表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

登場人物紹介

初めての投稿です。

 私には、前世の記憶がある。

 前世で私は、20世紀の終わりの日本で生きていた。

 中流家庭に生まれ、平凡な生活を送り、平均寿命の半分にも満たない年齢で早死にしてしまったが、それでも幸せな人生を送った。

 前世からいうと、現世はおとぎの国のような世界だ。

 豊かで平和な、王様の治める国で私は伯爵家の娘として転生している。

 そして、転生した世界が、前世でとことんやりつくした某乙女ゲームの世界だと気づいた。


 「王宮恋物語~真実の愛を求めて~」という、その乙女ゲームは王道ストーリーの18禁ゲームだった。

 下級貴族の娘であるヒロイン・マリアが、従兄であるベーゼル侯爵家の嫡男・ハインリヒに付き添われて社交界デビューするところから物語が始まり、王太子リチャード、第二王子アルブレヒト、王宮専属医のグスタフたちを魅了し、恋の駆け引きをして真の恋人と結ばれるというもの。

 グスタフは国一番の医学者で、王宮に専用の研究室を作ってもらっている。


 そして、当然のごとく悪役令嬢も出てくる。

 公爵家の一人娘ベルリア・モルディラント。金髪碧眼で肉感的な絶世の美女。テンプレ悪役令嬢らしく、その美貌と身分の高さで、マリアを貶めねちねちといじめる。

 王子二人とは幼馴染で、ハインリヒは王太子付き補佐官だから、それなりの付き合いがある。グスタフとは、モルディラント公爵が厚生大臣であることもあって、父親を通じて彼とも付き合いがあるのだった。


 王道18禁乙女ゲームだから、ヒロインにはこれでもかっていうくらい甘い展開がある一方、悪役令嬢は悲惨だ。

 一つのルートを除いて、すべてにおいて死亡する。

 王太子ルートでは、マリアを塔のてっぺんから突き落とそうとして逆に自分が落ちて死ぬ。

 アルブレヒトルートでは、リチャードの暗殺計画を立て、マリアの仕業に見せかけようとしたけど、失敗。王太子暗殺未遂の首謀者として処刑される。

 ハインリヒルートでは、マリアを毒殺しようとして発覚。逃げ場を失って、用意した毒薬を自ら飲んで死亡。

 唯一生き残れるグスタフルートでは、マリアに対するいじめに激怒したグスタフに捕らえられ、病気と偽られ医局に入院させられて、一生グスタフの実験台モルモットにされるというもの。


 前世の記憶を思い出して、この世界を理解して最初に思ったことは

 「よかったあ・・・。ヒロインマリアでも悪役令嬢ベルリアでもなくって。」

 誰だって拷問か死亡エンドなんてまっぴらだ。


 そう、私はカストラル伯爵家の娘、リリアーナに転生した。

 「王宮恋物語~真実の愛を求めて~」に出てきていたっけ?って、いうほど、名前も見かけも覚えがない、単なるその他大勢の脇役。モブキャラの一人。


 ベルリアはともかく、なぜマリアヒロインが嫌かって?


 ・・・マリアは流されやすい女の子なのだ。


 サラサラつやつやのストレートの金髪に、大きな緑の目。白い肌に小さなサクランボのような唇で、可愛らしく微笑む姿は可憐で清楚な天使のよう。

 中肉中背で、ベルリアのようなボンキュッボンのナイスバディじゃないけれど、出ているところはそれなりに出ているスタイル抜群の美少女。

 社交界デビューして、王子二人はマリアに一目ぼれ。ハインリヒはもともと小さなころからマリア一筋。グスタフは女性経験がまるでないから、庭園で偶然出会って微笑みかけられただけで、マリアを崇拝する。

 そうして対象者の心をわしづかみにするも、マリア自身はまだ出会ったばかりだから誰も選べない。


 このゲームは対象者とのイベントを起こして、彼らに対するマリアの好感度・・・・・・・を上げて、一番好感度が高くなった人と結ばれるというゲームなのだ。

 そのため、対象者のアプローチが半端ない。しょっちゅう甘い言葉を囁き、隙さえあればキスしてくる。ゲーム中盤あたりからは部屋に連れ込んで、愛撫してくる。

 対象者が4人と少なめで、王道ストーリーのこのゲームは壮絶にエロい。

 しかもグラフィックが女性好みの綺麗な仕上がりで、登場人物はすべて美形。モブキャラでさえ、この世界では十人並み以上の、そこそこ整った容姿をしている。

 そして使っている声優さんも人気の高い人ばかりだった。

 私もアルブレヒトを演じている声優さんの声が大好きで、ヘッドフォンで聞いて何度萌え死んでいたことか・・・。


 ともかく、そういう美形の対象者が、艶のある美声で甘い言葉を吐く。マリアは彼らに対して

 「まだ決められないの。」とか

 「恥ずかしいからやめて。」とか

 「まだ清い関係でいたいの。」

 とか言って、寸止めさせたり、邪魔が入って最後までできなかったりする。

 シナリオライターがとてもうまいから、対象者をするりとかわすマリアは、恋に悩んでいる乙女っぽく表現されて、純粋な乙女プレイヤーが、”こんな恋がしてみたい”と憧れる作りになっている。


 しかし!騙されてはいけない!


 それなりに人生経験積んだ私に言わせれば、キスされても無防備で、誰にでも体やアソコを触らせて、言葉だけで拒否ってもアンアン言って感じまくっていれば、

 

 ・・・・・・マリアってビッチじゃん!!


 前世の私は、会社勤めもし、結婚・出産も経験した。そのせいか物語つくりばなしでも、裏の部分も読もうという癖がついた。(素直に読めば、モテモテだけどマリアは最後の一線を守っている、まじめで優しい淑女なんだけどね)


 「王宮恋物語~真実の愛を求めて~」は、どのルートでも、マリアは対象者全員とキスしてSEX一歩手前まで行きつつも、初めてのHは最後に選んだ一番好きな人とするという、エロ満載の乙女ゲームだったのだ。


 この世界が「王宮恋物語~真実の愛を求めて~」の世界で私がマリアだった場合、4人の対象者とそういう関係になるということだとしたら?

 冗談じゃない!

 ゲームでは対象者に他の人との関係は、ばれていなかったけど、現実でそうとは限らない。


 前世での私は、会社勤めでの上司やお局様のあしらい方、後輩や部下との付き合い方、結婚してからの近所づきあい、子供ができてからのママ友との友好な距離の取り方など、人付き合いの難しさは身に染みて知っている。

 社会に出たら、学生時代のような自分の気持ちに正直な付き合い方はなかなかできない。嫌いな人の前でもニコニコ楽しそうにしなければいけないし、行きたくなくとも付き合いで喜んでいかなければいけないことがある。

 そして、一番気を付けなければいけないことが、人の噂。


 他人の噂は、いい事はなかなか伝わらないのに、悪いことはあっという間に広まってしまう。

 ゲームでは、マリアが4人とイチャイチャしていることは、対象者の誰にもばれずにハッピーエンドを迎えた。

 この世界でもそうだといえようか?

 十分すぎるほど大人の年齢だった私は、夢やゲームの世界と現実をきちんと区別できている。

 私がここに転生して人生を歩んでいるように、ここはゲームとうり二つの世界の、現実・・だ。

 ゲーム通りに事が運んだとして、モブキャラを忘れていないだろうか?

 リリアーナがいるように、王宮にはモブキャラが数多くいるはず。それこそ使用人が何千人といる。彼らにも気づかれずにイチャイチャするなんて不可能だ。そして、彼らに気づかれて、噂にならない保証などない。

 まして、ゲームはハッピーエンド後を描かれていない。結婚後に、4人との関係が夫にばれたら?


 よくて”恋多き女”。悪くすれば”ビッチ”確定。


 現実にそんな烙印を押されたら、貴族の夫人にとってあまりの醜聞。

 死ぬのも嫌だが、スキャンダルも嫌だ。

 そして何よりも、私は現実での恋愛経験は皆無に等しい。ゲームだったらいくらでも男を翻弄できるが、現実では無理だ!ましてやそんなモラルのない行動はとりたくないのだ!


 お分かりいただけただろうか?私は心底リリアーナモブキャラでよかったと思っている。

 



 前世の記憶を取り戻した時、私は12歳だった。ゲーム開始はマリアの社交界デビューだから、彼らの年齢から逆算するとあと5年後。

 対象者の話は時々聞くが、マリアやベルリアの噂はあまり聞かなかった。

 対象者の4人は話を聞く限りではゲームの設定と同じだった。


 王太子リチャード(ゲーム開始時:20歳)は、明るい金髪に水色の瞳。理知的で王位を継ぐのに申し分のない才覚を持っている。

 優しく紳士的で、女性の憧れの的だ。

 

 第二王子のアルブレヒト(同:19歳)は、妾妃の息子で、母親ともども自分たちの立場を十分心得ている忠臣だ。

 兄弟仲もよく、兄のリチャードを尊敬し、生涯補佐するつもりでいる。武芸に秀でており、実質リチャードの護衛でもある。黒い髪黒い瞳。長身で筋肉質だが細身の体格をしている。野性的でぶっきら棒なところがあり、とっつきにくいとして女性人気はいまいち。


 ハインリヒ・ベーゼル侯爵家嫡男(同:22歳)。銀髪に紫の瞳をした4人の中で一番年上。リチャードの幼馴染で補佐官。官僚としても有能で未来の宰相候補としても認められている。

 地位と権力と美貌を兼ね備えているので、女性の人気も高いが、結構腹黒いところがある。

 両親を亡くしたマリアが侯爵家に引き取られたときからマリアに恋心を抱いていたが、彼女が社交界デビューするまで兄として見守っている。


 グスタフ・リアンベルデ(同:20歳)。この時すでに国内随一の医学者として王宮の医局を管理し、皆から一目置かれていた。ほとんど毎日自分専用研究室に引きこもって研究をしている。

 いつも黒いローブですっぽり隠しているから誰も気づいていないが、4人の中でも一番の美形。

 サラサラの水色の髪に金色の目をしている。珍しい色合いから、畏怖の目で見られることが多いので姿を隠しているといわれている。臆病な性格で、自分に自信が持てないでいる。


 ちなみに、マリアとベルリアのゲーム設定は、ありきたりのテンプレ。


 マリア・ヒンデル(同:17歳)。騎士の娘。両親を亡くし一人になったマリアをベーゼル侯爵が引き取って世話してくれる。ハインリヒとは従兄妹同士だが兄妹のように育つ。金色の髪に緑の瞳をもつ心優しい美少女。


 ベルリア・モルディラント(同:18歳)。公爵家の一人娘。金髪碧眼で妖艶な美女。気位が高くわがまま。王太子妃の座を狙い、社交界デビューして人気者のマリアを目の敵にしていつも意地悪をする。


 そして、この世界で唯一聞いたベルリアの噂が、

 

 「モルディラント公爵家の一人娘は、絶世の美女で、王太子妃候補の筆頭だ。」


 ゲーム内では、ベルリア本人が言っているだけだったのだが、この世界では社交界でそう言われているのだ。————私の心にかすかな疑問が生まれる。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
web拍手 by FC2
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ