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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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恐るべしコマンドルチャ

三つ巴で揉めてた俺達やけど、最初に我に返ったのは俺やった。流石は俺。


「こんなんやっとる場合かっ!リングアウトなってまうど!早よリングに戻らんかいっ!!」


「そうじゃボケッ!()る相手を間違えてんじゃねぇよバ~カッ!!」


アモーンも俺に便乗し、ティラノが舌打ちしながらリングに戻る…すんげぇ恨めしそうな目で俺達を睨みながら…

それを見送りながらアモーンが訊いて来た。


「なぁ勇よ…そう言えばティラノの技、Z.O.T(ずっと俺のターン)やけどよ…」


「ん?」


「全然〝ずっと〟じゃ無かったよな…だからS.O.O.T(直ぐに終わる俺のターン)に変えた方が良くね?」


「ほんま…どっからどこまでが奴のターンやったんかも判らんしのぅ…とりあえず俺はZ.O.Tを破った時、T.O.T.O(とっくにお前のターンは終わっとる)って叫んだろ思っとる」


「T.O.T.O…なんやトイレみたいやのぅ」


「うむ、クソ野郎の奴にはお似合いってもんや」


そんな事を言ってる間にリング上では試合が再開されとった。

驚いた事に、ティラノの奴が自らロープに走りよったんや。

そしてそのままモリスエの股下へとスライディング!

と思ったけど…

その体勢はスライディングとは程遠く、ほぼ仰向けの状態でモリスエの股下に滑り込んどった…


〝アホッ…そんなん上から乗られてマウント取られるだけやんけ…〟


そう声を出そうとした瞬間、奴は滑り込みながら腹筋の要領で上半身だけを起こしたんや!

ティラノの頭部がモリスエの金的を直撃っ!

股間を押さえながらモリスエがその場に踞った!!

悠々と立ち上がりモリスエを見下ろすティラノ…


「どやっ!?これが地獄の鐘突き…名付けて〝ヘルズ除夜の鐘〟じゃいっ!!」


へ、ヘルズ除夜の鐘て…

ク、クソだせぇなぁオイ…

お前のセンス、どないなっとんねん…

何はともあれティラノの攻撃は更に続いた。

踞ったモリスエの頭部をヘッドロックに抱え込み、とうとう奴はタブーに手を出しよった!

そう、モリスエのマスクに手をかけたんやっ!

レフリーが慌てて止めに入るが、ティラノがそれを突き飛ばすっ!

そしてレフリーが反則のカウントを数え始めた直後、ついにティラノの手には剥がされたマスクが握られとったんや。

その瞬間、会場がどよめきに包まれた。

せやけどそれは、マスクが剥がされた事に対する物や無いってのが俺達にも直ぐ解った。


〝!?〟


なんとモリスエの顔はまだマスクに覆われとるやないかっ!

そう…ティラノがヒールに転向すると知っとったモリスエは、マスク剥ぎを警戒してマスクの〝重ね着〟をしとったんや!!

マスクが剥がされたと同時にヘッドロックからもスルリと脱け出したモリスエ、そのままロープへ走り反動をつけてティラノへっ!

するといつの間に仕込んだのか、又もやティラノが毒霧でこれを迎撃しよった!!

しかも今度は〝ドバドバ〟垂らさずに、綺麗な毒霧で…な。


ところがこれを読んどったモリスエが、身を屈めて回避!

そのせいで毒霧はレフリーに誤爆し、レフリーが顔を押さえてその場でもんどり打つ!

しかしティラノが、屈んだモリスエの首を正面から脇に抱え、股に手を入れながら丸め込んだっ!

スモールパッケージホールドやっ!!

しかしこれで確信したわ…

やっぱティラノはどうしようも無い程のアホやって事を…

だってせやろ?

スモールパッケージホールドは3カウントを取る為の奇襲技やで?

それやのに肝心のカウントするレフリーは、テメェの毒霧で倒れとるっちゅうねん!


当然3カウントが取られる訳も無く、モリスエが抑え込みから脱出…

ここから怒涛のラッシュが始まる事に…

先ずは引き摺り起こしたティラノに、その場跳びドロップキック!

惚れ惚れする程に打点が高いっ!!

そしてティラノが倒れると、すかさずコーナーポストに駆け上がる。

そしてティラノがフラフラと立ち上がるのを待って…


〝ミサイルキック!?〟


誰もがそう思ったけど、奴の動きはその遥か斜め上を行っとった。

奴はコーナーから飛びながら、空中で蹴りを出したんや!

しかも1発目をわざと空振りさせて、身体を捻りながら2発目の飛び後ろ廻し蹴りをヒットさせよった!

コーナーポストからの旋風脚…こんなん初めて見たわ…


そしてこれがティラノの胸元に直撃っ!

ティラノが胸を押さえながらのたうち回るっ!!

でもまだまだモリスエの攻めは止まらへん…

再びティラノを引き摺り起こすと、左手首を掴んだ状態で身体ごと左足を跳ね上げた!


〝延髄斬りかっ!?〟


ところが…又もや奴の動きは俺達の想像を上回ったんや…

確かに奴の蹴り足はティラノの延髄にヒットした…ここまでなら普通の延髄斬りや。

せやけどモリスエは蹴りがヒットした流れでティラノの腕に絡まり、倒れ込みながらそのまま腕十字へと繋いだんや!

〝延髄斬り〟と〝飛び付き腕十字〟の複合技…

こんなんもマンガでしか見た事あらへん…

いや、ほんま…コマンドルチャ恐るべしやで…

ここで毒霧のダメージから回復したレフリーが復帰!

そのままティラノに何度も問い掛ける!!


「ギバァ~ップッ!?寺野…ギバァ~ップッ!?」


「ノ…NO~ッ!!」


「ギバァ~ップッ!?」


「NO~~ッッ!!」


これに痺れを切らしたモリスエ、ティラノの手首を捻りながら更に深く極めるっ!!

するとレフリーが意思確認をするより早く、ティラノの手がモリスエの身体を5度もタップ…

それを見たレフリーが慌てて2人の身体を引き剥がした。

打ち鳴らされるゴングと沸き上がる歓声の中、肘を押さえたティラノが転がり回る…

その横ではレフリーに掴まれた手を、誇らしく高々と掲げるモリスエ。

勝者と敗者…

残酷なコントラスト…

するとそれを見ながらアモーンの奴が言いよった。


「ようよう、最後に見せたモリスエのラッシュ…あれこそが本当のZ.O.T(ずっと俺のターン)じゃね?」


いや…死人に鞭打つ様な事言うなってば…





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