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鶴の一声
大野と神津は刑事部長室に駆け込む。中には合田の姿がある。
神津は合田に聞いた。
「捜査中止というのはどういうことですか。」
「政界からの圧力だ。酒井忠義と井伊尚政が圧力を掛けてきた。これ以上捜査すると疾しいことが表に出るらしい。」
その時刑事部長室の内線が鳴った。
「千間です」
『警察庁刑事局長榊原です。捜査中止を取り下げます』
千間は驚き聞き返す。
「どういうことですか」
『今は言えない。いつかの恩返しとでも言っておこうか』
突然捜査中止を中止した警察庁の考えが千間には理解できなかった。彼は合田警部に報告する。
「捜査中止が中止になった」
二転三転する展開に合田たちは騒然する。捜査中止という事実が覆ることはめったにないのだから無理はないだろう。
榊原は電話を切りライターで煙草に火を付ける。
「浅野房栄さん。これであなたの望みを聞いてあげよう」