義理の息子
十六時ゲームセンター。放課後の時間帯なので学生が集まっている。その中に合田と月影はいた。遊びに来たのではない。井伊晴彦に接触するためだ。
ゲームセンターを捜索していると一人の男がクイズゲームをプレイしている所が見えた。合田は写真で顔を確認する。
「彼だ」
月影はその男に声を掛ける。
「井伊晴彦君ですよね」
晴彦は振り返る。二人は警察手帳を見せる。
「それで何か用ですか」
「少しだけ話を聞かせてください。今日午後二時頃高尾山の近くにいましたよね。何をしていたのでしょう」
晴彦は笑う。
「法務大臣からの依頼ですか。ただ学校をさぼっていただけです」
井伊尚政法務大臣の言ったように彼は反抗期なのだろう。合田は確認する。
「その時あなたは灰色の服を着ていませんでしたか」
「ああ。制服だとさぼっていることがばれるから」
合田は悩んだ。これ以上質問すれば井伊尚政が義理の父親だという事を教えることになるのではないのか。
結論は簡単だ。これ以上質問をしない。真相は明かさない。
二人はゲームセンターを後にした。
「これでよかったのだろうか」
「よかったのかは神のみぞ知るでしょうね」