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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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久々に中指立ててみた!

グングニルでお世話になる事が決まった翌日から、早速練習に参加させて貰う事になった。

グングニルは〝一般の部〟と、心身に障害を抱えた人達の集まる〝障害の部〟があるんやけど、

ジムにリングは1つしか無い為、時間帯によって交代で使う事になっとるらしい。

そんな理由からか〝午前10時に来る様に〟と大作さんに言われていた。

新参者らしく15分前にはジムに到着し、5分前には着替えを済ませてトレーニングエリアに立つ。

すると…


「お!ちゃんと時間通りやな、感心感心♪」


「あ、大作さん!おはようございます!!」


「ん、苦しゅうない。ところで勇くん…今日は俺、障害の部の練習を見なアカン日なんよ。てな訳でこの男に君を預けるわ。見た目は優男やけど中身はかな~り厳しいからさ、しっかりしごいて貰うんやでぇ♪」


その言葉と同時に、大作さんの隣に立っていた男性が1歩前に出た。

身長は185cm程ありそうやけど、体重は70kgも無いやろな…お世辞にも逞しいとは言えん身体や。むしろ〝貧弱〟な印象すらある。

大作さんの言う通り〝優男〟ってのが1番シックリ来るかな…

その男性が右手を差し出しながら自己紹介する。


「選手兼、一般の部のコーチをしてる鈴本…鈴本(すずもと) (ひろし)です。宜しくね」


〝鈴本…鈴本…?あっ!俺、この人知ってる!

かなり前に観た試合で、腕折られてるのに担架に乗るのを拒んで、きっちり自分の足でリングを下りた人や…なかなかインパクト強かったから記憶に残ってるわ〟

そんな事を思い出しながら右手を握り返す。


「不惑 勇です…これからお世話になりますが、宜しくお願いします!」


「君の事は勿論知ってるで。今後は俺が練習見る事が多くなると思うから、一応最初に言うとくけど…有名人でも甘やかさへんから、そのつもりでな」


決して嫌味な言い方では無く、真実を真実のままに伝えてくれたって感じ。せやから全然不快感も無く、むしろ信用出来るって思ったわ。

だからこそ…


「勿論です!こちらも有名人やなんて驕りは無いんで、ビッシビシ来て下さい!」


そう答えると…意外な言葉が戻って来た。


「ん、じゃあアップだけ済ませたら、早速スパーやって貰おか?」


「え!?初日からっすか!?」


「うん…不服?」


「いや…そういう訳ちゃいますけど…」


「未経験者にいきなりスパーさせる様な事は無いけど、フリーとは言え君は〝プロ〟やろ?君がどれだけ出来るんか…一応見ときたいからさ」


「なるほど…それもそうっすね…わかりました!」


「じゃあ…自分なりにアップ済ましたらリングに来てくれる?」


「ウッス!」


それから約20分、動体ストレッチをメインに身体を暖め、軽く汗ばんだところでリングへと向かった。

するとリング内には鈴本さんだけで、練習相手らしき人物が見当たらない…


「あのぅ…鈴本さん?自分のスパー相手は…?」


「ん?ここにおるやん…俺が…」


「………ええぇぇ~~っ!?」


「ん?何…そのリアクションは?不服なん?」


オープンフィンガーグローブを着用した拳を、互いにバンバンぶつけながら〝圧〟を飛ばして来はる…

それに圧された俺が力無く答える…


「いえ…ちっとも…」


「ん、ならええやん。知ってると思うけど、うちはバーリ・トゥードはやらへんのよ。だからスパーもロープエスケープありのロストポイント制でやるけど…ええよな?」


「ウッス!」


「あ…もし顔面パンチ打ちたいんやったら、オープンフィンガーグローブ着けてな?解ってるとは思うけど…一応言っとく」


「いや、要らないっす!自分はプロレスラーっすから」


「そっか…なら始めよか…」


「自分も1つだけ言わせて貰っていいっすか?」


「ん?」


無礼を承知で鈴本さんに向かって右手の中指を立てて見せる…そして久々の決めポーズ&決め台詞を叩きつけたんや!


「これは俺のシュートサインっす…手加減も恨みっこも無しで行かせて貰うっすよ!!」


それを受けた鈴本さん、目だけが微動だにしない笑顔でこない呟いたんや…


「上等…元気があってヨロシイやん♪」









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