連行してほしい男
通報から一時間後。合田と大野は男の住む家に来た。表札には大橋陽一と書いてある。大野が呼び鈴を鳴らすと大橋は出てきた。二人が刑事手帳を見せる前に大橋は語った。
「刑事さん。遅いじゃないですか。一時間待ちましたよ。連行してください」
彼は両手を前にだした。それは手錠を出してくださいと言っているようだった。大野はその前に一つ聞いた。
「その前にあなたが殺人を犯した証拠を見せていただけますか」
「死体と凶器は庭に埋めました」
大橋は二人を庭に案内する。庭には既に穴が開いていた。
「刑事さんが来る前に一仕事しました。一時間で凶器は見つけましたがまだ死体は見つかりません。この庭のどこかに埋めたと思うのですが」
そして大橋は庭にある穴を指差した。
「そこに錆びついた包丁があるでしょう。あれが凶器です」
合田はその包丁を回収した。それはかなり錆びついたもので血痕のようなものも付着している。
「逮捕してください」
大橋の願いに対して合田は首を横に振った。
「死体をこの庭に埋めたことは信じる。しかしこの包丁が殺人事件の証拠だとは断定できない。この凶器が偽造したものの可能性があるからだ。事情聴取と家宅捜索くらいなら出来るが」
合田は電話で月影に連絡した。
「合田だ。自称殺人犯大野陽一の家宅捜索をしたいのだが」
『家宅捜索。有力な証拠がありますか』
「はい。血痕の付着した包丁が見つかりました。供述によると彼は死体を庭に埋めたらしい」
『分かりました。では家宅捜索状を請求しましょう』
そして二人は大橋を連行した。