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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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蜻蛉(とんぼ)

レフリーのボディチェック中…

相変わらずニヤニヤしながら俺を見る比嘉。

だから俺もニヤニヤ顔を返し、そのまま中指を立てて見せたんや。


「コレは俺のシュートサインや!お互い恨みっこも手加減も無しや!ええなっ!?」


「恨み?そんなん持つ訳無いさぁ。だってぇ俺、プロレスラーに憧れて格闘技始めたんさ。だからアンタん事ぉ軽く尊敬までしとるんよぉ」


「え…?あ…そうなの…?」


どうやら俺は勘違いしとったみたいや…

コイツは〝ニヤニヤ〟しとったんや無く、憧れのプロレスラーを見て〝ニコニコ〟しとったらしい。

なんや…訛りは酷いけどエエ奴やんけ!

うん…訛りは酷いけど…


レフリーがチェックをしながら、俺達を睨んで舌打ちする。


「お前ら!私語はつつしめ!ええな!?」


俺は心の中でこう答えた。

〝なんくるないさぁ〟

(使い方合ってる?)



レフリーが俺達の距離を離し、間の抜けた確認をしよった…


「準備はええか?」


んなもんこの試合が決まった数ヶ月前から、全員が出来とるっちゅうねん!

腹ではそない思いながらも軽く頷いて応える。

比嘉もほぼ同時に頷いとった。

そしてついに俺達の間の空間を、レフリーの手刀が切り裂いた!


「ファイッ!!」


レフリーの叫びとゴングの鈍い金属音…そこに観客の大歓声が重なり、ついに俺達の闘いは始まった。


〝相手は空手家…しかも沖縄空手や。俺の知らん事を仕掛けて来るかもしれん…用心せな…な〟


するとそれを見透かしたみたいに、比嘉の奴が見慣れん構えを取って見せた。

右腕を大きく直角に横へと出し、左腕は胸の前で右腕方向へ曲げられとる…

例えるなら…ウルトラマンが八つ裂き光輪を出す前みたいな構え。

怪訝に思いながらも腕のガードを上げて数歩下がる俺…するとその瞬間!

奴は信じられへんスピードで間合いを飛び込んで来よったんや!しかも1歩で!!


「うおっ!?」


思わず声を漏らした俺やったけど、次の瞬間には呻き声に変わっとった…

奴は飛び込み様、横に構えてた右手の手刀を俺の首筋に打ち込んで来てたんや。

幸いにもガードを上げてたお陰で、喰らったのは前腕部分…それでも痺れが来る程の衝撃やった。


〝動き止めたら追撃が来る!組みに行って捕まえたる!!〟


ガードを解いて前に手を伸ばした時には、奴はもうその場に()らんかった…

大きくバックステップしたらしく、試合開始時と同じ位置にまで戻っとる。

しかも又あの構えを取って…


「咄嗟にガード上げてぇ助かったねぇ!まさか受けられるとは思わんかったさぁ♪」


何故か嬉しそうに言う比嘉。

その時、俺は奴の構えに既視感を覚えてたんや。


〝あの構え…確かにどっかで見た事あるぞ…?〟


その想いが顔に出てたんやろな…

比嘉の奴がこない言うて来よった…


「あれぇ?もうバレちゃったかなぁ?これが空手の構えじゃあ無いって事ぉ…」


〝空手の構えとちゃう…やと?あ!思い出した!!〟


この思い出したのも表情に出てしもたんやろな…

又もや比嘉が口を開いた。


「お!?やっぱバレてるみたいやねぇ♪いや流石はプロレスラーねぇ!そうさぁ!これは剣道…それも示現流の〝蜻蛉の構え〟を取り入れたんさぁ♪」



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