真実を暴く舞台 1
十九時。神津と大野はホテルの大橋の部屋に来た。
「大橋さん。迎いに来ました」
「そうですか。ようやく私が犯した殺人の証拠が出ましたか」
大橋は両手を差し出す。
「速く手錠を掛けてください」
神津は首を横に振った。
「手錠はまだ掛けない」
そして神津と大野は大橋を連行した。しかしパトカーは警視庁を通り過ぎる。
その行為に大橋は驚く。
「どういう事ですか。警視庁を通り過ぎましたよ」
神津は首を横に振る。
「まだ警視庁に連行するとは一言も行っていませんよ。これから行く場所は真実を暴くための舞台。役者が揃わなければ真実を暴くことは出来ませんから」
大野はパトカーの中で真相を語る。
「まず我々が頭を悩ませた大きな謎。なぜあなたが小松原さんを殺さなければならなかったのか。あなたと小松原さんには接点がなかった。つまり動機がない。あなたが誰かをかばっている可能性も考えた。しかしあなたが嘘を吐いているようには見えない。そして我々はこの女性に出会った」
大野は写真を取り出す。
「竹内さつきさん。知っていますよね。第二十回日本アルプス登山ツアー。そこであなたと竹内さんは知り合った」
大橋は頷いた。
「そうです。私と竹内さんはあの時知り合った。極限状態の中で竹内さんは呟きました。小松原正一を殺したかった」
「その証言が聞きたかった。その証言があればこれから話す真相を裏付けることが出来る」
大野はウインクする。
「これから先はあの場所に辿りついてから話します」