表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中指 立てたら  作者: 福島崇史
156/248

決戦直前

対戦相手の比嘉(ひが)一茶(いっさ)選手…

身長は170cmちょい…体重かて80kgあるか無いかって感じや。

でも小さくは見えへん…全てがゴツいから。

ムキムキのマッチョってのとも違う…

ん~…上手く説明するんが難しいんやけど、全身のパーツを全て四角で作ったら人間はこうなる…って感じやねん!解る!?

顔も四角い!身体も四角い!腕も脚も全~部が四角いねん!!

子供が落書きしたロボットみたいな印象やねん!

あ…一応言っとくけどdisっとる訳や無いで!!

むしろ褒めとるんやで!!

と、まぁ…言えば言う程に言い訳がましくなるからこの辺にしとくわ…


沖縄空手の使い手やから空手着で試合するんかと思ってたけど、上半身裸に膝上までの真っ赤なハーフタイツかぁ…なんか意外やな。

そこまでの矜持は持ち合わせとらんのか…

それとも道着着用の不利を嫌うリアリストなんか…

それよりも気になるんが表情や。

リラックスしきってるっちゅうか…

見下されてるって感じすら受ける…

いや!リアルに舐められてるんかも知れん!!

ホラ!だって今、目が()うた瞬間に鼻で嗤いよったもんよアイツ!!

グヌヌ…おのれぇ~…プロレスラーなんざぁ目や無いってか?

よっしゃ!そっちがその気ならギャフンと言わしたろうやないかいっ!!


「おい…勇…お前…今…何か興奮しとらんか?」


セコンドに就いてくれた鈴本さんに見透かされるワイ…


「だって…アイツ俺の事を舐めてんスよ…」


「舐めてる?本人に何か言われたんか?」


「いや…何か見下されてる気がするし、さっき目が合った瞬間に嗤われたんス!!」


すると鈴本さん、深い溜息と共に俺の右肩へ手を置いて…


「ええか勇…それを人は被害妄想と呼ぶんやで」


「ついでに言うなら自意識過剰…な」


もう1人のセコンド新木(あらき)康夫(やすお)さんも、俺の左肩に手を置きながらそない言いはった。

あ…この新木さんて人、グングニル創始者の1人でありながら若くして亡くなられた、福井(ふくい)(たかし)さんの兄弟分。

障害者の部でトレーナーしながら、試合の時にはレフリーもやりはる。

因みに見た目は完全にゴリラ。

過去にも俺の周辺にはゴリラの称号を得た人物がたくさん()ったけど、この人が断トツでゴリラ。

この人こそがゴリラ。

ゴリラが平伏す程のゴリラ オブ ゴリラ。

初めて見た時は…

〝逆玉手箱の煙でも浴びたか?軽く先祖帰りしてるとしか思えんのだが…〟

って思ったもの。


俺が歴代ゴリラに想いを馳せてる間に、レフリーが俺と比嘉をリング中央へと呼び寄せた。

すると鈴本さんと新木さん…俺の肩から手を離し、それをそのまま思い切り背中に叩きつけて来よった!!


〝~~~ッッッ!!!〟


余りに突然の衝撃と痛みに、俺は声にならない呻き声をあげる。

そして歯を食い縛った表情のまま2人の方に振り返ると…


「やって来た練習を信じて行って来い!」


「絶対に勝てる!出来る子や♪」


2人とも凄ぇ良い顔で俺を見てやがんの。

ズルい…あんな顔見せられたら文句なんて言われへんがな。

俺は笑顔で親指を立てて見せ、直ぐ様リング中央へと向かった。

背中では紅く色づいた2枚の紅葉が、ズキズキと鈍い痛みで俺を後押ししてくれてたんや。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ