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FreeMusic  作者: 坂下真言
5/15

8bit Memory

 『Block』登録から数日が過ぎた。

 俺はバイトをしつつ日夜曲作りに夢中になっている。すっかりハマってしまった。毎日が寝不足になってしまった。太田は呆れている。太田に作った曲を聴かせてみたらセンスがあると言われた。

「栄太って作詞より作曲の方が向いてるのかもしれないなー」

「そうなのかなぁ。自覚はないが楽しいぞ」

「楽しいって思える事が向いてるって事なんだと思うぞ」

 ふむ、と頷いて考える。

「じゃあ次の曲は俺が作ってみる?」

「お、そうだな。それも面白いかもしれないな」

 太田も賛成してくれた。どんな曲にしようかなーと今から思いを巡らせる。

「じゃあ頑張って考えてみるわ。ボーカルはまたツインでお願いな」

「おう? それは構わないけどいいのか?」

「ん? どういう事?」

「せっかく自分で曲も作るんだから自分で歌いたくないか?」

「あー、それは確かにあるけどまだピンで歌える自信がなくてさ」

 俺は一瞬地雷を踏んだかなと思いつつポロっと本音が出てしまった。

「ふむ。まぁそんなものかなぁ」

 なんとか納得してくれたようだ。よかったよかった。実際自信がないのも事実ではある。歌のトレーニングもしなくては……。よく言うボイトレというのでいいのだろうか?太田にも聞いてみる。

「ボイトレなぁ……。俺もよく分からんけどカラオケで上手くなればいいと思うぞ?」

「そんなもんか?」

「まぁ講師にも当たり外れがあるだろうしな」

「それもそうか……」

 仕方なく諦める。カラオケで練習しよう。まぁまだ曲も出来てないわけだが。

 帰宅して早速パソコンを立ち上げて曲を作り始める。こんなに夢中になったのは子供の頃やっていたゲーム以来だなぁと思う。

 その時、閃いた。8bitのピコピコ音で曲を作るのはどうだろう。思いついたら即実行。音源ソースから探してきて打ち込む。徐々に曲が出来上がっていく。やはり夢中になっていく。連休という事もあって延々とパソコンとにらめっこして曲を作っていった。パズルのピースが1つ埋まる様に徐々に組み上がっていく全体像。

 そして疲れ果てて眠る。意識は過去の回想をする渦が如くグルグルと回り意識を飲み込んでいった。

 連休明け。昼過ぎに起きる。我ながら自堕落な起床時間だと思う。まぁそれも仕方ない。昨日はずっとパソコンとにらめっこだったからだ。流石に疲れた。しかし8割完成といったところか。今日もタバコを吸いつつパソコンのにらめっこしている。

 食事も軽く済ませ太田に電話してみる。

「もしもし太田? 曲だけど8割くらい出来たぞ」

「マジかよ! 早すぎないか? それで、どんな曲にしたんだよ」

「昔のゲーム機のピコピコ8bit風味で作ってみた」

「チップチューンか。いいな、俺そういうの嫌いじゃないぜ。ただ歌詞を入れるのが難しそうだな」

「まぁそれは確かに。でもなんとかするから大丈夫」

「栄太がそう言うなら信じよう。よろしく頼む」

「おう。それで『Block』はどうなった?」

「あ、やっぱ気になる?」

「そりゃそうだろー!」

「といってもまだ数日しか経ってないんだぜ? 後で2人で一緒に見ようぜ」

「それもそうだな。楽しみだなぁ」

「あんまり期待しすぎるなよ? まだ俺たちは新入りなんだから」

 そう言われても期待してしまうのは人間の性なのだろう。ドキドキしている。とりあえず今は曲作りに集中しよう。残りの2割、完成させないと。

 それから適当に休憩を入れつつポチポチしていった。

「おっしゃー! 完成したー!」

 思わず叫んでしまったが、ついに完成にこぎ着けた。後は添削だ。いらない音を削っていって歌詞も考える。歌詞のコンセプトは昔のゲームに夢中になった思い出。曲名は『8bit Memory』かな。

 しかし今日は曲作りで疲れた。歌詞は明日以降つけていこう。それに『Block』の評判も気になるので太田の家に行って打ち合わせをしないと。

 次のバイトの日に太田に作った曲をCD-Rで渡す。

「本当に作るの早いなー」

「おう、かなり夢中になって作ってた。おかげで寝不足だけどな」

「やっぱりそうなるよなぁ」

 太田は苦笑いを浮かべながら頷いている。どうやら『Block』の時もそうだったようだ。

「まぁ帰ったら早速聴いてみるわ」

「なんか気付いた事があったらアドバイス頼むわ。夢中になって作ってたからあんまり添削に自信がないからさ」

「あいよ。まぁ俺も専門家じゃないから完璧なアドバイスってのは無理だけどな」

 太田は言う。そして今度2人が揃って休みの日を確認してクラクラする頭でバイトをする。ミスも多少あったがまぁ店長に怒られる事もなくなんとかなった。

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