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中指 立てたら  作者: 福島崇史
163/248

現代版〝変わり身の術〟

ここからの闘いは臨場感を体感して頂きたく、選手目線を一部交えて(えが)かせて頂きます…

ご了承下さいませ。

(第4の壁を越えて来た作者より)


「ひっとするかも?…という事は大作さん!この試合、忍術の不知火選手が勝つと見てらっしゃる!?」


「いえいえ!そうとは言いませんが…不知火選手がただの色物キャラでは無い事は確かだと思います。だから一方的な試合にはならない…そんな予感がします。まぁ希望的観測も含めて…ね」


「なるほど!ではこの後の展開も刮目いたしましょうっ!!」


一方リング上では…


「フッフッフ…どうした?こうも容易く背後を取らせるとは…最も実戦に近いと言われるMMAだが所詮はスポーツ…こんな物か…」


「へっ!ぬかせっ!!くっちゃべってたら舌ぁ噛むぞっ!!」

(しかし…まさかあんな方法で位置を入れ替えるたぁな…こいつぁ褌締め直さにゃあならんか…)


「その意気やよしっ!見事我に舌を噛ませてみるがいい…」


「言われんでもそうするわいっ!!」

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「お~っと!馬野選手が前に出た!!細かいジャブ連打から奥足へのロー!しかし不知火選手、大きくバックステップしてこれをかわす!!

ガードすらしない~~っ!!」


「不知火選手…かなり目が良いですね。しかし狭いリング上、あの動きを続ければいずれ…」


「更に追撃を加えて行く馬野に対し、不知火はヒラリヒラリとかわすのみ!いや!不知火!気付けばコーナーに追い込まれている~っ!!」


「ま、こうなるでしょうね…」

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「どうだい黒子くん…またもや逃げ場は無いぜ?同じ手は通じねぇぞ…どうするよ?」


「笑止!わざわざ警告とはお優しい事だ…

無駄口を叩かずとも攻めて来れば良いものを」


「ケッ!余裕かよ…?ならそうさせて貰うぜっ!!」


「愚かなり…」


「んなっ…!?」

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「コーナーに詰めた馬野!ジリジリと前に出ながら様子を見る!いやっ!?行ったぁぁ~~っ!

いきなりの右ストレート!渾身の右ぃぃ~っ!!!……え…?」


「ほぇ~…こいつぁ驚いた…」


「な、なぁんと不知火選手!馬野選手が前に出るタイミングでコーナーポストにヒョイと跳び乗ったぁ~~っ!まさに忍者の面目躍如~~っ!!」


「いや!不知火選手、動きを止めませんよ!

え?いや…マジかっ!?」


「うお~~っ!何と不知火!動きの止まった馬野目掛けてコーナー最上段からのフライングネックブリーカードロップゥゥ~~~ッ!!!

無防備なところでモロに喰らった馬野!後頭部を(したた)かに打ちつけたぁ~っ!!そして不知火はそのまま上を取るっ!MMA選手の馬野に対し掟やぶりのマウントポジションだぁ~っ!!」


「しかし馬野選手はポジション争いが上手い事に定評があります…しかも不知火選手は着衣なので不利!これは悪手だったのでは…?」


「た、確かに!この大会、タイツ以外の着衣物への掴みは認められています!!不知火!君は何故に黒装束に身を包んでしまったぁ~っ!?」


「ほら言わん事っちゃ無い!さっそく襟元を掴まれてしまいましたよ!これで馬野選手がポジションを入れ替え……なっ!?」

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「へっ…へへっ…今のはちぃ~とばかし面食らったよ…でもな着衣で寝技師の俺に組み付いたのは間違いだったな!そ~らっ早速その襟、掴ませて貰うぜっ!!」


「なんなりと…」


「チッ!いちいち癪に障る野郎だぜっ!じゃあ御言葉に甘えて…そらよっ!!

え…いやいや…そんなのアリ…かよ……?」


「これとて闘法の一部なり!」

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「な~~~んと~~っ!!!馬野選手が襟を掴んで横に引き倒そうとした刹那っ!不知火選手の黒装束が音をたてて脆くも破れてしまったぁぁ~~っ!

こ、これは一体どういう事でしょうか大作さんっ!?」


「多分…あくまで想像ですけど…掴まれる事を想定して、最初から破れやすい素材の物を着用していたのでは…と。いわば現代版〝変わり身の術〟といったところでしょうか?」


「なるほど~!それは考えも及びませんでしたっ!馬野選手!呆気にとられて手の中にある黒装束の破片を見つめている~っ!まさに無防備状態!THE・無防備ぃ~~っ!!これを見逃さず不知火!その喉に正面から左前腕を圧し当てたぁ~っ!!」


「こ、これはキツいっすよ!しかも体重の乗せ方が上手い!馬野選手も足掻いてますがこのままでは…」

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


〝クッ…!しくったぜ…予想外の出来事に動きを止めてしもた…!!マウントパンチが禁止ってルールに救われたな…とにかくこのまま密着されてたらヤバい!コイツとの間に隙間を作らんと…〟


〝フッ!そうだ足掻くだけ足掻け…今の貴様は蛇に絡みつかれた小動物!体力を消耗し切った時、我に丸飲みされるが運命!

ほぅ…両手で我を押し隙間を作るか?ならばこうしてやろう…どうだ?これで抵抗の手段は尽きたであろう?〟


〝な…!?コ、コイツ…俺の両手を折り重ねて俺達の身体の間に挟み込みやがった!しかも右手1本で…だと?き、器用な…ま…真似…を……〟

・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「お~っと~!?あれほど暴れてバタついてた馬野選手の足が、借りてきた猫の様に大人しくなったぁぁ~~っ!!」


「コレはもう決まりですね…」


「レフリーが馬野の様子を確認する!

おっとここでレフリーが、上に乗っている不知火選手を突飛ばししたぁぁ~~っ!そしてすかさずゴングの要請ぃぃ~~っっ!!

4分46秒~っ!注目の異色対決は忍術の不知火選手に軍配が上がったぁぁ~~っ!!!

会場は興奮の坩堝と化し、観客の足踏みで地響きが鳴っているぅぅぅ~~っっっ!!!!」


「これは驚きましたね…自分で〝ひょっとするかも〟とは言いましたが、こないに一方的になるとは思いませんでしたわ…」


「手を挙げ勝ち名乗りを受ける不知火!まだ呆けた表情で横たわる馬野に対し、片手だけでの合掌…〝拝み手〟を送ったぁ~っ!」


Bブロック第1試合

不知火 鉄生 2回戦進出


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