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命の先にあったもの(仮)  作者: 星風
冒険者編
2/5

1話_新たな人生

俺は、漂っていた。

浮遊している、そう感じている。

暖かい、そう感じている。

だが、感じているだけだ。

だからどうということは無い。

どれほどの月日が経ったかも、わからない。

"わからない"のだ。

そう、なぜか、意識があるのだ。


漂った時間がどれほどのものか。

そしてここがどこなのか。

そして、この時間の先に何があるのか。


つい今までそんなことを考えることも無かったのだが、意識が起き上がってくるようだ。



今の俺には、浮遊感がある。

それに俺は"気づいた"。

そして、理解し始める。


死んだはずなのに、意識がある。

だんだんと俺の意識が帰ってきた。

記憶もある。

俺は、桜を見ていたはずだと。

この世を去ったと。


そして、今、俺に確かに浮遊感がある。

それは実感へと変わる。


俺がここにいる。

生を認識できた。

俺は恐る恐る目を開けた。


激しい光で目が眩んだが、次第に慣れてくる。

俺の目の前に広がっていたのは、、視界を埋め尽くす、桃色の花だった。



浮いていた体を起こし、俺は辺りを見回す。

どうやら膝ぐらいの深さの泉のようだ。


立ち上がり、辺りを詳しく見る。

桜の木、地面、泉の水面。

泉は、一面、桃色で覆い尽くされていた。

はっきり言って、意味がわからなかった。

俺が今、意識を持っていることに。


だが、間違えなく生きている。

それだけは、事実のようだ。



改めて自分を確認しよう。

立ち上がったところは、水面が見えていた。

俺が映っている。


そこには、確かに俺の姿があった。


だが、俺の記憶と違う点がある。

度重なる手術を受け、一面に跡が残った俺の体ではなく、少々痩せてはいるものの傷もなく綺麗なものだった。


そこで俺は実感した。

やはり、違うと。

生きているのは間違いがないが、俺の記憶にある俺ではない。

『死後の世界という奴だろうか。

だが、俺は生きている。

生きられるなら、精一杯生きてやるさ。』


そうつぶやき、再度あたりを見回した。


泉のほとりにあったもの、それは、キチンと畳まれた綺麗な衣服だった。

俺は服を手に取り違和感もなく着る。

靴下を履き、靴を履く。

一緒に置かれた剣を腰に巻き、袋を持った。

無意識に剣を結わえたが、どうやら体が覚えているだけで、もちろん前世で結わえたことはない。

そしてともに置いてあった袋を覗き込んだら、中は、真っ黒だった、、、、。


『あれ??

底がない、、、いわゆるゲームな袋か??』


俺は手を入れて見た。

その瞬間、入っているもののイメージが流れ込んできた。

まぁ、ポーションと弁当が二食分そして一通の手紙だ。


そこでふと、腹が減っていることに気づいた。

前世では、最後、胃が無かったから、この感覚は久々で懐かしい。

涙が出そうになる。

いや、出てる、嬉しい。


弁当を一つ取り出した俺は、すぐに食べ始める。

味がする。

噛める。

胃が喜んでいる。

それほど旨くはない弁当だったのだろうが、今の俺には最高に旨い。

幸せだ。


弁当を食べ切った俺はさらに周囲を見回す。

少し先に、焚き火の痕と燃え残った衣服と思しき布のかけら。


まだ暖かいようだ。

消えてからそれほど経っていないのだろう。


まぁ、使えるものは何もない。


そのままそこにいても仕方がないので、俺は歩き始める。

泉と焚き火をつないだ向こう側に、獣道があったのでそれを進む。


狭い獣道、決して歩きやすくはない。

息が切れる生きた感触に俺は歩き続ける。

歩かなければならないという、意思のようなものに導かれて、歩んでいく。


本来なら、そうそう歩き切れる距離ではないと、うすうす感づきながらの、旅路。

日本にいた頃にこんなペースで動けただろうか、そんなはずはない。

少なくとも、マラソン選手よりは速いと思う。

ほとんど全速に近いペースで動いても、息も切れない。

何かが違う、俺の体に何かがあったのかもしれない。

それとも、あの世だからだろうか。


そんなことを考えながら、俺は歩き続けた。


そして、日も陰り、夜が世界を包み込む頃、俺はその村へと到着したのであった。

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