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中指 立てたら  作者: 福島崇史
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ソルジャー

いよいよ俺達の出世レース〝若武者杯〟が始まるシリーズ〝グラディエーター〟の初日を迎えた。

初日の場所は西代体育館。

山陽西代駅の直ぐ目の前にあるバカでっかい体育館や。

前にも言うたけど、若武者杯はティラノvsモリスエってカードでスタートを切る…もちろん第1試合や。

ティラノもモリスエも、いつもの通りリング設営やら物販の手伝いやらをこなし、ようやく試合に集中出来る時間が持てたのは開場時間になった頃やった。


俺とアモーンがティラノのセコンドに…

トリケラとヲータ・秋葉先輩がモリスエのセコンドに就く事になった。

え?ヲータ・秋葉って誰やねん?って?

ほら!前に俺達が入門して間が無い頃に1回話したやんっ!え…?覚えて無い…?あぁ…そう…


えっと…ガチのヲタクで他の先輩方とは殆ど交流しない…そのくせ何故かモリスエにだけは心開いてて本名は太田 彰。

ヲタの支持を得てメインイベントに抜擢されるも、格闘プロレスの雄 新崎先輩にケチョンケチョンにされたあの人やがな!思い出した?

2人ずつのセコンドにするのに、同期は5人しかおらへんから人数が合わへんやん?

で…


「モリスエには俺が就く!」


と、秋葉先輩が自ら名乗りを上げた訳。

え?そん時のモリスエの反応?

うん、想像通り苦虫を噛んだみたいになってたわ…ハハハ

まぁそれはさて置き…や。

試合開始まで15分を切った…

ティラノの奴は顔をカモフラージュ柄にペイントして、手には有刺鉄線を巻いたバットを持っとる。

コスチュームも伝統のショートタイツや無くて、こちらも迷彩柄のニッカポッカ…

どうやらこの試合を、完全なヒールとしてのデビュー戦にするつもりらしい。

で、言い出したのが…


「俺ぁキン肉マンのファンでよ…中でもキン肉マンソルジャーが大好きなんや!だから近々リングネームもソルジャー寺野にしたろ思っとんねん♪」


これにアモーンが答える…


「ん、そのリングネームはクソだせぇからお前にお似合いとしてもや…そもそもキン肉マンソルジャーはヒールじゃねぇしっ!むしろメチャクチャええ奴やしっ!!」


あ…アモーン、お前もキン肉マンソルジャーのファンなのね…


「うっせえよっ!俺ぁ何もキン肉マンソルジャーその物になる言うてるんや無いわいっ!外見だけソルジャー(ふう)のヒールになる言うとんねんっ!!」


(ふう)って何やねん!(ふう)って!!ソルジャーを中華料理みたいに言いやがって!詫びろ!今すぐ詫びろっ!!全国のキン肉マン読者に!世界のソルジャーファンに!そして漫画界の至宝、ゆでたまご嶋田先生にぃ~っ!!」


いや…アモーン…暑苦しいよお前…

てか…あ~あ、また2人の取っ組み合いが始まったわ…ほんまにコイツらは仲がええんか悪いんか解らんわ…


「おぉ~い、お前らええ加減にしとけよ~ぃ。

試合前の選手にケンカ吹っ掛けるアモーンもアモーンやけど、試合前やのにケンカ買うお前もどうかしとるぞティラノ…試合前に燃え尽きたらどないすんね~ん?」


これ以上険悪にならんよう、あくまで軽~く軽~く釘を刺す。

そのお陰で舌を打ちながらも2人が距離を置く。


「アモーンよ…一応言うとくけど、俺達ゃ今からコイツのセコンド務めるんやからな!そこに私情は挟むなやっ!?」


「わあっとるわいっ!俺かてプロじゃ!仕事はきちんとこなすわいっ!!」


「ケッ!お前なんざぁおらんでも、勇1人おったら十分じゃっ!お前は物販でも行ってファンに愛想でも振り撒いとけやっ!!まぁお前に愛想振り撒かれて喜ぶファンがおるかは疑問やけどの♪ケケケッ」


まぁたティラノのアホが要らん事言いよった…

ほら見てみぃ!ソッコーでアモーンが突っかかりに行くやんけっ!!

俺はすかさず2人の間に入り…


「ええ加減にせえって……言うとるやろがいっ!!」


アモーンには頭突きを、ティラノには気合い入れの意味も込めてビンタを喰らわせたった!

デコを抑えて踞るアモーンと、呆気に取られて子供みたいな表情になっとるティラノ。


「どやっ!?目ぇ覚めたかいっ!?」


2人が無言のまま数回頷く。


「よっしゃ!なら握手せぇっ!!」


意外にも素直に従う2人…なんや俺、猛獣使いになった気分やわ♪

俺がそんな優越感に浸ったその時やった…

はるか向こうからリングアナの声が届いたんは。


「これより第1試合を行いますっ!!」


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