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奇策
『大野です。大橋の供述通り庭から白骨化した死体が発見されました。DNA鑑定と歯型を照合して身元を特定しますか』
「いいだろう。それでその死体に殺害された痕跡はあるか」
『白骨化していますから詳しく調べないと分かりません』
「そうか」
合田は電話を切った。
「死体は見つかったが殺人かどうかは鑑定待ちだそうだ」
「この段階では逮捕は不可能です。後は大橋の人間関係を捜査するだけでしょう」
「問題はまだある。彼が殺人犯ではないとしたら留置署には置けない。無実の男を留置署に置いたことがマスコミにバレたら不祥事になることは間違いない」
月影はポイントを整理してある奇策を思いつく。
「一つだけ方法があります。留置署に置かなければいいのですから」
「しかしそれには多くの人員が必要となる。それに経費も掛かる」
月影は淡々と答える。
「暇な所轄署の刑事にでも頼めばいい。経費を払うのとマスコミに叩かれるのとでは経費を払った方が安いだろう」
こうやって本庁の刑事は傲慢だという認識が生まれるのだと合田は思った。