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貫通式

作者: 国崎棗

 「こういうことって、初めてなのかな」

 初老の男が耳元で囁く。期待を膨らませ高揚した感情を必死で抑え冷静を装う。それでも股間に集まった血液のかたまりは自らの欲望を存分に主張している。今からこの女を犯す。そして願わくば破りたい、血を流させたい。男の血は時間と共に増長する

 「はい、経験もないです」

 女は抑揚のない声で答えた。緊張とも取れるその声は

震えていた

 「なら、おじさんが優しく教えてあげるからね。一生トラウマにならないように。これからもずーっと続けたいと思えるように」

 男の感情は最上までのぼりつめていた。心で留めておこうとした言葉も声に出てしまうほどに。

 女は首を小さく縦に振った。実際に振ったかどうかわからないほど小さく。もしかしたら振っていないかもしれない。しかし、男は振ったと確信した。同意だと。女も望んでいると。この体に傷をつけていいと

 男は息を止めた。制服を脱がし、下着姿になった女の体は縄や鞭の痕でまみれていた。そう、まみれていたのだ。体にはそれ以外の箇所がないほどに

 男の目が訴える。それはいったい何なんだと。お前はなんなんだと。軽侮と卑賤、そして同情のまなざしで

 「これ、兄さんが私につけたものなんです。私は役立たずで使えないクズだから少しでも人のためになにかできることとして」

 男は何を言っているのかわからなかった。兄につけられた、使えないクズ、少しでも人のためにできること。

どれもこれも意味が分からなかった

 「兄さんは私に価値をくれました。この痕は価値の証明です。だからそんな目で見る必要ないんですよ」

 少女の目には生気があった。むしろ嬉々としていた。先ほどまでの無表情で無感情な目はどこにもなかった。まるで体の痕が誇りであるように

 「今日ここに来たのも兄さんの提案です。学生に欲情しながらも発散出来ないかわいそうな大人がいる。だから、お前が助けてあげなさいと」

 男は自分の状況が把握出来なかった。わかっているのはこの女が女であり、学生であり、自分の子と同じ年代であることであり、そんな子が下着姿で目の前にいることであり、犯していいということであり、理性の先に潜在していた感情が話の最中でも止まることなく湧き出ているということであった。

 「そうか、そうなんだ」

 男はもう一度女を見た。全体的に見た。頭の上から足の先まで見た。嘗め回すように見た。そして雄となった

 


 行為を終えると女は余韻に浸ることもなく鞄から携帯を取り出し電話をかける

「うん、兄さん終わったよ」

女は膣からあふれ出た精液をティッシュでぬぐい、ゴミ箱へ捨てた。隣で寝ている男は全てを消耗しイビキをかいていた

 「うん、なんかそんなものか感じだったよ」

 女は服を着て部屋を出る。この部屋での行為は女にとって捨てるべきものを捨てただけの場所。いる意味などなく、ましてや捨てたものへの未練もない。あるのは

兄への思いだった

 「だから約束守ってくださいね兄さん」

 少女の表情には目の前の男では到底叶えることのできない欲が、隠れることもなく浮かんでいた


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