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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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格闘家ハンターへの道

「格闘技トーナメント…武人(もののふ)…?」


俺は書いてある字をそのまま呟いとった。


「そう!うちのジムをはじめ、提携関係のグラップスや烏合衆、他からも広く門戸を解放して出場者を募る…予定では30人前後が参加する超大型トーナメントや!」


「あのぅ…ルールは?」


「勿論ロープエスケープ有りのロストポイント制や♪」


〝トクンッ〟

俺の鼓動が僅かに昂った…


「出場選手の選別はどういった形で?やっぱ選考試合とかやるんすか…?」


「いや…それをやったらトーナメント本戦の開催がかなり先になってまうやろ?怪我で出れんようになられても困るしな…」


「じゃあ…どうやって?」


1つ咳払いをした大作さんがドヤ顔を作った。

そして…


「各ジム・各道場が推薦した人間ならプロ・アマ問わず誰でも応募出来る。ただしそれやとドえらい人数になるやろから、書類選考で(ふるい)には掛けるけどな」


「プロ・アマ問わず…マジっすか!?」


「ああ。だってさプロより強いアマも沢山おるやん?だから垣根を取っ払って真のNO.1を決めようやないか!…てのがこの大会のコンセプトな訳よ♪」


〝凄ぇ…こいつぁ凄ぇ事になるぞ!〟

俺の本能がそない告げとった。

ん…待てよ?さっき大作さんは〝俺に〟良い情報持って来たって言ったよな?

ジムの推薦があれば応募出来て〝俺にとって〟良い情報…て事は…

ハッとして大作さんを見やると…


「お?やっと気付いたんかいな♪そう!勇くん…自分に出て貰うつもりや!」


「……」


突然の事で言葉が出て()ぇへん…

すると俺の薄いリアクションで不安になったらしく、顔を覗き込むようにして大作さんが訊いて来た。


「あれ?えっと…フリーになったお祝いのつもりやってんけど…迷惑やったか?」


慌てた俺、残像が残る勢いで首を振る。


「いやいやいやいやいやいやいやっ!」


「何回言うねん…」


「7回っす」


「数えとったんかいっ!で、どうよ?まぁ今の君が勝ち上がるのは難しいやろけど、腕試しに出てみんか?」


「是非ともっ!…あ!まさか書類選考で落として〝ごめん勇くん!やっぱ出れんようなったけど堪忍やでぇ〟とか言うオチにするつもりや無いでしょうね!?」


「………若いのに被害妄想が過ぎるぞ…君…」


「あ、さぁせん…なら是非お願いします!俺を出させて下さい!ただ…」


「ただ?」


「1つだけ反論させて貰うっす…出るからには優勝狙うっすよ」


「ん?あぁ…悪い悪い!さっきの勝ち上がるのは難しいって言った事かいな?確かに失言やったな…堪忍やで」


こうして俺のトーナメント出場はほぼ決定した。

これだけのトーナメントや…もしほんまに優勝出来たら、それは立派なタイトルになる!

それすなわち、柔と肩を並べるネームバリューを手に入れられるって事や!

いや…待てよ…いっそ柔もこのトーナメントに出て来んやろか?

んでもって決勝でぶつかれたなら、こんなドラマチックで胸熱な展開あらへんやんっ♪

空想の中、1人で盛り上がる俺を現実に引き戻したのは鈴本さんやった…


「勇くん…1つ言っとくけど、大作さんの言う通り今の君やと勝ち上がるのは難しい…てか不可能に近いで」


「なっ…!?」


「敗けるつもりで試合に出る奴はおらへん…それは解っとるよ。でもなぁ冷静に考えてみ?俺程度を相手に5分以内でやられる…それが今の君の実力や。全国のジムや道場から推薦された奴等が集まるねんで?とんでもない怪物が集まると思った方がええ…どんだけ備えても足りんって事は無いはずや」


「た、確かに…」


俺は浮かれとる自分を恥じた…

鈴本さんの言う通りや。

鈴本さんもプロとして試合に出てはるけど、正直大した実績は残してはらへん…

その鈴本さんに子供扱いされたんが俺や…

〝格闘家〟としての俺なんてそんなもんやって現実を叩きつけられた気分やで。

せやけどな…残念ながら俺は〝格闘家〟やのうて〝プロレスラー〟や!

こっから俺のプロレスラー人生第2章

〝格闘家ハンター編〟が始まるねんっ!!

そんな新たな闘志を心に灯した時、鈴本さんが言いはった…


「へぇ…その顔は何か企んでる感じやな…ま、ええやろ!どの道グングニルは君を全面支援するんや。支援と言うたかて甘やかす訳や無いからな…ビッシビシ鍛えるから覚悟しときぃや!?」


「押忍っ!ご指導のほど宜しくお願いしますっ!!」


俺は深々と頭を下げ〝格闘家ハンター〟への第1歩を踏み出したんや。



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