〝喧嘩屋〟入場!
試合を終え、大歓声に見送られながら控え室へと戻った俺。
セコンドの鈴本さんと新木さんから労いの言葉とマッサージを受けながら、ボンヤリとモニターを眺めた。
すると早くも第2試合の選手呼び込みが始まったんや。
そりゃそうよな…
総勢20人によるトーナメントをたった1日で済ませようってんやから、1回戦くらいは足早に消化せんと時間が足りんわな…
先に呼び込まれたんは〝喧嘩屋〟の肩書きで出場しとる、柴木 捲選手…いや、そもそも選手って呼んでええんかすら疑問やけどな。
てか、それよりもっとデカい疑問があるんやけども…とりあえず鈴本さんに訊いてみっか…
「鈴本さん…?」
「ん、どした?」
「この大会…確か…所属する団体や道場からの推薦が無かったら参加出来なかったっすよね?」
「あぁ…そのはずやけど…それがどしたんや?」
「じゃあこの柴木って選手、どっからの推薦ですのん?流派が喧嘩屋って…」
ここで鈴本さんが答えるより先に新木さんが割って入って来た。
「やっぱアレちゃう?全日本番長連合とか、全国不良組合とかの推薦なんちゃうか?」
「……」
「……」
「……あ、すんませんした……」
俺と鈴本さんが閉口したのを見て、自らも口を閉じるゴリラの化身。
それを見届けてようやく鈴本さんが口を開いた。
「そいつな…一応は格闘技団体に所属はしとるんよ…」
「え!マジっすか!?」
「元プロレスラーで格闘家の前沢 晃氏がプロデュースしとる団体で、全国の不良がリングで闘うってコンセプトの…」
「あ!アンダーグラウンド!通称アングラっすね!?」
「そう…そのアングラ所属らしいわ」
「じゃあコイツがアングラ最強って事っすか?」
「いや…戦績自体は大した事無いみたいやけど、大物喰い…いわゆる金星が一番多いらしいわ。その一点だけで白羽の矢が立ったらしいで。まぁそんな事だけで出場選手に選抜した大作も大作やけどな…」
「へぇ~…」
俺がモニターに目を戻すと、柴木が〝ややこしそう〟な連中を7~8人引き連れて悠々と花道を歩いて来るとこやった。
先頭を歩く柴木…
白の特攻服を羽織っとるから、ハッキリとした体格までは把握出来んけど、印象としては〝ヒョロい〟ってのが正直なところ…
ただ、手足はやたら長く見える。
だからこそ〝ヒョロい〟のが強調されとるんかな?
とにかく〝蜘蛛みたいやな〟…って思ったんは内緒や。
金髪のリーゼントは〝宇宙戦艦ヤマトの船首部分か!〟とツッコミを入れずには居られへん位にデカい。ソレ…余計に身体の細さが際立つやん…
その上〝ややこしそう〟な連中の中にセコンドらしい姿は見当たらへん…誰もバケツやら救急箱やら持ってへんねんもの。
その代わりに旗やらタオルやらを振り回しとる…
こうなると只の〝輩〟やん!
あ…最近はDQNて言うんやっけか?
まぁ何でもええけど、とても〝スポーツマンシップ〟があるとは思えへん。
でもその佇まいが客にはウケたんやろな、凄ぇ歓声が送られとるわ。
ただ…次のシーンで俺の持つ奴への印象は大きく変えられたんや…
「オイッ!テメェ等!!派手に応援すんのは構わねぇ…むしろヤリやがれってところだぁ…だがよぅ…何があっても相手さんにテメェ等が口挟んだり、手ェ出したりすんじゃ無ぇぞ!?コイツぁ俺ッチの喧嘩だぁ…そこんとこ忘れんじゃ無ぇぞ!わかったかオラァ~~ッ!?」
柴木に一喝された途端、派手に立ち回ってた連中が全員〝気をつけ〟して「押忍!!」って答えとった。
それを見て俺は…
「へぇ…とっぽいながらも解ってんなコイツ♪」
そない思ったんや。
んでもってその直後、対戦相手である古流柔術の使い手 大河内 晋がコールされたんや…




