浮気
十六時。大野と神津は川瀬大学にいる。広田由美によれば妹はこの大学に通っていたそうだ。教授たちに広田花について聞こうとした。
「それなら山岳サークルの顧問を紹介しますよ。彼は広田君と大学の同期だから詳しいと思いますよ」
二人は山岳サークル顧問井上涼に話を聞いた。
井上は当時の写真を見せた。そこには大橋陽一の姿が写っていた。神津は訪ねる。
「大橋陽一と広田花は付き合っていたのですか」
井上はあっさり答える。
「はい。付き合っていましたよ。そういえば婚約すると言っていたかな。それからどうなったのかは知りません」
井上は大野に質問する。
「もういいですか。そろそろホテルニューランスのパーティーに行かなければいけませんから」
その時大学生らしい女が鋭い口調で電話をしているのが聞こえた。その声は周囲に聞こえているくらい大きな声だ。
「またデート中止。どうせ浮気しているのでしょう。分かったから別れる。愛人とでも仲良く暮らせよ。バカ」
女性らしからぬ口調に大野は呆れた。しかし神津は大学生の言葉にヒントを得る。
「そういうことか。だがこの推理を成り立たせるためには幾つかピースが足りない」