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中指 立てたら  作者: 福島崇史
131/248

再会

「や、柔…っ!!」


俺は思わず声に出してその名を呼んどったんや。

そう…そこに()ったんは、紛れも無く生涯のライバルにして生涯の親友…あの暮石 柔やったんやから。


「ほら!いつまでアホ面さげて突っ立ってんねや!?とりあえず座らんかいな♪」


「お、おお…」


促されるまま席につく俺を、そそぐちゃんと柔がニヤニヤしながら見てる。


「そそぐちゃんから聞いとったけど、かなりデカァなったなぁ…流石はプロレスラーや」


「あぁ…身長も3cm伸びたし、体重は15kg増えた。まぁこれでもプロレスラーとしては小さい方やけどな」


「ますますゴリラ度が増したのぅ♪ケケケッ!」


「やかましいわっ!」


「いや…でもよ勇、真面目な話…お前はゴリラ界ではイケメンやと思うで。自信持てって!」


「だからやかましいってばよ!何を真顔でシレッと悪口言うとんねんっ!!」


「悪口…?これは心外やな…俺は褒めたつもりやねんけど…?」


「お前が言うとるんは〝ブス界の美女〟と一緒やんけっ!それを褒め言葉やと思っとるんやったら、下の毛ぇ生える位から人生やり直せ!アホッ!!」


学生時代に戻ったかの様な他愛もない軽口のやり取り…そそぐちゃんはキャッキャと笑いながらも、そのやり取りには一切口を挟まへんかった。

久々の再会に気を使ってくれたんやろな…感謝。


「ところで柔よ…今日はなんで…?」


「ん?あぁ…あれから全然会ってなかったやろ?だから今のお前を1回見ときたかったんや。そしたらそこの〝バイカノ〟から今日がオフって聞いたもんでな、示し合わせてここで待ってたって訳。ちょっとしたドッキリてぇの?嬉しいサプライズやったやろ?感動で泣いてもええんやでぇ♪」


「この状況でどないやったら泣けるねんアホ!…てか…その〝バイカノ〟って(なん)やねん?」


「バイオレンスな彼女の略に決まってるでしょうがっ!!」


「いや…北の国からの〝子供がまだ食べてるでしょうがっ!!〟みたいなテンションで言われましても…」


そう言いながらチラリとそそぐちゃんを流し見ると…やはり嫌な予感は的中!

飢えた獣みたく牙を剥いて柔を睨んではる!!


「ド~ド~!落ち着いて!なっ!?ここで暴れたらアカンッ!わかるよなっ!?そうや♪ステーキ食お?なっ!?すいませぇ~ん!」


急いで店員さんを呼んで、すかさずTボーンステーキを注文したわ…

これで一応は収まったかに見えたけども、まだ怒りの念をメラメラと柔へ送ってる…

これはいかん!とばかりに話題を変える俺、エライ!!


「それにしても柔…お前は逆に痩せたか?」


「ん~…まぁこないだの試合、試しに階級下げてやったからな…5kgほど減量したんや。無差別級のプロレスが羨ましいで♪」


「まぁな…でも無理やり増やすんもコレはコレでなかなかにキツいんやで…」


それは嘘や無い。

喉まで食い物が詰まってても、水で流し込んで更に食い物を掻き込む…

胃がデカなった今でこそ慣れたけど、入門したての頃モリスエなんかは泣きながら食ってたもんな…

それでもやっぱ減量の方がキツいわな。

とりあえず俺達は、好きな物を食って好きな物を飲める…

せやけどコイツはそういう物を絶って、決められた期間内に身体を作らなアカンのや…

しかもただ痩せるだけや無い。

パワーや体力は維持しながらの減量やもんな。

その上、体重を落とし切れんかったら試合は流れるわ、罰金は発生するわ、しがらみだらけやし。

そんな事を考えながらボ~ッと柔を見つめていると…


「な、なんやお前!俺を見つめよってからに!ま、まさか…ついに〝そっち〟に目覚めたとか言うんちゃうやろなっ!?プロレスの世界には多いって聞くぞっ!先輩レスラーに新たな扉をノックされたんかいやっ!?」


「お前…せっかくそそぐちゃんを止めたったのに、しまいにゃ俺が暴れっぞ?」


「そそぐちゃんには勝てる気せんけど、お前なら全然OKやで♪ケケケッ!」


「かぁ~ムカつくっ!舐められたもんやで!」


そうこうしている間に3人分のTボーンステーキが運ばれて来て、俺達は和気藹々と喋くりながら楽しい時間を過ごした。

そしてデザートのバニラアイスを食べ始めた時、柔の奴が胸ポケットから取り出した何かをテーブルの上に差し出したんや…

見るとそれは、近々行われる格闘技大会〝バレット〟のチケットが2枚。


「これ、2人で観に来てくれんか?」


今日初めての真剣な表情でそう言った柔。


「珍しいな…てか初めてちゃうか?お前が自分の試合に誘って来るんは…」


「それだけ大事な試合って事でしょ?」


そそぐちゃんのこの一言で、俺の胸の奥が激しく暴れた…


「柔…お前、もしかして…?」


「ああ…タイトル挑戦が決まったんや…」


錯覚なんは解ってる…

せやけど急に柔が遠ざかって行く様に俺には見えたんや…




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