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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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2匹のプレデター

人気レゲエバンドの曲が流れる中、リズムに身体を揺らしながら花道をゆっくり進む柔。

踊るようなステップを踏みながら、満面の笑顔で客席に手と愛想を振りまいとる。

ガウンも纏わず裸足のまま。

身につけてるのは、シルバーのハーフタイツに青いオープンフィンガーグローブのみ。

パンプアップされ仕上がった剥き出しの肉体は、もう俺の知ってる〝それ〟や無かった。


「チャラ男の奴、身体も仕上がっとるしリラックス出来てるみたいやし、これイケるんちゃう?」


「ん…せやな…」


そそぐちゃんの問い掛けに、空返事を返す事しか出来へんかった…

俺には気に掛かる事があったからや。

そそぐちゃんは柔がリラックスしてるって言うたけど、アイツは間違いなく緊張しとる…

付き合いの長い俺やからこそ解る。

アイツは緊張すればするほど、それを塗り潰そうと必要以上に明るく振舞う。

今日の〝チョケた〟感じはまさにそれや…

胸の中を嫌な予感が支配しそうになる。


先導のセコンド2人がリングに到達したというのに、アイツは未だ花道の真ん中辺り。

それに気付いた柔が小走りでリングを目指すと、編み込んだドレッドヘアがバラバラに跳ねた。

セコンドが開いたロープの間を潜り、ようやくリングインを果たした柔を大歓声と拍手の嵐が包み込んだ。

それを見て、又も嫉妬心が沸き上がるのを必死で抑え込んだ…

そのタイミングで柔の入場曲がフェードアウトし、そのまま対戦相手の入場曲が流れ始める。

先のレゲエとはうって変わり、爆音で何やら喚き散らすデスボイス。

余りにうるさいので、隣のそそぐちゃんがイラッとした顔で舌打ちしよったわ。

信じられへんやろけど彼女…ゴリゴリの純愛ソングが好きなんよね。〝草食のライオン〟みたいで笑えるべ?


いよいよ姿を現した柔の対戦相手…

ウィリー・オーフレイムって名前やねんけども、〝ハリケーン・ダッチ〟ってリングネームで闘ってる。

そのリングネームからも判るようにオランダ人。

でも黒人の血が濃く、パッと見ぃではアメリカやアフリカの選手かなぁと思ってまう。

彼もガウンやTシャツは着て無くて、黒のハーフタイツと赤いオープンフィンガーグローブを着用しとるだけ。

ただ柔とは違い、裸足やなくレスリングシューズを履いとるわ。

身長は柔より少し高いかな…

そして奇しくも柔と同じドレッドヘア。

手足が長く、しなやかな筋肉は猫科の猛獣みたいや。

パフォーマンスをするでも無く、薄ら笑いを浮かべながら真っ直ぐにリングへ歩みを進める。

その雰囲気には少し不気味さを感じたわ…


両者のコールとボディチェックが終わり、レフリーが一旦コーナーへ戻るよう2人へと指示を出す。

いよいよやっ!

数秒後に始まる事に備え、互いに自陣付近で構えを取る。

両者共にドレッドヘアやから、その様子はまるで臨戦態勢の2匹のプレデターみたいに思えた。

そしてついに…


「ファイッ!!」


運命を左右するレフリーの金切り声が会場に響いたんや。





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