忍術vsMMA
Aブロックの1回戦は一先ず終わった。
俺が2回戦で大河内に勝てば、次はシード選手の陳 椎掛と当たる事になる。
まぁそれはB~Dブロックの1回戦が全部終わってからの話。
とりあえず次はBブロックの1回戦、忍術使いの不知火 鉄生とMMAの壊し屋こと馬野 凛太郎ってカードや…これは興味深いで。
まるで初期のUFCみたいな組み合わせや!
既に両者はリング上…じっくり拝見させて貰おぅやないか♪
馬野はポジショニングが得意で、マウントを取るのが上手い。実際、勝った試合の殆んどがマウントポジションからのパウンドで、その威力は強烈無比!これまで8人の対戦相手が顔面を破壊されとる…それが異名である〝壊し屋〟の由来や。
オレンジ色のショートタイツにオレンジ色のオープンフィンガーグローブ、マウスピースまでがオレンジ色…
すっかりオレンジ色がイメージカラーとして定着しとるな。
対する不知火って選手…申し訳ないけど全く知らん!!
てか…忍術使いが表舞台に出て来る事なんてそうそう無いから知らんで当然よな…
やっぱ分身の術使ったりドロンしたりするんやろか?
何より気になるんはその服装や。
皆んなが想像する忍者の格好で出て来よった。
顔こそ出してるけど、上下は黒装束で統一…
掴まれ易いから不利やろうに…
オープンフィンガーグローブを着けて無いって事は、最初から顔面パンチは使わへんつもりって事か。確かに忍者はパンチより掌底を使うイメージやもんな…
しかしあの格好やからしゃあないけど、不知火に対するレフリーのボディチェックが半端ない。
見るからに〝クナイ〟とか〝手裏剣〟とか隠し持ってそうやもんな…ハハハ♪
お?両者がコーナーに戻された…ようやく始まるみたいやな。
レフリーがリング中央で手を振りおろす!
いよいよ試合開始や!
「さあ!いよいよ始まりましたBブロック1回戦!実況は引き続き私、勝瀬津 良太、そして解説も引き続き、グングニル代表の福田 大作さんにお願い致します!大作さんどうぞ宜しく!」
「こちらこそ宜しくどうぞ~♪」
「大作さん、どうですかこのカード?」
「そうですねぇ~…馬野選手の実力は皆の知るところですが、やっぱキーマンは不知火選手っすねぇ…全く読めないっす」
「やはりそうですか!さあ…あの福田大作を以てしても読めないこの試合!意外にも静かな立ち上がりで幕を開けました!馬野選手がガンガンに仕掛けるかと思いましたが、案外慎重ですね?」
「そうですね。まぁ相手のデータが皆無な上、忍術という未知の武術…警戒するのも已む無しといったところでしょう…いや!違いますね!馬野選手、ちゃんと仕掛けてますよ!」
「えっ!?おおっ!本当だぁ~!間合いを保つ為に細かく拳を突き出しながら、ジワジワと前に出ている~っ!対する不知火選手、追い詰められながらジリジリ後退!もうロープが背中に付きそうだぁぁぁ~~っ!!!」
「馬野選手はロープ際やコーナーに詰めてからの攻防に強い…恐らく仕掛けますよ!ただこの大会、ロープエスケープが認められていますからねぇ…MMAとは勝手が違う部分をどうカバーするか?見ものです!」
「さあっ!いよいよ追い詰められた不知火選手!馬野選手、どう仕掛けるかっ!?いや!お~っと!これは意外だぁ~っ!先に動いたのは不知火!細かい掌底の連打で前に出たぁ~っ!!ま・さ・に!窮鼠猫を噛んだぁぁぁ~~っ!!」
「しかし馬野選手も上手くバックステップを駆使しながらガードしていますね。このままリング中央に誘い出し、エスケープ出来ない場所で捕まえるつもりじゃないですかね?」
「なるほど!カウンターでのタックルを狙っている!そんなところでしょうかっ!?いや!先に身を屈めたのは不知火だぁ~っ!ガードを固めた馬野は見えていない!まさかの掟やぶり!まさかの逆タックル!」
「いえ…そうじゃありませんよ勝瀬津さん!」
「ん?お~っと!なんとタックルに行くと思われた不知火選手!そのままヘッドスライディングの要領で馬野選手の股を潜ったぁぁ~~っ!これにより立ち位置が逆転!いまやロープを背負っているのは馬野選手だぁ~~っ!!」
「勝瀬津さん…この試合…ひょっとするとひょっとするかも知れませんよ…」




