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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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ぱぁせんてぇじ

検査の結果、アモーンの鎖骨はポッキリ折れとって全治2週間…

せやけど幸い綺麗に折れてたから、それより早く治るかもしれんらしいわ。

それを聞いたアモーン、毎日牛乳飲んで小魚とホウレン草ばっか食べとる…アホやろ?

で、若武者杯やねんけども…欠場が妥当と思いきや、アモーンの対戦カードを全部後回しにして、他のカードを前倒しで終わらせるって事で話はついたらしい。

せっかくの出世レース、やっぱ欠場は偲びないってんで会社が情けをかけてくれたみたいやな。


ほんでもって今日や!

今日は俺の若武者杯初戦の日!

ええ…前回ご報告させて貰った通り、相手はあのヲタクの星ことヲータ秋葉 先輩(パイセン)や…

はぁ~……………いやっ!こんなんじゃアカンッ!!

相手が誰やろうが関係あらへんっ!

強かろうが弱かろうが全力でやるだけやっ!!

獅子はウサギが相手でもなんちゃらかんちゃらって聞いた事がある様な無い様な気がする様なしない様な…(フワフワしてんなぁオイ…)


で!場所は阪急王子公園駅から直ぐの王子スポーツセンター!

朝からリングの設営やら他の雑用やらを済ませて、ようやく試合に向けて集中出来る状態になったところや。

アモーンは入院中やから俺のセコンドはティラノだけ。

多分ヲータ先輩(パイセン)側はトリケラとモリスエが就くんやろな。

控え室で例の如くティラノがチャチャ入れて来よったわ…


「良かったのぅ勇!初戦は勝ち星確定やんけ♪」


「アホ!勝負なんかやってみな分からへん!舐めてかかって痛い目見るんはゴメンやからな、最初(ハナ)から全力でイカせて貰うでっ!」


「フ~ン…えらい慎重やんけ。あ、そういやぁよお前聞いたか?」


「何を?」


「ヲータさん、またファイプロで自分とお前をエディットして、観戦モードで20戦シミュレーションしたらしいで♪」


「あぁ…あの人唯一の戦略やもんな。て事は今回も…」


「せやっ!モリスエがずっと付き合わされたらしいで!マジ吐きそうっス…って青ざめた顔で嘆いとったわ!ヒャヒャヒャヒャ♪」


「ハハッ!御愁傷様としか言えんのぅ♪で、戦績はどないやったんや?当然俺の全勝やんなぁ?」


ここでティラノの顔が僅かに曇る…


「なんや?違うんか?」


「それがやぁ…お前…5敗もしたらしいで。しかも全部同じ敗け方で…」


「へ?5…5敗っ!?俺がっ?アイツ…いや、ヲータさんにっ!?いやいやいや!無いっ!それは無いわぁ!」


「まぁあくまでゲームでのシミュレーションやからのぅ…でも気持ち悪い話よな?新崎先輩とヲータ先輩の一戦がシミュレーション通りやっただけに…なぁ?」


胸の奥が〝トクン〟と鳴った。


「ち、因みにやで…同じ敗け方って俺、どんな敗け方したんや?」


「なんやぁ?やっぱ気になるんかいやぁ?ヒッヒッヒッ♪」


「そ、そういう訳や無いけど…一応用心するに越した事ぁ無いやろがい…」


「まぁな。でも残念ながらそれは俺にも分からんのや…モリスエの奴が教えてくれんでな」


「なんで?吐きそうやから思い出したくも無いってか?」


これに掌を左右へヒラヒラさせたティラノ…


「ちゃうちゃう!一応はアイツ、ヲータ先輩のセコンドやろ?せやから敵陣営に秘密は漏らせんとさ…ほらモリスエの奴、変に義理深いとこあるやん?」


「まぁ…解らんでも無いな。せやけど総当たりリーグ戦やから、結局は全員が敵やねんけどな」


「確かにな。でもセコンドに就く試合だけは味方って事なんやろ。実際俺達もそんな気分やしな」


「せやな。しかし…ヲータさん、モリスエには俺に勝つ為の秘策ってのを見せてる訳やろ?いつかモリスエとも当たるって事わかってはるんやろか?」


「さあね…目先にあるお前との試合でいっぱいいっぱいで、そこまで頭回ってへんのちゃうか?」


なんかモヤモヤが晴れへん気分やけど、とりあえずあんまり気にせんとこう…


「ま、まぁ…残りの15戦は俺が勝った訳やし?勝率70%やし?気にする迄もあらへんなっ♪」


「…アホか…どんな計算しとるねんっ!勝率80%やろがっ!」


「あ…そか!スマンスマンッ♪」

〝75%なっ!!〟(思わず漏れた作者の声…)


「でもやぁ勇よ…気をつけぇや。たとえ100回やって99回勝てる相手やったとしてもや、残り1回の敗けが初戦に来る事もある…それでも敗けは敗けやから…の」


この不吉なティラノの台詞で、今度は心の奥が〝トクントクンッ〟と2度鳴ったのが自分でもわかったんや…







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