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中指 立てたら  作者: 福島崇史
135/248

最悪の結末

コーナーポスト最上段からの〝雪崩式投げっぱなしジャーマン〟

フィニッシュホールドでもおかしく無い技やのに、出し惜しみもせず序盤から使ったトリケラ。

喰らったティラノは、反対側のコーナー付近で後頭部を抱えながら、釣り上げられた魚みたいに身を跳ねとる…

いくら鍛えとるとは言えレスラーかて人間や、痛いもんは痛い。

ましてや後頭部なんか鍛えられへんからなぁ…

確かに相手の頭を叩きつけ合うのがプロレスで、その為に受身を徹底的に練習する訳やけども、受身で防げる衝撃にも限度はある。

今の技はその限度を遥かに超えてるはずや…


おっと…

トリケラが追撃を狙ってコーナーから降りたで…

さあ、こっからどない繋ぐつもりや?

ヒールらしくラフプレーに行くんか…

それとも本来のお前らしくテクニックを見せるんか…

逆にティラノはどう動く?

今以上に攻め込まれたらマズいけども、ダメージ回復もままならない状態では反撃も難しい…

なんにせよ、お前らの〝プロレス力〟が試される時やで…お二人さんよ。


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「いい様じゃあないか…ええ?寺野よっ!?やっぱ人は見下ろすに限るなぁオイッ!?」


「へっ!ほざいてろや腹黒野郎がよっ!!序盤くらいは華を持たせてやろぅっちゅう俺の優しさ…そんなに喜んで貰えたら俺も喰らった甲斐があるっちゅうもんやで♪」


「クッ…!減らず口を…オラッ!立てやっ!!」


〝へっ!やっぱそう来たか…挑発すりゃ冷静さを欠いたお前は髪を掴んで俺を引き摺り起こす…計算通りやでぇ…なら俺はこれで反撃や!〟

「まだまだ甘ぇな!虎池よっ!オラッ!!」


「ガアッ!」

〝なっ!?髪を掴んだ俺の手を取っての脇固めだと!?まさか俺がこのバカに関節取られらるとは…〟


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


へえ…ティラノの奴、トリケラの関節を取るとはなかなかヤルやん…でもよ場所が悪いで場所が!

そんなコーナーで極めたかて、直ぐにエスケープされるだけやんけ!

ほら言わんこっちゃ無い…ソッコー逃げられてもぅた……え?

オイオイ!どういうつもりやティラノ!?

もうトリケラはロープ掴んどるんやぞ?技ぁ解かんと反則なってまうやんけ!

ほら…レフリーのゴリさんが引き離しに来てもたやん…


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「寺野!エスケープや!離せ!離せって!」


「うっせぇ!こいつの反則にも気付かんかったヘボレフリーはすっこんでろ!なぁ?虎池よ?」


「ング…て、寺野…お、お前…どういうつもりだ…?それに俺の反則…だと?お、俺はこの試合、1度も反則などしていないっ!!」


「あぁ~そうさ!テメェは反則なんざぁしてねぇよ…この試合ではな!でもアモーンとの一戦、忘れたとは言わせねぇぞオラッ!!」


「なっ…!?」


「あの試合、このポンコツレフリーはボディチェックしてて気付かんかったみてぇだけどよ…テメェは開始前にヌンチャクでアモーンの鎖骨折ったよな?んで挙げ句の果て、テメェが折った鎖骨側の腕を脇固めで絞りあげてのギブアップ勝ち…お陰でアモーンは長期欠場や…だから次はテメェの番だっつってんだよオラッ!!」


「ングァァ~~ッッ!」


「寺野!離せっつっとんやっ!反則カウント取るぞっ!!ワ~ン!ツ~!…」


・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


テ、ティラノ…このままやったら反則敗けになってまうぞ?

お、お前まさか…!?


俺の嫌な予感は的中した…

反則カウントが限界のファイブを数えられた時やった…

リングサイド席近くの俺にまで聞こえる鈍い音……そう…関節の外れる音と共にトリケラの耳をつんざく様な悲鳴が響いたんや…






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