…と。いわば現代版〝変わり身の術〟といったところでしょうか?」
「なるほど~!それは考えも及びませんでしたっ!馬野選手!呆気にとられて手の中にある黒装束の破片を見つめている~っ!まさに無防備状態!THE・無防備ぃ~~っ!!これを見逃さず不知火!その喉に正面から左前腕を圧し当てたぁ~っ!!」
「こ、これはキツいっすよ!しかも体重の乗せ方が上手い!馬野選手も足掻いてますがこのままでは…」
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〝クッ…!しくったぜ…予想外の出来事に動きを止めてしもた…!!マウントパンチが禁止ってルールに救われたな…とにかくこのまま密着されてたらヤバい!コイツとの間に隙間を作らんと…〟
〝フッ!そうだ足掻くだけ足掻け…今の貴様は蛇に絡みつかれた小動物!体力を消耗し切った時、我に丸飲みされるが運命!
ほぅ…両手で我を押し隙間を作るか?ならばこうしてやろう…どうだ?これで抵抗の手段は尽きたであろう?〟
〝な…!?コ、コイツ…俺の両手を折り重ねて俺達の身体の間に挟み込みやがった!しかも右手1本で…だと?き、器用な…ま…真似…を……〟
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「お~っと~!?あれほど暴れてバタついてた馬野選手の足が、借りてきた猫の様に大人しくなったぁぁ~~っ!!」
「コレはもう決まりですね…」
「レフリーが馬野の様子を確認する!
おっとここでレフリーが、上に乗っている不知火選手を突飛ばししたぁぁ~~っ!そしてすかさずゴングの要請ぃぃ~~っっ!!
4分46秒~っ!注目の異色対決は忍術の不知火選手に軍配が上がったぁぁ~~っ!!!
会場は興奮の坩堝と化し、観客の足踏みで地響きが鳴っているぅぅぅ~~っっっ!!!!」
「これは驚きましたね…自分で〝ひょっとするかも〟とは言いましたが、こないに一方的になるとは思いませんでしたわ…」
「手を挙げ勝ち名乗りを受ける不知火!まだ呆けた表情で横たわる馬野に対し、片手だけでの合掌…〝拝み手〟を送ったぁ~っ!」
Bブロック第1試合
不知火 鉄生 2回戦進出




