表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中指 立てたら  作者: 福島崇史
158/248

GoGo!Heaven

示現流…昔、何かのマンガで見た事あるだけやから、俺もそんなに詳しいとは言われへん。

でもそのマンガに描いてあった示現流の特徴は、二の打ちや三の打ちを考えず、初彈に全てを賭けその一撃をもって相手を倒す…ってもんやった。

その必倒の一撃を繰り出す為の構えが、比嘉の見せた〝蜻蛉の構え〟や。

なるほど…〝刀〟を〝手刀〟に変えて応用するたぁ考えたやんけ!

多分…色んな武術や格闘技を取り入れ、自分なりに消化しアレンジを加えた空手…それが奴の沖縄空手なんやろ。

奴の使う空手が〝比嘉手(ひがんて)〟と呼ばれとるのも頷けるで。


ほんでもって目の前の奴は、又もや蜻蛉の構えを取っとる…

さっきは偶然にも上手い具合にガード出来たけど、受けた腕がまだ痺れとる。

あんなもん何度もガードしとったら、その内に腕が使いもんならん様になってまう…

と、なると…やる事ぁ1つや!

策は決まった…さぁ打って来いや比嘉!


「お!その顔…なにかぁ策ぅ思いついたみたいね?ならぁ遠慮のぅ行かせて貰うよぅ♪」


言い終えると、比嘉の空気が変わった!

全身からメラメラとした(もん)が立ち込めとる…

来るっ!!

俺が殺気を感じると共に気合い一閃!

奇声とも取れる叫びをあげて比嘉が飛び込んで来た!

俺は奴の手刀から目を離さず、ギリギリまで引き付けてから身を沈めた!

せやっ!定番中の定番、カウンターの低空片足タックルや!

軽くサイドステップして、横から奴の左足に抱きつく。

そんでもって肩で膝を押しながら捕まえた足を引く!

すると驚くほど簡単に、比嘉の背中がマットについとった…


〝!?…な、なんや…この違和感?なんやっけ…こういう感じを表す慣用句あったよな…?え~っと…せや!思い出した!暖簾(のれん)に…いや…(ぬか)にやっけか?…まあええわいっ!〟


とにかく手応えが無さ過ぎたんや…

で、そんな事を考えとる内に、奴の両足が(つた)みたいにスルスルと俺の首もとに絡みついて来たんや!


〝さ、三角締め!?こ、こいつ…〟


「アンタがタックル合わせて来るのは分かってたさぁ。だってぇ俺でもそうするもの。だからカウンターのタックルにぃ、更にカウンターの寝技を合わせたさぁ♪」


「お、お前…や、やっぱり…じ、自分から倒れ込んだんや…な?」


「そうよ~!空手がぁ打撃しか無いって思われるのも心外やかんねぇ…そもそも空手が〝何でもあり〟だってぇ所を見せてあげるさぁ♪」


「ざっけんなぁ~っ!!」


俺は上体を反らして奴の身体との密着を避けた。

すると絡まっとった足と首の間に隙間が出来、奴の三角締めは型が崩れた!


「おっしゃ~っ!!」


思わず叫んだ俺に、嗤いながら比嘉が言う…


「甘いよぅレスラー君♪」


すかさずターゲットを伸びきった腕にシフトした比嘉、アッちゅう間に腕十字を取られそうになっとった!


〝こ、こいつ…うめぇ…〟


ロープは目の前にあるけど、レスラーの俺が空手家より先にエスケープするなんざぁ格好悪いやんけっ!

そんな意地だけで手をフックさせて必死に堪える。

すると比嘉の奴、こんな事をぬかしよった!


「プロレスラーを寝技でぇ倒す空手家…いやぁ俺ぇ有名になっちゃうかもねぇ♪」


これが俺の闘志に燃料を投下したんや!


「プロレスラーを…プロレスラーを舐めんな空手屋ぁぁ~~!!」


絡みつく奴の身体を持ち上げながら立ち上がり、俺はそのままコーナーポストを目指した!


「え…?え…?ちょ…ど、どこ行くさぁ…?」


俺が奴の身体をコーナーのてっぺんに置くと、驚きからか掴まれてた腕は呆気ないほど簡単に抜けた。

そして奴の後を追う様に、俺もコーナーから生えた左右のトップロープに飛び乗ると…


「どこ行くかって?教えたるわ……天国じゃいっ!!」


叫びながら奴の首を両足で挟む様に飛び付き、そのままリング目掛けてバク宙!!

せやっ!雪崩式フランケンシュタイナーでブッこ抜いたったんや♪

不幸やったんは、奴がプロレスラーや無くて空手家やった事…

喰らった事無い技への対処がわからず、脳天からリングに串刺しなっとった。

体勢を整えて奴を見た時、奴が棒崩しみたいにゆ~っくりリングに倒れるとこやった。

で…次に見た奴の顔は、白目を剥いて口から泡を吹いとったわ。

でも何故か嗤ってたんよね…やだ怖い。


レフリーが駆け寄り、直ぐさま頭上で腕を交差させる。と、同時にゴングが乱打され、大歓声の中で俺の1回戦突破が確定したんや。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ