表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FreeMusic  作者: 坂下真言
11/15

Birthday

 今日は12月15日、太田の誕生日だ。ギターを担いで見舞いに行く。とうの昔に見慣れた病室のドアを開ける。病室の窓から見える景色もイルミネーションの光が入っていた。

「太田、誕生日おめでとうな。今から弾き語りするから聴いてくれ」

 俺は『Block』のアレンジバージョンを弾き語りした。そして自分の気持ちを曲に乗せて伝えた。思わず目頭が熱くなる。

「――……」

 今、太田の口がかすかに動いたような?よーく見てみると『Block』の曲に合わせてかすかにだが口が動いている!

「太田! 俺が分かるか!?」

 太田はゆっくりと目を開ける。怠そうだがしっかりとした意思をもって俺を見つめる。口から吐息が少し流れる。まだ喋れないのだろう。俺は急いでナースコールを押した。

 駆けつけた看護師の方に太田の意識が戻った事を伝える。看護師の方もその確認を取る。

「太田さんの意識が戻った事をご両親に連絡してきます!」

 看護師の方は急いで病室を出て行く。俺はもう既に泣いていた。太田にとっては目が覚めただけの誕生日だったかもしれないけれど、周囲にとってはこれほどいい事のない誕生日になった。24歳おめでとう太田。俺は太田の手を握り涙を流していた。

 翌日、ご両親と会い太田のこれからについて聞いた。しばらくは病院でリハビリらしい。まぁ仕方ない事だけど無理はしないで欲しいと思う。流石に5ヶ月弱も意識がなかった体は筋肉も落ちてしまっているだろう。

 意思疎通はかすかに頷いたり横に振ったりの2択なら出来るらしい。声はとても小さいがかすれた声が出るらしい。もっともそれは口に耳を近づけないと聞き取れないらしいし、長文は疲れて喋れないらしい。

 表情はぎこちないがある程度動かせるらしく俺が見舞いに行くと笑顔を見せてくれた。

 俺は太田に事故に遭ってからの出来事をいろいろ話した。『FreeMusic』のサイトを立ち上げた事に驚いていたみたいだった。あとアップロードした曲数にも。そりゃ自分が意識のなかった間に10曲以上追加されたら驚くだろうなぁ。あと、俺のギターにも驚いていた。退院したらまた2人で馬鹿やって曲を作ろうと約束した。それまではゆっくりリハビリに専念して欲しいとも。

 目覚めてから1週間、太田は毎日リハビリを頑張っている。もうすぐクリスマスだ。もちろんイブにも見舞いに行く予定でいる。まぁ彼女なんていないし何よりも太田が回復してくれた事が嬉しいからだ。太田にも彼女はいない。だから見舞いに来るのは太田のご両親か俺かのどちらかだろう。まぁ太田はイケメンだから復活したら彼女も出来るかもしれないなぁ。一方俺は微妙な顔だしなぁ。生まれつきのものだから仕方ない。負け惜しみと分かっていても今は音楽に集中したいものだ。

 太田はある程度喋れるまで回復していた。長い時間は無理だが休み休みならなんとか喋れるらしい。これで意思疎通が楽になった。

「しかし俺が5ヶ月弱も寝てたなんてなぁ……。ゾッとするぜ」

 太田がしみじみと言う。

「こっちはすごいショックだったんだぞ。医者からはもう意識が戻らないかもしれないなんて言われてさ」

「まぁいいじゃん。こうやって意識戻ったんだし」

「まぁそうだけどさ……」

「それにしても栄太も頑張ったよなぁ。まさかサイト立ち上げて配布してるとは夢の中でも思わなかったぞ」

「まぁそれだけ曲作りにハマってたんだよ。結局ボーカル曲は2曲だけだし」

「でもいいじゃないか。いろんな人に使って貰ってるんだろ?」

「まぁな。初期から俺らの事知ってる人はお前を心配するコメントついてく人もいたんだぞ? それだけお前の存在は大きかったんだよ」

「感謝感謝で恐悦至極だな」

「まったくだよ」

「まぁリハビリして早いとこ退院したいな」

「そりゃそうだ。お前もうガリガリだからな」

 太田は自分の手足を見て苦笑いを浮かべる。

「流石にまだ歩いたり何かを握ったりは出来ないからなぁ」

「今度差し入れ持ってくるよ。筋肉とか体重とか戻すのにプロテインでもな」

 俺は笑って言う。

「お、いいなそれは。あと握力鍛えるにぎにぎするボールとかもあると嬉しい」

「分かったよ。買ってくるさ」

 太田の注文に苦笑する。まぁ早く回復して欲しいのは俺も同じだから別に嫌な気分はしない。

 翌日はバイトだったのでバイト前に差し入れのプロテインを薬局で済ませる。

 バイト先の店長にも忘れずに太田の意識が回復した事を伝える。

「いやー本当によかったなぁ。栄太君も嬉しいだろう?」

「そうですね。正直すごく嬉しいです」

 店長もどこかで気にとめておいてくれたらしい。ありがたい。店長も優しい人だからなぁ。

 バイトも太田の意識が戻った事で心配事が減ったせいかスムーズに終わらせた。後は握力を鍛えるためのボールだがこれはゴムボールでいいだろう。部屋にちょうどあった。

 太田の見舞いが楽しみになってる事を考えながら横になる。やはり相方は大事だ。俺の意識は水に入れた砂糖のように溶けていった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ