表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中指 立てたら  作者: 福島崇史
125/248

クロマニョン

新人レスラーの総当たりリーグ戦〝若武者杯〟…

その初戦はモリスエの奴がティラノを圧倒して幕を閉じた。

そして試合終了直後、第2戦のカードがリングアナから発表されたんや。

あれから1週間…今日がその当日。

場所は六甲アイランド内にあるイベントスペース

〝ファッションマート〟

ここをプロレスや格闘技が使うんは、パンクラス以来20年ぶり位と違うやろか?

そして肝心のカードは…

トリケラvsアモーン!

アマレス経験者同士の実力派対決やっ!!

こいつはプロレス目線でも格闘技目線でも楽しめそうな好カードやで♪

へ?じゃあお前は誰とやるねん!…てか?

それやねん…なんや不穏な噂を耳にしてもたんや…


ほら、あの1年先輩のヲータ秋葉さん…おるやん?

そうそう、こないだの試合でモリスエのセコンドを名乗りながら、エプロンサイドに陣取ってポテチ食ってたあの人…

更に言うなら、ティラノにドロップキック喰らって、そのポテチを撒き散らしたあの人…な。

実は去年の入門者はヲータ先輩だけやったから、あの人には同期レスラーがおらへん。

だから可哀想やってんで、今回の若武者杯にエントリーするって会社が決めた…そんな噂。

そうなると、必然的に俺の相手はあの人になりますやんっ!

無いとは思う!無いとは思うし無いと信じたい!

まぁ…でも実際そうなったなら、全力で叩き潰すだけやけどな。


あ、話が脱線したな…

とにかく今はトリケラvsアモーン!

俺とティラノがアモーンのセコンド、そしてモリスエ&ヲータ先輩(パイセン)の仲良しコンビがトリケラのセコンドや。

この組み合わせが決まった時、モリスエの奴が流石に愚痴ってたわ♪


「えぇ…自分、またヲータ先輩とっスか?完全に〝2個1〟扱いじゃないっスか…いい迷惑っスよ…」


「まぁそう言うな…お前の気持ちも解るがな…本当に1番迷惑なのは、あの人がセコンドに就く俺なんだからな。下手すれば〝3個1〟に組み込まれかねん俺の心情…わかるよな?」


お、おぉ…トリケラ、心中察するで…

でもな…本当に1番迷惑なんは、あの人と()る事になりそうな俺やって事も忘れんとってくれっ!!

おっと!心の声がダダ漏れしたところで、そろそろ選手入場の時間が近づいとるな。

アモーンの奴…らしくも無く、神妙な(ツラ)しとるやんけ。

また言わんでええのにティラノのアホがチャチャ入れよるわ…


「なんや?お前らしくもあらへんな、緊張しとるんかいや♪」


「……」


「いや…無視かよっ!」


「……」


「あのぅ…もしも~し?」


「……」


「ケッ!そうかよそうかよっ!集中してるところ悪ぅござんしたっ!!」


ここで見かねた俺が大人の対応で一言…


「いや…ティラノよ…これは俺の推測だが…恐らくアモーンにはお前が何を言ってるのか通じて無いのだと思う…」


「はい?どした…急に標準語で訳ワカメな事言い出して…?」


「だ~か~ら~!お前のゴリラ語がアモーンに通じる訳無ぇだろっつってんだよ!!バ~カッ!バ~カッ!ウンコッ!ウンコッ!」


大人の対応で場の空気を和ませる俺…偉かろ?

すると一瞬で米噛みに血管を浮かせたティラノ!

やねんけども…


「ングッ…

(いや…待て待て…ここで怒ったら、ウンコとか言って喜んでるこのアホと同レベルになってまう…こんな時こそ冷静に…冷静に…)

フフン♪勇くん…かねてから君は俺と並んでアモーンの事をもゴリラ呼ばわりしているよね?ならばアモーンにもゴリラ語が通じなくては変では無いかね?」


「(お?こ、こいつ…いや!ここで俺が退く訳にはいかへんっ!)

ん~…残念だったねティラノくん…君とアモーンくんではタイプが違うというか…君は生粋のゴリラなんだが、アモーンくんはクロマニョン的な?軽く先祖返りしてる的な?君よりは人間に近いゆえ、ゴリラ語が通じなかったと僕は認識しているよ♪」


「ほほぅ…ならば生粋のゴリラである俺と会話をしてる君も生粋のゴリラ…そういう事で宜しいかな?」


「あ…」


俺の敗北が確定したタイミングで、ようやくアモーンが口を開く。


「あとでバナナでもリンゴでも好きなだけくれてやるからよ、人の集中を邪魔すんのはええ加減やめてくれや…ったく!いくらゴリラだからって控え室でウンコ投げ合ってんじゃ無ぇよバカッ!」


「あいすいません…」


「面目ない…」


普段なら〝んだとコラァ~ッ〟となりそうな場面やけど、人間に近いクロマニョンに生粋のゴリラ2頭が逆らえる訳も無く、ここは驚くほど穏便におさまった。

そしていよいよ入場の時間となったんや。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ