クリスマスイブ
今日はクリスマスイブだ。彼女無しの俺にはちょっと人恋しい日だ。だがバイトが容赦なく入っている。サンタのコスプレをしてレジ打ちをする。
小さい頃はサンタが本当にいると信じてたなぁなんて遠い日の回想をしてみる。
バイトも終わり夕方に太田の見舞いに行く。病室のドアを開ける。
「メリークリスマス!」
悲しいから自力でテンションを上げていく。
「おう、メリクリ!」
太田も合わせてくれた。太田はあれからリハビリに毎日励んでいる。プロテインも摂取して少し筋力も回復したかな?
「リハビリはどうだ?」
「まぁまぁだな。プロテイン飲んで多少筋肉もついたぞ。あとボールのおかげで握力も戻ってきた」
「おーそりゃよかった。差し入れした甲斐があったってもんだ。」
「ああ、そういえば髪も伸びてきたなぁ。色も黒に戻っちまったしまたブリーチせんとなぁ」
「ああ、太田は髪が長いもんな。入院してる間に髪も伸びて脱色したところが末端になってきたか。まぁ仕方ないな。
あとまだ風呂も入れないだろうから脱色は退院してからだな」
「そうなんだよなぁ。早く退院したいぜ」
「まぁある程度回復したら退院できるだろうから、それまで辛抱だな」
「最近は歩く練習もしてるんだ。足の筋肉つけないと何も出来ないからな」
「お、もう歩く練習か。メシはちゃんと食べてるか?」
「おう、まだ箸が持てないからスプーンとフォークだけどな。ボールのおかげでそのくらいは握れるようになったよ。」
「ためになってよかったよかった。でも病院のメシってマズいんだろ?」
「んーここのはそうでもないぞ? 割と美味しい」
「ほう。まぁなんにしても美味いのはいい事だ」
「そういえば栄太は彼女出来たのか?」
「出来てたら今頃ここにいないって……。はぁ……」
「お、おう、すまん……。5ヶ月も空白の期間があったからな」
「まぁな。本当にずっとバイトと曲作りと見舞いくらいしかしてないんだよ」
「はっはっは……。いやぁ俺は果報者だなぁ。男だけど見舞いに来てくれる奴がいるなんて」
「男で悪かったな」
俺は太田の頭を軽く叩く。こいつの髪は本当に長いなぁなんて感じつつ雑談で時間を潰していく。
そうして面会時間も終わりになり俺は自転車で部屋に戻る。今日のタバコと久々に飲む酒を買ってサイト『Block』のクリスマスバージョンをアップロードする。
それと太田の意識が回復した事も載せた。
世間では恋人たちがイチャイチャしてるもんだから目の毒だと思い引きこもる。
何が悲しくてイチャイチャしてるのを見なければいけないのか。
「……悲しいな」
ちょっと嘆く。正直に言えば俺だって彼女は欲しいが、悲しいかな出会いすらないという。ひょっとしたら太田の方が看護師の方と出会う機会がある分、彼女出来るんじゃないかと邪推してみる。
まぁ女性の看護師の方限定だが。流石にそれは無いと思いたい。
夜になり『性の6時間』が始まる。誰がそんな事言い出したのか分からないけど上手い例えをするものだ。まぁこの時間が終われば次は正月だ。
実家に帰る予定はない。当然の如くバイトのシフトが入っているのだ。店長はいい人だけど人使いが荒い……のか?
まぁそんな事を考えながら新曲を考える。太田の回復祝いも兼ねてとびきりハッピーな感じの曲にしたいものだ。
今度からまた太田の意見も聞けるという嬉しさがある。これで客観的な意見が聞けてよりよい曲を提供出来るってもんだ。
タイトルを考える。頭をひねってもピンと来るものがない。というか候補が既にあるからそれを超えるものが出てこないだけなんだが。
シンプルに『HappyBirthday』にしようと思った。もちろん太田の誕生日に意識が回復したというロマンティックな事もある。それだけ周囲にとっては最高のプレゼントだった。今思い返しても目頭が熱くなる。
俺は酒豪というほどではないが両親が酒飲みで遺伝である程度強いとは思っている。買ってきたのはウイスキーだ。
ロックでちびちびやりながら曲を組む。とりあえず骨組みをしっかり作る事。小説でいうプロットみたいなものだ。だからこそ重要である。なるべく丁寧に作る。
酔いが多少回ってきたが頭は冷静だと自分なりに分析してみる。こういう少し浮かれてるくらいの状態は久々だ。
ノリノリで曲が組める。今回の曲は久々に熱を入れて作ろう。ストッパー役がいるのも大きいところだ。
徐々にふわふわしていく感覚を味わいながら組み上げていく。そうして眠くなってきたら横になる。意識を手放して夢の世界へ旅立つ。




