突然の不幸
翌日、バイトに向かう。コンビニの廃棄予定の弁当を貰って食事を済ませる。今日は太田もシフトが入っているはずだがまだ来ない。店長に聞いてみても連絡がつかないの一点張り。寝坊しているのだろうか。
まぁそんな事を考えながらバイトが始まる。しかし太田は来ない。結局、無断欠勤となってしまった。
「太田君の様子見てきてくれるかい?」
店長が言う。なんだかんだ心配なのだろう。
「あ、はい。分かりました」
帰りの自転車で太田のアパートへ向かう。そして部屋の呼び鈴を鳴らすが反応がない。どこかに行ってるのだろうか。仕方ない。今日は帰ろう。明日には何食わぬ顔をしてバイトに来るだろう。
そして帰宅したらまた歌詞を作る作業に入る。
あの頃の思い出。臆病だった自分。ゲームにかけた情熱。だんだん思い出してきた。歌詞の進みが早くなってきた。小学生の頃とかゲーム漬けだったなぁとしみじみ思い出す。とりあえず仮の完成を迎えた。そして太田の事を心配しつつ横になる。添削はまた明日だ。
翌日、歌詞の添削をしながらタバコを吸う。太田からの連絡はまだない。なにやら昨日の胸騒ぎが気になってバイトに行く前に太田の部屋に寄ってから向かう。やはり呼び鈴を鳴らしても反応がない。どうなっているのだろう。
仕方がないのでバイトへ向かう。店長が居たので太田について聞いてみる。
「店長、太田から何か連絡は入りましたか?」
「ああ栄太君か。太田君の親御さんから電話があってなんでも車と事故って入院しているらしい。頭を強打して危ない状態らしい」
「そんな! どこの病院に入院してるんです!?」
「中央病院らしいよ」
「バイト早上がりしていいですか!?」
「太田君とは仲がよかったからねぇ。仕方ないからいいよ」
「ありがとうございます!」
一昨日の夕方聞いたサイレンはもしかしたら太田を搬送した救急車だったのかもしれない。胸騒ぎは虫の知らせだったわけだ。せっかく早上がりが許されたんだから見舞いに行かないと。
バイトも上の空で過ぎていった。そして上がってから自転車で中央病院に向かう。どんよりとした雲が浮いている中、面会時間ギリギリだったが間に合った。受付から入院病棟を聞き太田の部屋を探す。
太田の入院している部屋を見つけた。ノックをする。太田の母親らしき人の声で返事があった。
「どなたでしょうか? どうぞ」
ガチャリとドアを開ける。
「こんばんは。太田君のご家族の方ですよね? 僕は太田君の友人で栄太といいます。面会時間ギリギリですがお見舞いに来ました」
「ああ、この子の友達でしたか。わざわざありがとうございます。まだ意識が戻らないのですがお医者様が言うには下手をしたらこのまま目覚めないかもしれないと……」
「そんな! すいません、事故のあった日に太田君を呼んで話していたのは僕なんです。もしかしたら僕のせいでこんな事に……」
「そうだったんですか……。自分を責めないでください。ただこの子の回復を祈っていてください。私はまだここに付き添うので貴方はもう帰った方がいいでしょう」
「分かりました……。意識が戻るのを願ってます」
そう言って俺は太田の病室を後にした。
目に浮かんだ涙を頑張ってこらえながら家路につく。
その日は太田の事故がショックで何も手に着かなかった……。傷心のまま横になる。そして自分のせいで太田が事故になったと思い込んで憂鬱になってしまった。空はついに泣き出してしまった。
泣きたいのは俺の方だ、と独り愚痴る。後悔に後悔を重ね、事故に遭うのは自分の方がよかったとまで考えた。
そのまま眠れない夜を過ごしため息が止まらない状態だったが人間とは現金なものでいつの間にか寝ていたという自分に起きてから自己嫌悪だった。