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中指 立てたら  作者: 福島崇史
133/248

かましたれ!!

俺が〝ある決意〟を固めてから3日が過ぎた。

で、今日は〝神戸サンボーホール〟での興行。

若武者杯のカードが2試合組まれてて、既に1試合は終わり2試合目を控えてるところや。

カードは因縁のティラノvsトリケラ。

トリケラがアモーンを欠場に追い込んだあの試合で、試合後に2人が揉めたもんやから俄然注目を浴びとるカードやな。

へ?1試合目はどんなカードやったんやって?

………モリスエvsヲータ先輩(パイセン)

結果は御察しやろぅけど、安定の秒殺劇でモリスエの勝ち。

開始2分、モリスエの放ったローリングソバットがレバーを直撃!

その1発で10カウントって内容…

もうね…パイセンも〝白星献上役〟が板について来てるわ。弱者の風格すら感じるもの…


それと今回から1つ変更があってな、セコンドが廃止になったんや。

同じ〝頂き〟を目指す者同士がセコンドに就くんはおかしいってトリケラが進言してな、会社もそれを認めたって形らしいわ。

ま、最近のトリケラはイケ好かんけども、確かにそれは言えてるわな。

セコンドの役割も無くなった上に試合も無い俺は、先輩レスラーの先導役やリングサイド近辺の警備が今日の仕事。

つまり控え室にすら入れて無いから2人の様子はわからへん…

今は赤コーナー側花道のフェンス前で屈んで、選手入場時に押し寄せる客を抑える為に待機中。

お?会場の電気が消えた…いよいよ入場やな。


前回の対戦結果は時間切れの引き分け…

一方的に圧してたのはティラノやったけど、終了間際に起死回生のジャーマンを放ったトリケラも圧巻やった。試合時間があと数秒あれば逆転勝ちもありえた内容やった。

でもやっぱ印象としてはティラノが圧してた場面が強く残っとる。

多分それを考慮してやと思うけど、青コーナーから先に入場するんはトリケラになった。

2人がヒールになってから初の対戦…色んな因縁も相まってこれは見ものやで。


おどろおどろしいホラー系の音楽が流れ、黒のマントに全身を包んだトリケラが現れた。

手には死神を連想させるデカい鎌まで持っとるやんけ…勿論作り物やけども、いやほんま〝中二病〟が過ぎるで…

そんな風貌ながら実力者アモーンを倒した事で人気に火が点いたらしく、花道沿いにはファンが群がっとるわ。

それを掻き分けながらゆっくりと進むトリケラ…

たっぷり時間を使ってようやくリング下に御到着や。

大鎌をリング下のスペースに放り込み、マントを脱ぎ捨てると一気に駆け上がりリングインを果たす。

すると入場時にはフードで見えて無かった顔がライトに照らし出された。

顔一面を赤くペイントし、右頬に黒で〝怨〟左頬に白で〝殺〟の文字…

極めつけは額に〝大往生〟って書いてある…

いや…それ…グレート・ムタと男塾の雷電のパクりですやん…

俺が呆れ果てとる間に再び会場が暗転し、今度は皆が1度は聴いた事のあるハードロックの名曲が流れて来た。


いよいよティラノの入場や。

つまり俺の仕事のお時間ってこっちゃ!

人の波に押されぬ様にフェンスを全身で支えて待機!!

そしてついに奴が姿を見せた。

顔をカモフラにペイントし、同じくカモフラ柄のニッカポッカを履いとる。

そして手には有刺鉄線バットを持っての入場や!

俺は心の中で…

〝かましたれティラノ!!〟

そう念じながらフェンスを持つ手に力を込めた…んやけども…おかしな事にフェンスには一向に圧がかかって()ぇへん…

〝はて?〟と思って花道に目を向けると…

全くと言ってええ程、客が寄って来てへんかった…

モリスエ戦で醜態を晒したとは言えや…いや!いくら何でも人気無さ過ぎやろお前!


奴が前を通り過ぎる時、俺はハッキリと見た…

ヒールのくせに、すんげぇ悲しそうな顔で奴が入場するのを。

だから俺はもう1回、心の中で念じたんや…


〝かましたれティラノ!!〟



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