Block
数日後。
バイトで太田と同じ日のシフトの時。
「一応完成したぞー! おかげで寝不足だけどな」
「マジでか! お疲れさん。早く聴かせてくれよな」
「そう言うと思ってCDに焼いてきた。ほらよ」
太田が俺にCD-Rを渡す。この中に俺たちの青春の1ページが入ってるんだなぁとしみじみ感じる。太田の長髪が風になびく。
「それじゃ帰ったら早速聴いてみるわ」
「おう。なんか気付いた事があったら遠慮せずに言ってくれな」
「あいよー」
浮き足立つ感覚でバイトも頭から抜けかかっていた。早く聴きたい。それだけが頭の中を支配していた。
帰宅後早速聴いてみる。ディスクをドライブに入れヘッドフォンをつけて準備完了。カッコイイ! エフェクトのせいかもしれないが自分でも満足出来るレベルのものが仕上がっていた。
流石太田だと感心している。俺もこんな音楽が作れたらなぁ、と思う。
太田に電話をかける。
「あ、もしもし? 太田?」
「おう、どうした?」
「いやまぁ、あまりにも出来がよくてさ。感動しちゃったよ」
「お、おう。なんなら音楽投稿サイトにでも投稿してみるか?」
「そんなのがあるのか!」
「あるぜ。結構昔からな」
「じゃあ早速投稿していいか?」
「待て待て! ユニット名も曲のタイトルも決めてないだろ」
「あ、そうかぁ。考えないとな」
「栄太はどう思うか分からんけどユニット名はちょっと考えたんだ。俺らフリーターだし自由にやらせてもらえるから『FreeMusic』ってのはどうだ?」
「なるほど。現状と掛けてるわけだな。いいと思う。じゃあ次は曲名だな。これは俺が考えてもいいか?」
「いいぞ。センスある感じで頼む」
「センスかぁ。今回は俺のメッセージをひたすら詰め込んだ曲だから塊って意味の『Block』でどうだ?」
「ブロックか。いいと思う。それで行こう」
「じゃあ登録してみていいか?」
「っていうかお前やり方分かってるん?」
「分からん!」
俺は自信満々に答える。
「ダメじゃん。俺がやっとくよ」
「頼む。あともうすぐ給料入るから曲を作るのに必要なものを教えてくれ」
「了解した」
太田から必要な機材とソフト一式のリストをメールで貰う。
「最初はお試し版みたいのがあるからそれで試してみるといいぞ」
「トライアルか。分かった」
家に帰って早速ソフトをダウンロードしてみる。使い方を携帯で太田に聞きながらいろいろいじってみる。機材は通販で注文した。
「あ、そういえば『Block』登録してみたぞ」
太田が言う。これで世界中に俺たちの音楽が発表されたわけだ。なかなか大きな一歩だと思う。
心配していた太田との仲違いもなさそうだしご機嫌だった。