メッセージ
「じゃあ音作ってみるからそれに合わせた歌詞をつけてくれよ。ちなみに栄太はどんなジャンルの曲がいい?」
「そうだなぁ。音楽の事はさっぱりだから太田に任せる」
「オッケー。実は歌詞のついてない曲が何曲かあるんだよな。その中からやりやすいのを選んでくれよ」
「準備がいいなぁ」
俺は感心する。というかコイツは暇だったら曲作ってるのかと思うと、何もしてない俺に軽く自己嫌悪する。
まぁ、そんな事を考えていても仕方ない。俺も動かなくては……。
「歌詞作るコツってあるのか?」
「俺は音専門だからそっち方向は分からんけど、ふと思いついたフレーズを並べていけばそれっぽくなってくんじゃないか?」
なるほど。頭に浮かんだフレーズか。ある意味広告代理店とかのキャッチフレーズを考えるのに似てると思った。
「わかった。じゃあなるべく早めに考えてみる。あと太田もなんかフレーズ思い浮かんだら教えてくれよな」
「あいよ。それはいいけどさ、先に曲を選んでくれよ」
「ああ、すまん。プレイヤーに落として聴いてみるからそっちよろしく」
「パソコンあるならそっちに送るけど?」
「あー……。そっちの方が早いな。俺のアドレス教えておく」
俺は太田にパソコンのアドレスを教えた。
「なぁ。関係ないけど学生って彼氏彼女出来るとそいつの名前入れてラブとかって付けたアドレスにするよなぁ」
「あー。あるある。あと自分では格好いいと思ってやってるんだろうけどダークなんとかって入れてる奴も多いよなぁ」
俺と太田はそんな事を喋りながら今日の業務を終わらせて家路についた。
「じゃあ帰ったらすぐ送るわ。お疲れさん」
「了解。待ってるわ。太田もお疲れ」
帰宅後晩飯を食べたりしているといつの間にかパソコンに太田から曲の添付されたメールが来ていた。
「仕事が早いなぁ」
そして曲を聴いてみる。ロックからポップ、バラードの3曲が添付されていた。
普段聴くジャンルがロックなせいかロックの歌詞が作りやすいと感じた。
しかし曲のフレーズという制約がある状態でジャストフィットする歌詞というのもなかなか難しいものだ。プロのミュージシャンの偉大さを噛みしめる。よく早いペースで作れるなぁと。まぁ作詞家という仕事もあるわけだからアマチュアが追いつくはずもないんだが。
俺は音楽に主張したい事、メッセージを詰め込んでみる事にした。社会に対しての不満、仲間の大切さ、夢への希望。そういう物を詰め込んで添削してみる。なかなか削る部分が少ない。それだけ詰め込んだせいか。明日、太田にも相談してみよう。
次々とメッセージが浮かんできては消えていく。意識も徐々に薄らいでいく。そして俺は眠りに落ちた。