~prologue~independence
初、長編です。
誤字脱字、ありましたら、教えて頂けると幸い。
というか、読んでくれたら、とても嬉しいです。
災害の無い日など無かった。
その時代に生きる誰しもが、きっと同じ事を思っていたに違いない。世界は人類を見限ったのだと。もしくは、神が世界を棄てたのだと。故に人々は、その始まりをこう称した。――すなわち『神が見捨てた日』と。
その見解は後に間違いだと発覚するのだが、それでも、その日々はいつまでもそう呼ばれた。それほどまでに、名前の意味など些末なことだと思ってしまうまでに、人類は疲弊し、恐怖に震えていた。
あらゆる天災が世界各地を襲うようになってから、10年と少ししか経過していないにも関わらず、世界の人口は20億にまで減少し、世界地図さえも大幅な改稿を必要とする程に形を変えたのだから、その恐れは当たり前だろう。
しかし、その天災に規則性を見出だした研究者達が居た。世界各地で発生した天災の時刻を世界時間で統一すると、某国の夜中や早朝には天災が発生していなかったのだ。
何者かの生活習慣が天災の発生に関連しているのではないか、との仮説が立てられてからは早かった。いや、早かった、とはいえ、特定するまでに何年も掛かったのだから、決して早くはなかったのかもしれないが。
それは1人の少女だった。
いくつもの実験を経て、その少女が不幸に追いやられると太陽が隠れ、怪我をすると地が割れる。怒りを覚えると嵐が訪れ、悲しむと凍え、時に大地が揺れ、荒ぶると燃え盛る。
人々は、その少女を安全な場所にて保護する事で安寧を得た。少女が怪我をしないよう閉じ込め、一切の不自由が無いように便宜を計り、少女が求めるならば、自由以外の全てを与えた。
天災は終わりを迎えた。
15歳の時に保護された少女は現在19歳だが、その間、ただの1度たりとも、世界のどこでも災害が発生しなかったのだ。
その結果から、人々はこう仮説した。
世界は、彼女に恋をしたのだ、と。
少女は産まれも育ちも他愛ないものではあったが、しかし、他とは圧倒的に異なる美しさを持っており、世界が、もしくは神が恋するに相応しい外見だった、というのも、その仮説を助長した。
世界に恋をされた少女は自由以外の全てを手に入れ、生き残った人々は災害の無い安寧の元で暮らす。
とはいえ、手放しに喜ぶ者は多くなかった。
その理由はまず、SUB-standardなる化け物が、世界各地に発生した事。亜獣とも呼ばれる、なんらかの生物の突然変異種達が、人類が迎えていた存亡の危機に拍車を掛けているのだ。
そして、少女に自由を与えてやれないがために、外に出してやる事が出来ないがために、少女を広い部屋に閉じ込めたが故に。世界が人々から光を奪った事。
つまり、太陽が、顔を出すのをやめたという事。