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予後不良の先に

予後不良

それは、先の見通しが著しく悪いものに対する言葉だ。

大きな故障で動けなくなった馬、これは安楽死の対象となる。

人間では、事故等による障害が回復しない場合にも用いられる。

そして、病気が発症し、回復の見通しが悪い場合にも用いられる。


三ヶ月ほど前、体のだるさから、病院で検診を受けた。

再検査後の精密検査、実際に組織を取って調べもした。

その結果が、予後不良の余命宣告であったのだ。


俺は絶望した。

30年生きてきた。

色々なことがあった。

仕事も軌道に乗っていた。

重病の医療費なんて楽に払える程度には稼いだ。

だが、俺はケアを怠った。

俺の健康を過信した。

結果、発見が遅れた。

毎年の健康診断でも受けていれば変わったかもしれない。


だが、俺は怠った。


そして待っていたものが、今日のこの現状だった。



苦しい。

痛い。

薬が効いている時は朦朧としし、

薬が切れるといつもこんな感じだ。


もう、完全に廃人の域だと思う。


意識が戻って、世界に色が戻っても、すぐに意識が飛びかける。

いや、何度となく飛び、慣れない痛みと文字通り闘う。


病室の窓から見える桜が、新年度の始まりを告げている。

俺が生まれたのも春だった。4月1日のことだった。

そして今日が誕生日。


俺には、誕生日を祝うものもない。

祝う家族もなく、俺は病室で桜を眺めることしかできない。

ほんの半年ほど前、俺はプロジェクトに成功して億万長者となった。


だが、その直後、俺を病が襲った。


もちろん、病気とも、最先端医療で闘った。

有り金を使い果たす勢いだったが、それでも現時点で一億くらいは残っただろうか。


俺に家族はいない。

死んでも受ける身内はいない。

俺は、俺が育った孤児院に寄付するよう、遺言を書いた。


もう、出来ることもない。

俺の人生が終わる。

怖い。

ただひたすらに怖い。

だが、痛みから解放されるなら、それも悪くないと思えてくる。


ほんの少しの間の正気。

窓から見える綺麗な桜の木。

去年なんとも思わなかった桜の花、

それが今はいとおしい。


わずかに生を実感した直後のこと、

これまでにない強烈な痛みが来た、俺の体が痙攣しているのを意識した。

心臓が張り裂けそうだ。

いや、実際に止まるのだろう。


もうダメらしい。


痛みが限界を超え、何も感じなくなり、浮遊感が訪れていた。

走馬灯という奴は本当らしい、こうやって、最後に考えられている。


いろんなことがあった。

後悔も星の数ほどある。

だが、楽しかった、、、、そうだな、俺の人生は、結局、楽しかった。


生きれるだけは生きたさ。

自殺?

考えたさ。

でも、自分で終わらせるより一秒でも長い生をとった。

俺は臆病だ。


でも、この時が来たらしい。


ありがとう、、、、、。

俺にかかわった人たち。


俺の過ぎ去った思い出、その回想が現在に追いつく。

今の自分とリンクする。


そして俺の意識は、大海原へと漂って行ったのだった。

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