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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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まさかのキラキラネーム

島井と山田の先鋒戦が終わり、次はいよいよ中堅戦…つまり俺の出番って訳や♪

俺は戦闘スタイルになる為、いつもの通りいそいそと服を脱ぎ始めた。

が…


「おい、勇…お前、またレスラースタイルで()るつもりか?」


「アタリ前田のキャプチュードやっ!裸に黒タイツこそが俺の戦闘服やからなっ♪」


「うん…まぁ…お前の自由やねんけども…

アレでもほんまに裸でやる気か?」


そう言って柔が顎でどこかを指し示した。

その顎先の延長線を目で辿ると…

そこは俺達が闘うスペースだった。


「はて…あの場所がなんや?」


「アホゥ!地べたをよぅ見てみぃやっ!!」


「地べた……あっ!!」


「やっと気づいたんかい…」


そうやった…

俺達が闘うその場所…

そこは舟が沢山停泊してる波打ち際。

海との境目にこそ土があるけども、それは雀の涙ほどの量。

あとは剥き出しのコンクリートで、舗装されたアスファルトですらない。

更にはフジツボやら(なん)やらがあちこちにあるし、所々コンクリートが削れて細い鉄の棒まで見えとる。

あんな所を裸で転がったら、(やすり)で身を削るんと一緒やがな…


「どうするよ?どうしてもその〝戦闘服〟とやらで()りたいって言うんやったら、無理には止めんけどな♪」


「ングッ…」


(フンッ!見くびるなよ柔!)

…俺はその言葉を飲み込むと、無言のまま脱ぎかけてた服を元に戻した。

恥ずかしくなんか無い…

恥ずかしくなんか無…

恥ずかしくなん…

めっちゃ恥ずかしいやんけっ!!

クソォ…

この屈辱…

この怒り…

全部アイツにぶつけたるからなっ!!

心で叫びながら俺は、これから勝負するギョロ目の出っ歯野郎を睨みつけた。

すると奴は、挑発するかのようにニヤニヤしながら俺を見返しとるやんけ。


しかし…

コイツもなかなかのブサイクやな…

ギョロ目やから目元は西川きよし師匠みたいやし、出っ歯やから口元は明石家さんま兄さんみたい…

よしっ!コイツの名前は〝明石家キー坊〟で決まりやっ♪

それにしても…相手チームで見れる(つら)しとるんは金木だけかいや。

そんな事を考えながら、俺はコンクリートのリングへと足を進める。


途端に〝明石家キー坊〟が肩を揺らしながら近付いて来よった。

んでもって今そのブサイクな(つら)は、俺の眼前スレスレ数cmの所にある。

ただでさえデカいギョロ目を、更にひん剥いてはるわ…

君…その内に目ん玉が溢れ落ちるで…

そんな俺の心配を他所に、目の前のコイツは臭い息を吐きかけてきよった。


「オゥ!コラッ!!おどれもガタイはええみたいやけどなぁ、ケンカはガタイでやるもんや無いっちゅうのを見せたるさかいのぅ、覚悟したれや茶坊主っ!!」


「弱い犬はキャンキャンとよう吠えるのぅ…」

(く~…この台詞、一回言ってみたかった♪)


「んじゃぁコラァ~!」


もうね…

キスを迫られてるんやないか…と、錯覚する程に近付いたチンピラ風情のブサイクな(つら)

更には臭い息やろ?そりゃ耐えられませんがな。

俺はその不快感から逃れるように数歩下がると


「まぁとりあえずはお互い名乗ろうや?

昔の武将でも一騎討ちの前には名乗りをあげたって言うやんけ」

極力友好的にそう告げた。


「ケッ!おどれの名前なんぞ興味あらへんけどのぅ、自分をブチのめす男の名前くらい知りたいやろから教えといたるわぃっ!

俺様は林田(はやしだ) 心人(はあと)や!

殴られて記憶が飛ぶ前に、きっちり覚えといたれやっ!!」


「えっ!?林家パー子っ!?」


「だ、誰が林家パー子じゃっ!は・や・し・だ・は・あ・と!!ったく…どんな耳しとるんじゃい…」


「いや…俺の耳がどうこうっちゅうより、お前が滑舌悪いんやんけ…歯医者行って、その前歯矯正した方がええぞ?」


「余計なお世話じゃっ!」


「しかし…〝はあと〟って名前も凄ぇな…どんな字書くんや?」


「…心に人って書いて〝はあと〟じゃ…文句あるんかいっ!?」


「いや…文句なんかあらへんけど、まさかのキラキラネームとはなぁ…その(つら)で!ウププ♪」


「おどれも人の事言える(つら)かいやっ!

んな事よりチャッチャと名乗らんかいっ!」


「俺か?俺の名前は…」

そこで一旦区切った俺は左手を右の肘内側に添えると、そのまま右の肘を折り畳むように立てた。

そして右手の中指だけを立てて見せると、奴に向かって声高に名乗ってやった!


「俺の名前は不惑 勇やっ!」


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